第三章:十六話
*** ***
その日の夕方、俺は蛍琉と共に帰路についていた。途中で駄菓子屋に寄って、この世界では冬だというのに彼はアイスを買って。寒空の下でそれを食べている。
「なんでアイスなんか買ったんだよ」
「なんでって食べたかったから。見ろよこれ、クリームソーダバー。美味しいに決まってるのに買わない手はないよ」
「クリームソーダは夏に散々飲んでただろ」
「いくら飲んでも美味しいものは美味しい。別に冬でも飲むぞ?」
「最近はココアじゃなかったか?」
「ココアも好き」
「つまり甘ければなんでも良いのかよ……」
「そうとも言う」
横からアハハッと楽しげな笑い声があがる。今日をこのまま終えられたら、彼は目覚めてくれるのだろうか。これで上手くいったのだろうか。俺にはまだ、確信がなかった。
「あ、ハズレ」
「え?」
「ほら」
そう言って蛍琉が見せてきたのは、アイスの棒に印字されたハズレの文字。
「あぁ。当たりが出たらもう一本ってやつ?」
「そうそう。ハズレちゃった。まぁ、でも当たったって、もう交換することないもんな」
「なんで?」
「なんでって。だってこの世界、今日で終わりだろ?」
突然、天気の話でもするみたいな気軽さで、蛍琉は俺にそう告げた。
「夏川、ありがとう。お前が頑張ってくれたおかげで俺、はっしーとねっしーの思い、ちゃんと聞くことができた。本当のことを知って、自分の中で、この世界に区切りをつけることができた」
「……は?」
「ネタバラシの時間だ。夏川、俺、もう大丈夫だよ」
そう言って、蛍琉は笑った。とても穏やかな笑みだった。
対する俺は今、どんな顔をしているだろうか。多分、困惑を隠しきれていないだろう。
「ネタバラシって、どういう意味だ?」
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