第9話 人の災害
魔女…
それはこの世界に5人いると言われる圧倒的な魔術と魔法の力を持ち主
またそれぞれ強力な魔眼を持つ
俺の今目の前にいるこの女もまさしく魔女だ
青色のローブに少し幼く見える顔、緑色の髪がねじれている。
彼女の名はエキドナ
情愛の魔女……そして俺の旅の目的の鍵を握っているかもしれない人物だ
「ふふふ、私の魔眼は『導きの魔眼』見た人の目標または、過去を見ることができる」
エキドナはそう言いながら鏡のような瞳を俺に見せる。
「俺の目的も最初からわかっていたのか?」
「ふふふ、そうよ出会った時から」
「何故セレンを外に出した?」
「一対一で話たかったからよ、セレンちゃんの魔眼を掻い潜るために言葉選びは頑張ったのよ?」
この状況を好都合と呼ぶべきかそうでないと言うべきか
確かに俺の最終目標は『死』だそれは揺るがない
しかし、俺にはもう一つやらなければならない事がある。
「ふふふ、私に聞きたい事があるんでしょ?」
不気味に笑うエキドナ
俺はこの質問をするべきか迷う。
もしもこいつに俺の正体がバレた場合最悪最初に
逆戻りだ。
こいつの『導きの魔眼』一体どこまで見た?
いや…深く考えすぎるな
当初の計画ではこの女にあのことを聞く予定だった
ならこのままぶつける。
「『最果ての楽園』を目指している、場所と行き方に心当たりがあるなら教えて欲しい」
俺が思い切って言葉をぶつけるとエキドナは驚いた表情を見せる。
「あら、てっきり私は不死身の方の質問かと思ったわ」
「それも確かにゴールの一つだ。だが俺は『最果ての楽園』に行かなくちゃならない…そこまで死ねない」
「…………………」
さっきまでの笑顔とは裏腹にエキドナは真面目に考える表情を見せる。
指先を一定のリズムでテーブルにトントンっと音を立てながら考えている様子だった。
「ねぇ…それって裏を返せば……」
エキドナはゆっくりと顔をあげると俺に向かって問う。
「その場所にさえ行ければ死んでもいいって言うこと?」
「少し違う、俺はその場所で死にたいんだ」
鏡のような瞳からの視線が俺に向けられる。
透き通る目は俺の全てを見透かしているようなそんな気がしてならない。
「なるほどね」
エキドナは少し間を空けてから答える。
場の空気が少し沈んでいるように思えたが俺は気にならない。
「伝説、幻の範疇でしかない物をまさか本当にあると思っているの?」
エキドナの質問は至って真面目だ。
そうこの質問は聞く相手を間違えればただの頭のおかしいやつだ。
だが『導きの魔眼』を持つ彼女ならこれが本気だとわかる。
「ああ、そこであいつに俺を殺してもらう…」
エキドナは俺をじっと見つめると口を開いた。
「………なんで死にたいの?」
その言葉は今までの好奇心から発したことではなかった。
エキドナは寂しくも悲しそうな声言う。
なら俺はその思いに応えるだけだ。
「それが……俺の贖罪……罰だからだ」
俺はとある人との約束を破った。
きっと許されない、その枷が俺の今日という日まで全身に絡みついて離れない。
だから……
「セレンちゃんが貴方を選んだ理由がわかったわ」
そう言ってエキドナは立ち上がると俺の隣に座った
すると俺の頬を両手で優しく掴む。
「ふふふ、こんな美女が隣にいるのに一つも反応しないのね……」
こいつから見たら俺の目は死んで見えたのだろう
多分ここに誰が言おうと同じ反応をしていた。
「………見えたのか、俺の過去が」
「えぇ…貴方はこれからセレンちゃんと沢山旅をしていろんな出会いがあるわ」
「………」
「でもね一つだけ」
エキドナは優しい口調で語りかける。
「どんな生き物にも結末があるわ……寿命がない生き物なんていない…例え貴方でもね」
「俺は不死身だ…寿命はない」
俺は無機質な声で答える。
自分でもその言葉に心がこもっていないことはわかった。
しかしエキドナは首を振る。
「だって貴方は既に来てるじゃない…心の寿命が」
「言っている事がわからない、俺は変わらない」
本当にわからなかった。
どうしてこいつはこんな悲しい目をしているのだろう。
どうして人のためにこんな感情的になれるのかと
本当に理解できない
「これからの旅で答えを見つけなさい…そして旅の終わりに貴方はきっと……」
「………」
情愛の魔女は少し言うのを手を俺の心臓に近い部分へと運ぶ。
「ライ・グランディール……いや違うわ」
そして下を向きながら言った。
「『人』の災害 ベリト……」
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