第13話 勇者対ゼレグラード
晃と八戸の目の前で両方の羽が撃ち落とされ地面に膝をつくゼレグラードと名乗る魔族。
俺は剣を抜き奴に向ける。
「ここでお前を倒す!」
「勇者…!勇者…!勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ゼラグラードの国中に響き渡る轟音の雄叫びを上げる
晃は美咲を見るとグッと親指を立てる
正直美咲が弓の転生ギフトで助かった…
空を飛ぶゼレグラードに対して俺の剣のギフトと八戸の回復魔法のギフトは全く持って無力
それをカバーするかように美咲は見事奴を撃ち落とした。
美咲が作ってくれたチャンスを逃すわけにはいかない!
晃は恐怖を押し殺し一歩前に進める。
そして
「いくぞ!!」
全速力でゼレグラード目指してかけ出す
距離があった晃とゼレグラードの間は瞬く間に詰められ晃が剣を振り上げるおろす。
それをゼレグラードは間一髪で体勢を立て直し避ける。
しかし晃はそれを予測していた
おろした剣を再び上に持ってくることによってすぐさま追撃に入った。
ゼレグラードは完全に避け切れないと判断し腕の
部分にある鱗で剣を受け止める
剣の圧力によって少しずつ鱗が響割れて行く。
クソッ!このままでは!!
ゼレグラードは剣を全力で受け止め振り払う。
そして大きく後ろに跳躍し再び距離を取ると後ろに気配を感じる。
「な!」
そこには先程羽を撃ち落とした勇者がいた。
既に弓を引いており、一直戦に矢は飛んで行く。
その矢を腕の鱗で防ぐ。
しかし先程の剣を使う勇者の攻撃によって鱗はすでに限界を迎えていたのか割れてしまった。
チッ!鬱陶しい!!
ゼラグラードは標的を変え美咲に攻撃をするため大きく跳躍する。
「それは読めていたわ」
八戸が魔法陣を展開し美咲に杖を向ける。
「光よ来たれり……かのものを災いから守りたまえ…
途端に周りを光が包み美咲を守る防壁となる。
光の防壁はゼレグラードの猛攻を凌ぎ切った。
そしてどちらにも疲れが見え始めゼレグラードは跳躍しまた距離を取った。
「やっぱり魔物と全然動きが違うよぉ〜」
美咲が苦言を吐く。
「流石に簡単には倒せないか…」
「えぇ…でもダメージは与えているはず、このまま攻撃しつつずければいずれはいけるわ」
八戸は晃を鼓舞するように励ますとそれに応えるように再び剣を構える。
このままいけば…勝てる!
しかしゼレグラードは何やら不穏な笑みを浮かべ3人を見ながら言った。
「貴様達…私が一人でここに来た勘違いしていないか?」
血が出ている腕を押さえ息を切らしながら続ける
「私は……ここに……一万の魔物…を連れてきた!
貴様達と戦っている間に結界を裏から破壊す……る!そう、私……自らが…囮になるの……だ!」
なんだと…!
声はでないが3人は顔を見合わせる。
勝った!……これで!また私は!
「やっぱりエキドナさんの言った通りだね!」
弓を持った勇者が言う。
な、今なんと言った?
ゼレグラードはその言葉を疑った。
ありえない!まさか…そんな筈は!
「貴方にはわからないようだから教えて上げる
この国にいるのは王国の勇者だけじゃない帝国の勇者もいるのよ」
な、なんだと……
そんな……馬鹿な!
杖を持った勇者の言葉はゼレグラード希望を打ち壊した。
私は魔族を守るために……最大の障壁を…
「お前の魔物は帝国の勇者と王国軍によって全滅
もう逃げ場はないぞ!ゼレグラード!」
一歩一歩とゼレグラードなら向かって剣を持った勇者が近づいてくる。
その足音はゼレグラードにとっての敗北の音
「投降すれば悪い扱いはしない…大人しく敗北を認めろ」
晃の言葉にゼレグラードは湧き上がる憤怒を感じた。
私が人間に命乞いだと…あり得ん…あってはならない!
そんなことするくらいなら私は、こいつらを……
「おやおや、ゼレグラード無様ですねぇ?」
「あ、貴方様は!」
突然の謎の声にその場にいた全員が空を見上げた。
ゼレグラードにとってその声はまさに…
「マルク様!!」
まさに希望であり、晃達にとっては絶望だった。
な、なんなんだあいつは!
ゼレグラードと同じような羽に白と黒が混ざった髪
晃達に唯一わかったのはそいつが男ということとゼラグラードより圧倒的に強いということだけだった
なんなんだこの恐怖は一体!
足がすくむ。
全身が恐怖で支配されそうな感覚。
そんな晃達を見てマルクは軽薄な笑顔を見せる。
「こんにちは、王国の勇者の皆さん…わたくしは
マルク…魔王軍第5席次…いわばゼレグラードに代理を任せていた物です…以後お見知り置きを…」
マルクはゼレグラードの隣に降り立つと軽く礼をする。
ゼレグラードのさっきまでの絶望の表情とは一変明るくなりマルクを希望の目で見ていた。
さっきまでと立場が入れ替わり
八戸と美咲は恐怖が止まらない。
「おや…さっきまでの威勢は何処に行ったのですか?私と戦ってもいいのですよ?」
マルクは煽り口調でしかし紳士的に言う。
数秒の沈黙の後マルクは残念そうな顔をする。
「そうですか…残念です…」
「マルク様…私は」
ゼレグラードが助けを求めるように言う。
「おやそうでしたね、先に仕事を済ませないと」
「では私は……」
ゼレグラードがマルクに近づき手を伸ばす。
すると
「えぇ、さよならゼレグラード」
「え?」
気づいた時には既にゼレグラードの頭部と体はすでに別れていた。
血が大きく噴き出し頭が地面に転がる。
「捕まって情報を吐かれたら面倒です。やはり自分の手で始末することは何かしらの達成感がありますねぇ〜」
その光景を唖然と見る八戸と美咲
しかし一人だけ闘志に燃え圧倒的な絶望に立ち向かう。
「うおおおぉ!」
剣を強く握り締め晃はマルクに立ち向かう。
「おや、やはりまだ戦う意志はあるじゃないですか?勇者は殺すなと命令されてますが遊ぶくらいなら大丈夫ですよねぇ〜」
マルクは晃を見据え深くそして嘲笑うようにナイフを構えた。
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