幽霊、邪魔扱いを受ける
1話目にする予定だった没作
詰んだ……
「あ゙ぁぁぁ」
自分でも驚くくらいひしゃげた声。
もうこれ単位落とすの確定な気がする……とか考えながら棚に立てかけてある写真にほんの少し目をやる。
まだ3〜4歳くらいの自分とその隣にいる同い年くらいの誰かがピースをしている写真。
正直、見覚えがない子だ。
すぐにまたパソコンに向かうが、やる気が出ない。
自分で作ったリストには、殺す気だろ とも思う量の課題がまだチェックが入っていない状態で大量に残っている。
だいぶ危機的状況だ。って言っても一応優等生だから課題はほとんど終わっている。
そう、ほとんど。
第二言語の課題が残っているのだ。苦手だからと後回しをしていたらこんなことになった。
ほんと、フランス語を選択した過去の自分を恨む。
だが、これでもパソコンに向かうこと3時間はたっているはず。
まぁ、3時間やったところで「あぁ、やっと終わった」とはならないのが現実なんだけど。
今日一番の絶望は、僕がほんとに苦手としている第二言語の課題がひとつも終わっていないことだろう。
嫌なことは後回しにする、ここが僕の悪い癖だ。
なんて冷静に分析したとて、いつの間にか小人が出てきて課題が終わってました、みたいなことはなく。
効率が悪いと言われれてもなにも言い返せないのが現状だが、こんなめんどくさい課題を出す大学の方もどうかしてると思う。
結局はこれからバイトもあるし、と諦めることにした。
「ポイントカードはお持ちですか?」
「お釣りは378円になります」
ひたすらこんなことを続けていたら、もう月が存在を主張する時間になっている。
「お疲れさまです」
そう言って僕は家に向かった。たくさんの、ではないがだいぶ時間のかかりそうな課題が待っている家に。
はぁ、とため息をつく。
今の僕にこの闇はあっている!なんて気が狂ったことを考えながらとりあえずアパートのドアを目指した。
―――と。
突然肩を叩かれた。
「いえいっ!!」
「なに?」
このタイプに対する反応として最もふさわしくないであろうことをしてしまった気がする。
「お前いい加減寄り道せず帰れよ」
「え、いややけど?」
「黙れ」
「にしても、やっぱ
知るかよ、ってかウザ。
その間にも盛大に煽ってくるコイツの顔に一発拳をお見舞してもいいだろうか。
楓だって大概の反応のくせに。
小学3年の頃に転校してきた楓は生粋の関西人。最初はタイプがあわなさそうとか思っていたが、なんだかんだ言って小学校 中学校 高校 大学と同じ進路を辿っている。
もう10年以上の仲になるんじゃないか。
ちなみに、僕らは中学から受験校だから、結構な偶然だと思う。勝手に奇跡だとも思ってる。
まぁ流石に学部は違うが。
「ってかなんの用?課題がまだちょっとあるから早く帰りたいんだけど」
「泊めてほしいなぁ
コイツは何を言っているのか。
しかもどこにキレてるのだ?コイツは。
「は?無理に決まってるじゃん」
「ごめん今日だけや!」
理由も言わずに頼み込んでくる楓。
ビジネスには向かない人材。
「なんで?」
「最近夜な夜なDIYしてるおっちゃんのせいで課題に集中できへんねん!」
僕からしたら いや、だから?っていう話なのだが……。
「な、俺の課題もうあれだけで終わるし、ほんだら課題手伝ったるから!」
普段なら絶対に言わないことを口にする楓に、僕はそれなら、と乗ってしまった。
あれだけ、がなにか分かんないからちょっと怖い。
そのあと、楓がうわやっぱ伊織ってチョロいんやなぁ、とかいうからしばき倒してやったけど。
「ちなみに荷物とか課題とか持ってんの?」
「え、そうに決まってるやん。」
なにが決まってるんだよ。
僕の部屋に泊まれる確信があったんだろうなって考えると、なんかムカつく。
悔しいけど自分でも僕ってチョロいな、って思うから反論の余地なし、だけど。
そんなかからないうちに僕の借りている部屋があるアパートに着いてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます