第2話 ダンさんとの出会い

「うぎぃえ~ん・・・」

幼いワテは泣き続けていました。


何や、焦げ臭いにおいの中で。

熱うて、喉が渇いて。


おとはんも、おかはんも。

誰もいてへん。


それでいて。

真っ赤に燃える炎の中で。


誰かにフワッと、抱かれて。


それからは。

よう、覚えてません。


「大丈夫か、ボク・・・・」

優しい声がワテを抱きながら囁いてくれました。


そのまま。

気ぃ、失のうて。


そやけど。

その時、ボンヤリ見た「ザンギリ頭」の男の人。


ダンさんに、似てはりました。


※※※※※※※※※※※※※※※


「新吉・・・」

ワテの親代わり、車屋の主人の父はんが呼びました。


「へいっ・・・」

ワテはいつものように素直に返事をします。


お父はんは、幼い頃にワテを拾ってくれた恩人。

ワテを実の息子のようにかわいがってくれました。


当たり前のように。

車屋、人力車の店を手伝いました。


ワテは今、18歳。

人力車を引き始めて、もう、6年がたちます。


最初は。

体力もなくて、ヒイヒイゆうてましたけど。


今では。

車屋一番の引手やと、自分でも思ってます。


お父はんも、ワテのこと。

自慢気に皆に喋ってくれてます。


せやから。

上得意になりそうな、ダンさんに。


得意気に、言わはったんです。


「新吉は、うちで一番の引手です」

ワテはその一言で、もう、何も言うことないくらい嬉しかったんや。


「ほう、そうでっか・・・」

ダンさんは、含むような笑みを浮かべてました。


それが何か、バカにされているような気がして。

ワテ、ムキになって声を出しました。


「ワテ・・・ワテ、一生懸命、引きますっ!」

あんまり、ワテの声が、表情が凄かったんかな?


ダンさんは苦笑いのように、小さく呟きました。


「ほな・・・これから、アンタを専属にしましょ・・・ええかな?」


そして。

ダンさんが、懐から紙包みを出したんです。


「ワテも小腹が空いたから、一緒に食べようか?」


その中身は。

甘いサツマイモ。


でも、一度も食べたことの無い味。

カリっとしていて、中はフワフワ。


ジュワっと甘味が。

こんな、美味いもん。


食べたことない!


これが、ダンさんとの初めての出会いでした。


それと。

小鳥(こがらす)の女将さんの料理とも。


大学芋。

いう、らしいです。

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