第7話 王国の勇者
ギンガルド王国 ギンガルド城
「ねぇねぇ晃!やっと水魔術が使えたよ!」
「まじか!やっとできたか」
俺は美咲に近づきハイタッチをする。
「はいはい仲がよろしいこと」
それを隣の椅子で座ってみていた八戸が本を読みながら言う。
「それにしても本当にこの世界はファンタジーだよねー」
美咲は城の庭をぐるぐると回りながら言った。
「あー最初は信じられなかったがこれが本当の異世界転生かー今でも夢ようだ」
「そうね、美咲さんは最初から順応してたようだけど」
「私だって最初は戸惑ったよ!、でもいざ生活してみると魔術やら魔法やら覚えるのが学校の勉強より楽しくて…」
俺は空を見上げる。
絵に描いたような美しい青空に白い雲
俺達はまだ異世界召喚されたことを実感できなかった。
一ヶ月前……
俺と美咲、そして八戸は学校からの帰宅途中
突如として現れた光に飲まられここギンガルド王国にやってきた。
俺達を召喚した張本人である魔女エキドナによるとどうやらこの世界では7災害という7人の強大な力に苦しめられその解決策として異界から勇者を召喚し
対抗すると言うものだった。
最初は剣や魔術、魔法などわからないことだらけだった。
しかし俺達、勇者一人一人に与えられた特別な力
その力のおかげで魔物やらと戦ってもなんとかなり
ここまで経験も詰めた。
今夜他の国の勇者たちとの交流会、パーティーがある。
その時に恥をかかないよう今日は魔術やら剣の練習をしてるってわけだ。
「八戸ちゃん!ここの擦り傷治して!」
「貴方は私を便利屋かなんかだと思っているの!?まぁいいでしょう、私に与えてられたギフトは回復魔法だから…」
そう言って八戸は読んでいた本をパタンと閉じると
「光よきたれり、かの者の傷を治したまえ
詠唱を終えると美咲の膝についていたすり傷がみるみるうちに消えていった。
「ありがとう八戸ちゃん!」
「貴方は子供なの?全くもう、晃はいいんですか?その傷治さなくて?」
「あぁ俺はいいよ、そういえば八戸何の本を読んでいるの?」
俺は八戸が持っていた古びた本を見る。
「七災害についてかかれいる本。私達はいずれその7人と戦うことになるわ。だから今から少しでも情報を集めておかなくてわ」
そう言って八戸は本の真ん中辺りのページを開き俺達に見せ描かれた歪な姿をした怪物に指を刺す。
「これが魔の災害魔王ナベリウス」
「すっごいごっついね……」
「想像してた通りのままだな…」
黒い悪魔のような羽に中世の王様のような顔立ち
その絵はまさに俺達が想像している通りの魔王の姿だった。
「恐竜みたいなドラゴンが龍の災害火炎龍アモン」
「こっちもいかにもドラゴンだな」
「絶対火を吹いてくるよね」
「でこの大剣を持っている鎧きた猫が獣の災害、
正義のアンドラス」
「顔が可愛い……」
「こいつが正義…?」
「でこっちの木や枝が沢山まとわりついているエルフが樹の災害、観測者アガレス、これが天の災害
信仰のバエルでこっちが精霊の災害放浪のゼパル」
「なんか沢山いすぎて訳わかんないよぉ〜」
八戸の説明に追いつけず目を回しながら煙を吹く
美咲、
そんな中でも八戸は説明を続ける。
「最後が人の災害……偽善のベリト…」
「人の災害?」
俺はその言葉に疑問が浮かんだ。
何故人類の敵なのに人がいるんだ……
「そう、人の災害……多くの人を犠牲に自らの傲慢を埋める最悪、とだけ書いてあるわ」
「えーなんだか怖そうだね……」
そう本に書かれているその姿は全身が黒で塗りつぶされており、かろうじて人型であることだけは判別できた。
俺は思った。
もしこいつがまだ人の心を持っているのだとすれば
まだ善意があるならばと
「もし、こいつにあったら話し合いできないかな…?」
ふと思ったことを口にしてしまった。
俺の発言に八戸と美咲は目を見開き驚く。
「あーいや、会ってみないとどんな奴かわからないけど俺は人を殺したら戻れない気がするんだ…」
俺は言い訳のように言う。
「でも、このベリトって言う人も多くの人を犠牲にって書いてあるから沢山の人を殺しているんじゃないの?話し合いになるかどうかも…」
美咲の疑問は最もだ。
この7災害とか言う奴らは全員多くの犠牲を今も生み出し続けている。
だけど……
「俺はやってみたい……やらなくちゃならない。
そのためにはこいつらより強くなって戦うんだ!
協力してくれるか美咲、八戸」
俺は2人に問いかける。
2人はびっくりしたような表情をしたあとお互いの目を合わせる。
そして納得したような表情を見せると
「晃らしいね!その考え方好きよ! いいね協力したあげる。私はずっと晃と八戸と3人でこの世界をクリアしてやるんだから!」
そう言って美咲は拳を大空に掲げ誰かに訴えるように言う。
「どうせ私の回復魔法が使えなきゃ貴方達何もできないでしょ? なら私もついていくわ」
八戸は立ち上がり、美咲の隣に行く。
「おう!ありがとう2人とも」
そう言って俺達は手を掲げて言う。
「そのためにはまず、今日の勇者同士の交流会で自分達の実力がどれくらいか確かめないとね」
八戸はそう言って俺を明るい表情で見る。
そうこの時は3人で何もかも乗り越えられる。
きっと、これからも3人でずっと……
そう思っていた時期が俺にもあった。
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