第10話 夜は更け茶会は進む

金ピカに光るシャンデリアに白い布が被せてある円形の机がいくつもある。

机の上には俺達が元の世界では決して食べられなかった豪華な食事が盛られいた。


「すっーーごい!みてみて八戸ちゃん!」

「はいはい」


美咲が子供用にはしゃぎ八戸がめんどくさそうに向かって行く。

そこには色とりどりに飾られた宝石がガラスケースの中に収めてあった。

多分王国の貴族が自分の財力を見せつけるために展示してあるのだろう。


「晃もはやくー」

「おい、走ると危ないぞ」


俺達は今各国の勇者が招待されたパーティーに出席している。

当然俺も勇者なので八戸と美咲の3人で出席した。


「それにしてもこの服…似合わないな」


俺は独り言のように苦言を吐く。

美咲と八戸はそれぞれ青と紫のカラードレスを着ていて小柄な体型と共に大人な魅力をかもしだしている。

一方俺はと言うとスーツだ……

異世界に来たのにスーツだ…

俺は前の世界でスーツなんて一回も着たことなくボサボサな髪と相まって全く似合ってない。


一体どこのどいつがスーツなんて流行らしたんだ…


そんなことを思いながらおれは配られたグラスを

片手に紫色の液体を口に運ぶ。

すると


「おい、あんちゃんが王国勇者晃か?」


突然話しかけられ咄嗟に振り返る。

見ると刀を腰に掛け、見るからに日本人のような袴を着ている。

髪は白と赤が混じった俺と同じような髪型をしている。


「おうおう、そんなに警戒せんでもええ、ワイは帝国の勇者の内の1人、名前は和也やよろしゅうな」


和也はでかい手を前に伸ばし握手を求める。


「はい、俺が佐藤晃です。よろしくお願いします」


俺は少し警戒しつつ手を伸ばしお互いに固い握手をする。


こいつが帝国の勇者……


そう思っていると


「コラーー!何やってんのよぉー!」

「イダダッ!!」


悲痛の声と共に大きく和也が吹っ飛んだ。

突然の出来事で頭がパンクする。

見ると黒髪の女子が和也に向かってドロップキックをしていた。

ポニーテルが特徴で青と金に彩られたドレスを着て赤のハイヒールを履いている。


「す、すみません!うちの勇者が何か迷惑をかけてないでしょうか?」

「いや、ワイは何も……」

「和也は黙ってなさい!」

「…………」


黒髪の女子は勢いよく頭を下げる。

和也は黒髪の女子の勢いに困惑ししゅんとしていた


「あ、いえ特には何も……」


何かのコントを見ているような気分だった。

腰を抑えながら和也はゆっくりと立ち上がると


「ほらワイは何もやってーへん…杏の早とちりや」

「え?」


黒髪の女子は困惑した顔でこちらを見る。

俺はありのままの状況を伝えるように


「ただ…挨拶して握手しただけです」


俺がそう言うと黒髪の女子はやってしまったと言わんばかりと顔をし俺に向かってまた頭を下げる。


「すみません!勘違いでした!」

「いや…だからワイの心配は…」

「和也は黙ってなさい!」

「………」


またもや和也は勢いに押されしょぼくれる。

まじでなんだ一体この状況は…

俺は2人の漫才をポカーンと見ていると


「杏ちゃーん!和也くーん!」

「日菜!」


見ると幼女ような体をした白髪の女の子がいた。

声もその動きも幼いが身につけるいる服は豪華だった。

もしかしてこいつも……


「じゃあ改めて3人揃ったところで自己紹介!」


黒髪の女子はパンッと両手を合わせ3人で肩を並べる。


「この小さいのが」

「後藤日菜です!18です!」


じゅっ十八!?

俺はまさかの言葉に驚く。

同じ年齢だとは思わず小学生かと思っていた。

すると日菜はムッとした顔でこちらを見る。


「もしかして日菜のこと小学生って思ってたでしょ」


図星だ……

俺は目を逸らし黒髪の方を見た。

すると吹き出しながら笑い俺に言う。


「確かに日菜は小学生っぽい見た目をしているけどちゃんとした高校生をやっていたのよ」

「杏ちゃんまでぇ……」


日菜は落胆した声を上げる。

そんな声を気にせず黒髪は続ける。


「で、私は杏!小路杏!気軽に杏って呼んでくれて構わないわ!」

「よろしく杏ちゃん!」


いきなり俺の肩を掴み美咲がヒョイっと現れる。


「えぇ、美咲さんよろしく」

「あれ?私の名前知ってるの?」


そういえばさっき和也と会った時も俺の名前を知っていたな…


「えぇ、今日のパーティに参加する勇者の名前は一通り教えてもらってるの」


なるほど帝国はあらかた俺達を知っているわけか


「んで最後が…」

「さっきも紹介した通り、ワイは竜園寺和也やよろしゅうな、この五月蝿いまな板女と同じ勇者や」

「だーれーがまな板女ですって?」

「や、やめてくださいですー!」


杏と和也の掴み合いに割って入ろうとする日菜

こいつらは会話をするとコントをしてしまう病気かなんかか…

そんな事を思っていると美咲がぴょんぴょんと飛び跳ねながら前に出て


「私は鹿島美咲!で隣にいるのが佐藤晃!よろしくね!」

「よろしくですー!」


日菜もぴょんぴょんぴょん跳ねながら美咲に近づき両手で握手をした。


「それにしても私達以外の勇者はパーティーを辞退

一体なんでかしらね…」


確かに周りを見ると貴族や外国のお偉いさんが多く俺達以外の勇者は見当たらない。


「そうなの?」


美咲は首を傾げ杏を見る。


「えぇ、理由はわからないけど辞退したらしいわよ」

「どうせ、勇者のギフトがバレる鑑定魔術を恐れて参加させなかったんちゃうか?全く臆病もんばっかでつまらん」


そう言って和也は机に置いてあったグラスを手に持つ


「確かにギフトがバレるのは厄介だけど人間同士でどうしでそう警戒するのかしら…」


俺もそう思う。

確かに俺達勇者一人一人で配られたギフトは七災害を倒す為の物だと聞いた。

しかし……

俺が深く考え込んでいると美咲が俺の肩を叩く。


「ねぇねぇさっきから八戸ちゃんの姿が見当たらない」

「え?」

「私が晃を呼びにいくって言ったら『後からついていく』って言ってそっから見当たらないの…」

「なんだと…」


確かに八戸の姿が見当たらない。

ここは貴族や勇者を恨む人もいるかもしれない。

俺は不安と焦りの感情を隠せず


「探しに行ってくる!」

「待って晃!」


俺は美咲の静止を無視して走り出した。

どこだ!

もしも何かあったら……

そんなことを考え俺は廊下の方に向かって走って行く。

ゴンッ!

すると突然人が角から現れぶつかる。

衝撃で俺は倒れる。


「いてて、す、すみません!!」


俺は腰の痛みを気にしながら目の前の人に手を伸ばす

すると


「だ、大丈夫よ、こっちこそごめんなさい」


金髪のくるくるとした髪に全身黒のドレスそしてその瞳は一つ宇宙のような目をしている少女がいた。





 

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