藍色

ながい なないろ

あいいろ

 空は藍色だ。比喩とかじゃなくて、空を見上げたら視界一面がこの色だった。いや、一つ訂正するとしたら、強く輝く星が一つある。

 下を向いたら、星がたくさんあった。これは比喩。実際にはビルや街灯の灯り。少し体が強張る。

 

「今更」


 何を怖がってるんだ。さっきまで全部どうでもいいとか思ってたのに。

 星になりたいのに、空にはなりたい星はひとつとして見当たらない。なのに地面の方が光り輝いてる。

 生きろって? そう言いたいのかな。向かい風がやけに強く感じる。

 

「いつもこうだ。最後の最後まで邪魔するつもり?」


 ただ呼吸するのも苦痛なんだ。いや、まともに呼吸したことなんてないかもしれない。

 それでも生きてれば何かあるって言ったのは貴方だよ? 信じてたのに、実際は何もないじゃないか。

 もうなんでもいいから楽にさせてください。敷かれたレールでしか生きれないのなら。

 息をしたいよ。 

 何も言わないようにしてきて、本当はしんどくて、もう何も言えないところまで来ちゃった。

 

「すう」


 思いっきり空気を吸い上げてみる。


「はあ」


 思いっきり吐き出す。

 やっぱり生きた心地はしなかった。貴方がいなくちゃ何も感じないよ。

 

「あ」


 そう感じてたら、下にあった星は上になってた。

 やっぱり期待しちゃった。何かあるかも。そっか、あの人たちもこういう気持ちだったのかな。

 息をしていよう。吸って、吐いて、吸って、吐いて。いつかこの憂いもこの空みたいに綺麗に染めてくれるまで。そうしたら貴方みたいに、ありのままで居られるかな。

 肌寒い。冬になってきたな。君と楽しく白い息を吐きたかったよ。

 ああ、星が煌めいてる。




 

 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

藍色 ながい なないろ @nagainanairoop

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る