第6話 ダンさんの不思議

ダンさんは不思議だらけやけど。


やっぱり。

一番の不思議は。


ずっと、ずっと前から。

知っているような気がすることです。


ワテが幼い頃。

両親と死に別れた日の、火事の中で。


「大丈夫か、ボク・・・・」

優しい声がワテを抱きながら囁いてくれました。


その顔が。

ダンさんのザンギリ頭とそっくりで。


せやから。

ワテはダンさんが好きなんです。


もちろん。

いっぱい、ワテの知らんことを教えてくれたり。


一番は。

小鳥(こがらす)さんちの台所。


残りもんや、言いながら。

熱々の温め直した美味しいものを。


いつも。

いっつも、御馳走してくれて。


ワテは幸せもんです。


それに。

女将さん。


ワテにも作り方。

親切に教えてくれるんです。


※※※※※※※※※※※※※※※


この間。

長屋の小さいかまどで。


作ってみたんです。


道具も全然、違うけど。

結構、時間がかかったけど。


自分では。

美味しいと、思ったのです。


「枝豆の春巻き」

女将さんが、そう、おっしゃってました。


外はカリカリで。

中はウニュっと、まろやかで。


お父はんも、お母はんも。

おみっちゃんも。


喜んでくれました。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る