第12話 ゼレグラード
私は焦っていたのだ。
勇者が召喚され1ヶ月
魔王様は何の対策も取らずしまいには
「勇者なんてとるに足らん放っておけ」
玉座の上で足を組みこちらを軽蔑するかの如く冷き目で見る魔王。
その姿は口元に無数の傷跡がある。
特徴的な赤い長髪は人間の女を想像させるが実際の所その声質は中性的であり、判断がつかなかった。
「し、しかし魔王様!前回の召喚で樹の災害が倒されました!!このままでは…」
私は何度も訴えかける。
勇者召喚は魔族存続の危機。
しかしこのお方は動こうとしない。
何故だ!何故!
私は怒りを込めて魔王を説得した。
しかし魔王は
「あの程度の人間に滅ぼされる魔族なんて滅んでしまえばよい、我は虫どもを潰す趣味はない」
冷たき声は私に突き刺さる
なんて愚かな魔王だ…
傲慢に囚われ今ある問題に立ち向かおうとしない。
何が魔族の王だ!
私は悟った。
今動くしかないと…
「わかりました。ならば私の軍だけで王国の勇者を殲滅します。よろしいですね?」
ここで断られるなら私は……
そう思っていた矢先魔王から帰ってきた言葉は意外な物だった。
「行ってくるがよい」
魔王は一言でいった。
まるで自分には関係ないとそう思わせるように、
私は怒りをぐっと我慢し王の間を出た。
*
そして今
「ゼレグラード様!ゼレグラード様!」
私に部下の魔族が声をかける。
「どうした?何かあったのか」
「王国の結界が破壊できません!!恐らく魔族のみを遮断すること決壊ではないかと思われます」
「情愛の魔女の結界か」
王国は既に目の前
この結界さえ破ることができれば城に侵入できる
私は空中で腕を組み考える。
いやここで王国が軍隊を出してきてもただの人間がとき私の1万の兵士で殲滅することができる。
ただ勇者は…勇者は別だ。
もしもギフトが覚醒すると手の打ちようがない。
ならば…
数秒の詠唱を始める
そして魔法陣を展開し口元に近づけると
声が拡張され辺りに響く声で
「「愚かな人間ども、私の名は魔王軍第5席ゼレグラードだ! 貴様達に拒否権はない、今すぐ勇者をこちらに差し出せ」」
王国中にその声が響き渡り家の電気がつき始める
どうやらこの結界は声は通すらしい。
今部下達が結界の破壊作業をしている。
このまま出てこないであれば結界の破壊は時間の問題だ
さぁどう出る情愛の魔女……
すると遠くの森の方で一瞬だけ光が映る。
ゼレグラードはそれが何か認識できず凝視した瞬間
「!?」
高速の弓矢が頬を掠った
ゼレグラードは慌てて先回し距離を取る。
「先に見られてたか!お前達!奴を仕留めろ!」
部下を森の方に送らせる。
「間抜けが…一撃で仕留めなかったのは痛手だったな」
ゼラグラードは勝ち誇ったかのように言う。
弓兵は位置がバレると格好のマトになる。
この空はもう私達魔王軍の物になったのだ!
すると何やら慌ててこちらの方に向かってくる魔族がいた。
「大変です!大変です!勇者がすぐそこまできています!ここはどうグハッ!!…」
「何!」
今伝来を伝えにきた魔族が撃ち落とされた。
ゼレグラードはまた距離を取り辺りを見回す。
違う…私は勘違いしていたのだ!
確かにさっき私は弓矢を避けた。
しかしこの暗闇でこれほどの精度
勇者のスキルしかありえん!
するとまたもや光が一瞬だけ映るがゼラグラードは反応が遅れてしまう。
「しまっ……」
その反応の遅れは命取りだった。
ゼラグラードの翼は撃ち落とされ地面に勢いよく落ちた。
「やり〜晃、八戸ちゃんあとは任せたよ!」
弓を持った女が茂みから出てくる。
すると後を追うように後ろから2人出てきた。
「ナイスだ美咲、後は俺がこいつを」
地面に膝をついたゼレグラードの前に現れたのは
3人
「クソッ人間どもめ…」
ゼラグラードは悔やむ
少し魔王に毒されていたのかも知れない。
「勇者なんてとるに足らん」
そんな言葉に影響された自分に腹が立って仕方がない。
一人の少年がゼレグラードに向かって剣を抜く
「お前をここで倒す!」
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