2話目になる予定だった作品
「ここがアパート。2階だからあの階段登るよ」
「えぇ、階段登んなあかんの?」
ほんとに、こいつは何様のつもりなんだろう。
急に人んちに泊まらせろとか押しかけといて。
「別にそこで野宿してもいいよ。違法に当たっても知らないけどね」
違法に当たるのかも知らないけどね。
心のなかで呟く。
「はいはい、着いてきますよ。」
「着いてこなくてもいいけど。」
そう言って後ろを振り向くと、ニヤニヤしている楓が。うん、普通に気持ち悪い。
不意に口を開けるコイツ。どうせろくなこと言わないんだろう。
「やっぱ伊織は塩やなぁ。デレの部分も出したらいいのに。」
ほら見ろ。
他の人は楓のこと好青年とか言ってるけど、これのどこが好青年なのか。
コイツのことは無視して階段を登る。
僕には課題が待ってるから。
「ここ、鍵出すから待って。」
そんなことを言いながらも少し首を傾げる。
僕の部屋のカーテンの隙間から少し明かりが漏れていたから。
電気は消したはずなのに。
まぁいいや。
鍵を差し込み回す、そして 先に僕が入ると言い、ドアをバタンと閉じた。
いくら楓といえど汚すぎたら流石に少しは片付けたいし。
「ただいま」
『おかえり』
誰に言うでもなく発した言葉。
一人暮らしだし、普通は返事が来ないのに。
「は……?」
もしかして部屋を間違えたかもしれないと思い、一度出てから上の表札のようなところを見る。
うん。ちゃんと203号室、僕の借りている部屋。
またまたドアの中に入り、部屋の様子を確認するがそれもしっかり僕の部屋。
第一、部屋を間違えたなら鍵で入ることすらもできなかったはずだし、ここが僕の借りた部屋であることは絶対に間違いない。
だとしたら問題は目の前にいるこの男、ただ一つ。
全身を眺めるが、ある数個の点を除いてはどこにでもいそうな格好である。
『なに???』
そう言って男が肩に触れてくる前に僕はスマホの緊急通報のページを開いた。
まぁコイツはどうせあれだし開いただけだけど。
……
「あ、事件です。知らない男性が一人自分の家に。なにかを喚いています」
……
「えっと、住所ですか?」
……
「あ、は…」『ちょ、ストッープ!』
「なに?」
顔を上げると、あの男が僕のスマホを上に上げているのが分かる。
待って、かけてないじゃんなんてひとりで騒ぐコイツ。
上げ方幼稚園児かよ。ひとまず、スマホを取り返し無事を確認する。
そもそも、お前幽霊なの分かってるのにほんとに110番に連絡する馬鹿がどこに居るのだ。
『え!?なんで僕が幽霊ってこと知ってんの!?』
いつの間にか口に出していたらしい。
心の声が漏れる、それくらい呆れたということだ。
「それくらい誰でも分かるわ」
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