第8話 情愛の魔女

俺とセレンは情愛の魔女エキドナに連れられ城の客間にいた。


「ふふふ、さ座って」


エキドナの言葉に従い俺とセレンは豪華装飾が施されたソファに座った。

ドアの前には門番のようにメイドが2人立っている


「ふふふ、ようこそ私の城?かどうかはわからないけどギンガルド城へ」


エキドナは杖を壁に立てかけると俺達と背が低いテーブルの反対側の席に座った。


「んで、どうして俺達はここに連れてこられたんだ?」

「あらあら、そんなのセレンちゃんと話してみたいからに決まってるでしょ?ねぇーセレンちゃん」

「もうちょっと屋台周りたかったのに……」


セレンはやはり、ほぼ強引にここに連れてこられたことを不服と思っているようだった。

まぁ俺としては正直どっちでも良かったが……


「いろいろ聞きたいことがあるけどその前に……

知っての通り私の名前はエキドナ……情愛の魔女って呼ばれているわ、よろしくね」

「ライ・グランディールだ。こいつと一緒に旅をしていた。」


俺が軽く自己紹介を済ませるとエキドナは俺をまじまじと観察する。

上から下まで全身を見た後俺の顔見た。

こうエキドナを正面から見るのは初めてであり

その顔立ちは少し幼く見えた。


「あらあら、貴方……面白い魔術回路をしているのね?」

「残念だが、それは褒め言葉にならないぞ、俺は

魔術が一切使えない。」

「魔術はね……」


何か含みのある言い方をエキドナするが俺は気にせず話を続ける。


…正直に言うと確かに目的はこの女だが俺はこいつの目が嫌いだ。

まるで全てを見透かしたような目をしており、セレンと初めて会った日を思い出す。


「セレン、積もる話しもあるだろう?、俺は先に部屋を出ているから用が終わったら呼んで……おい」


俺は部屋を出て行こうとした瞬間セレンは俺の服の裾を掴む。


「ライ……私を置いて行く気?、貴方の目的はこの女なんでしょ?」


そう言うとさらに掴む力を高めた。

セレンを見ると助けを求める子犬ような目をしている。

ここにいたらこいつらに何を詮索されるかわかったもんじゃない

俺は必死に逃げる言い訳を考える。


「いや俺は……こんな城に俺みたいな部外者がいたらエキドナさんも困るだろ?だから先に出ていようかなって」

「ダウト、嘘ね」

「………」


そういえばこいつの真実の目のことすっかり忘れていた。

やばいこれは逃げられない


「ふふふ、アナタ達本当に仲がいいのね」


エキドナは微笑みながら言う。

その言葉を待ってましたと言わんばかりセレンは


「そうなの! 私とライはとーーても仲がいいから置いていくなんて事は絶対しないわよね?」


こいつ………

完璧に油断していた。

俺は逃げることを諦め改めてソファに座った。

セレンは満面の笑みを浮かべていた。


「ふふふ、なるほどね……」


エキドナは俺達をみて何かに納得するような表情を見せる。


「そういえば今夜各国の召喚された勇者達が集まってパーティをこの城で開くそうよ。よかったら2人ともきてみない?」


エキドナの思いがけない言葉に俺はすかさず反応してしまった。

勇者………七災害を討伐するために召喚された異世界の人

この国も今回は召喚していたのか……


「もしかして、そのパーティーって美味しい料理は沢山出るのかしら?」


セレンは目をキラキラさせながら言う。


「えぇ…勿論、この国の最高級のものを用意しているわ」

「やったぁーねぇねぇいいでしょライ?」


そう言って俺に期待の眼差しを向けてくる。

俺は少し考える。

実は言うと勇者は前から気になっており、もしかしたらその実力の片鱗を見れるかもしれない。

そもそもそんな大切なパーティーにそもそも俺達が出席していいのか?

俺はエキドナに目線を向けるとどうぞと言わんばかりの笑顔で返される。

というかもうこいつとエキドナからは逃げられない


「わかった…」

「やったぁーー!」


子供のように喜ぶセレン

実際こいつは見た目は子供だが中身は500歳を超えているはずだ。

いつも大人ているのに食べ物のことになるとすぐに子供に戻る。


「ふふふ、でも流石に2人ともその格好は駄目だわ

服装はこちらで準備するから、アンジェ、セレンを

ドレッシングルームまで案内してあげて」


エキドナがそう言うと後ろにいたメイドの一人がドアを開ける。


「どうぞこちらに……」

「ふんふん♪」


メイドの言葉に従いセレンはステップを踏みながら

外に出て行った。


「ミルもセレンの着替えを手伝ってあげて、ここは私一人でいいから」

「わかりました」


部屋にいたもう一人のメイドもエキドナの言葉に従い客間を出て行った。

扉が閉まったあと部屋には数秒の沈黙が流れる

そして





「なるほどな、魔眼か……」


そんな予感はあった。

部屋に入ってきた時からメイド達は扉を守るように配置されており、俺が逃げる隙を与えないようだった。


俺はエキドナの顔を見る。

その顔はさっきまでの作り笑いとは違い口角が異常なまでに上がり不安な笑みを浮かべていた。


「ふふふ、さぁ話し合いといきましょうか、チップはお互いが持っている情報よ」

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