第14話 上には上が
「ハァ!!」
狼のような魔物を最も簡単に蹴り飛ばす杏
周りには魔物の死体が無造作に転がっていた。
「そっちに行ったわよ和也!」
「任せな」
一体のゴブリンが和也に向かって突撃する。
和也は刀を抜くと音を置き去りにしゴブリンを真っ二つに切った。
周りにいた王国の兵士達は2人の圧倒的な動きを見て思わず声が漏れる。
「これが…帝国の勇者…」
「すげーやっぱり勇者は強いな!」
周りの兵士達が騒ぎ始める。
しかし和也は何か納得が言ってない様子で杏に言う
「これじゃあ全く歯応えがないんや…わいもあっちの方に言った方がよかたんやないか?」
刀についた血を拭きながら言う。
それもそのはず和也達が任された戦場は晃達とは逆側でありゼレグラードを名乗る魔族が連れてきた雑魚狩りである。
当然和也は晃達の方の戦場に行きたかったのだがそれをエキドナが他国の勇者をここで傷つける訳にはいかないと止めた。
どうやらそれに納得ができていない様子だった。
「まぁまぁいいじゃないこれで私達の仕事は完了よ帰ってパーティーの続きといきましょ!」
和也の憤りを抑えるように言う杏
「まって下さ〜い2人とも早すぎです〜」
後ろから杖を持ちながらくる日菜
日菜が戦場に来る頃には既に戦いは終わっており今更きても遅かった。
結果は王国軍と帝国勇者の圧勝
和也にとって歯応えがなかった。
しかし和也の憤りはこれだけではない。
「あいつら大丈夫か?」
和也は魔族と戦っている晃達の心配が心を埋め尽くす。
拭いていた刀を見ると少し刃こぼれしていた。
「悪い予感やな…無事だといいが…」
和也は暗闇の空を見上げた。
*
「クソッ!」
血を拭いながら晃は言った。
全身にはマルクの攻撃によって切れた傷が大量にあり、八戸の回復魔法も置いつかなかった。
肩で息をする晃に対してマルクは
「威勢がいいのは認めます。貴方達は間違いなく勇者の心を持っているしかし!」
「晃!」
美咲の悲鳴が鳴り響く
マルクは勢いよく晃を蹴り飛ばした。
剣は地面に突き刺さり大きく地面に叩きつけられる
「実力がついてきていない、特に貴方…確か晃さんと言いましたよね?」
叩きつけられた晃の髪を掴み持ち上げる。
「晃から離れろ!!」
美咲は弓に魔力を込めマルク目掛けて放った。
「さっきほどより威力が落ちてますよ?」
マルクは左手で魔法陣を展開するとその魔法陣に触れた矢が勢いを失い地面に落ちた。
そして美咲に向かってマルクは詠唱する。
「
マルクが放ったレーザーは美咲を貫通しその場で倒れ込んだ。
「お前えええ!」
それを見ていることしかできなかった晃はマルクの腕を振り解き殴りかかる。
その拳には怒りが込められておりマルクは体を捻り回避する。
その動きにはまだまだ余裕があり晃達の体力は限界に近い。
「嘘…なんで…」
八戸は倒れ込んでいる美咲に近づき魔法を使用するが魔法陣が展開されない。
理由は明白だった。
魔力切れ…
晃の傷を癒すために魔法を大量に使用しており魔力は底を尽きたのだ。
晃も限界が近い…このままじゃあ!
八戸が焦り魔法を幾度なく使用しようと試みる。
しかし結果は…
「お願い…!少しでもいいから早く!」
切れた魔力では魔法陣は展開されることは無いのはわかっていたがそれでも詠唱し続ける。
「
それも虚しくついには魔法陣すら展開できなくなった。
「無様ですねぇ〜魔力切れなんて」
八戸が後ろを向くとそこにはマルクがおり口角が曲がるほどの笑みを浮かべていた。
八戸は恐怖のあまり腰を抜かし地面に倒れる。
「そんな……」
これが異世界…
魔物を倒せるだけで調子に乗っていた。
自分達がこの世界でいかに弱い存在であるか
そんな事を考え八戸は怯えた。
「八戸から……はな…れろ!」
ボロボロになって倒れていた晃が立ち上がり転がっていた剣を手に取る。
「おや、まだ戦えたんですね貴方」
マルクは関心するように言うと晃に近づき腹を殴る
「知ってましたか?貴方が1番足手纏いなんですよ晃さん?どうしてギフトを使いこなせてないんです?」
「クソッ!クソッ!」
晃は地面に倒れ込み涙を浮かべる。
そうだ…俺が勇者で1番弱い…弱いから守れないんだ……
「八戸……逃げて……」
晃は手を伸ばしたまま意識を失った。
その光景を八戸はただ眺めていることしか出来なかった。
みんな!みんなが!
「おやおや、弱すぎますよ!勇者よ!魔王様も虫を潰す趣味はないとおっしゃっていましたが確かに気持ちわかります。」
マルクはゆっくりと一歩一歩八戸に近づく
「こんなところで……」
「では貴方だけ持ち帰るとしましょうか、魔王様への手土産です」
八戸の言葉でマルクは首を傾げる。
私はこんなところで……もう
「
八戸はその場に眠るように倒れた。
「さてと」
マルクはその場に倒れ込んでいる八戸と美咲を見つめる。
ワタクシは確かに任務を完了した…
勇者も無事倒し後は魔王城に持ち帰るだけ…
しかし
マルクにはゼレクラードの処刑と勇者の確保そしてその他にもう一つやっておきたかった事があった。
それは
「はて…てっきり西の森に向かわせたエルダーリッチを倒したのは王国の勇者だと思ったんですがねぇ〜」
エルダーリッチの突然の失踪を調べることだった。
普通のエルダーリッチはBランク級であり簡単に倒せる。
しかし今回森に向かわせたのはマルクがオリジナルで改造した特別仕様であり、そこらの冒険者よりよっぽど強く増してはゼレグラードより数倍強い。
今回はその失踪の件もついでに調べてきていた。
王国にいるSランク以上の冒険者についても調べた
全員他の依頼を受けていることは確認している。
帝国の勇者でもない。
今の戦いで私にここまで簡単に倒される勇者があのエルダーリッチに勝てる訳がない……
「おかしいですね…この人達でないとすると一体誰が…」
何やら胸騒ぎがする。
おかしい……
一体誰がこんな事を……
「よぉ」
突然暗闇から声がする。
マルクは慌てて振り返るとそこには黒衣の男がいた
「勇者との戦いは楽しめたか?」
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