第4話、終わりを告げる旅



「お前は俺を殺してくれるか?」


少女は驚きに打たれたような表情をすると言葉の意味を理解したようで途端に笑い始める。


「ぷっ、あははは!ははは!そ、それは無理な相談よ!だって私にその呪いは解けないんですもの!!」


子供同然のように無邪気に笑う。


「気味が悪い」

「ご、ごめんなさい、おかしくて、つい」


目を擦りながら少女は笑いを止める。

しかしまだ余韻が残っていたようで何回か笑いかける。


「だってだって、私が今までの人生を捧げて手に入らなかった物を、まさか貴方が持っていてしかも

手放したいですって!」


思い出すかのように笑い転げる少女に対して俺は何故笑っているか理解ができないかった。


「あー笑った笑った、その話しは後で聞くとして

今は話しを戻すね、それで私は500年ぐらい前からここに隠れて生活してきたの」

「それが俺を攫うのとどう言う関係が?」

「実は外部の情報だけは使い魔を使役して情報を集めていた。」


そう言うと一匹のリスらしき魔物が肩の上で一回転

すると少女の手の平で体を休める。


「でね100年くらい前に面白い情報を掴んだのよ」


少女は俺にここぞとばかりに指を差し自信満々にいった。


「不死身の男がいるって言う情報をね!」


目を輝かせ俺に眩しいほどの期待を寄せる。


「余計な情報を……」

「あら、めんどくさそうな顔ね」

「当たり前だ、誰のおかげで今ここにいると思っているんだ…」

「それは、悪いと思っているわ、でも伝説だと思っていた人と特徴が一致したの……まさか自分の家の前を通るなんて、捕まえて本当かどうか確かめようと思っただけよ! もし本物だったら閉じ込めて研究材料にしようと思ったけど………」


さも平然のように言ってくる少女に対して俺は頭を抱える。

最初は何言ってんだこいつと思って聞いていたが

普通にやばい奴だった…

ただ会話は通じるようなのでもう少し話しをしてみることにした。


「んでんで実際どうなのよ!貴方が不死身って言うのは?」


ベッドの上少女は俺に擦りよってくる。

正直鬱陶しい……



「俺は不死身じゃない」

「ダウト、さっき殺してくれって言ってたじゃん、それに私嘘ついているかいないかわかるの、貴方のその呪いもね」

「それが慈愛の魔女の能力か」

「えぇそうよ、私に与えてられた能力は2つ

「真実の目」と「心境の目」」


そう言うと少女は左の目に指を差す。

その緑の瞳の中にはうっすらとし星が光っており

まるでそこが夜空のようだった。


「真実の目は他者がついた嘘を見抜ける。

心境の目は他者の感情を読み取るの!ただ、」


少女は残念そうに口を開く。


「久しぶりに人と会ったからかしら、貴方の感情が全く読み取れないの…」


俺は少し安心する。

自分の感情をつねに読み取られるのは、こいつと

交渉や心理戦をした時に一歩前に行かれる可能性が少なくなる。

まぁ嘘をつけない時点で俺の立場は危ういが

まだマシと言えるだろう。


「いいことを聞いた、常に自分の感情を読み取られるなんて真っ平ごめんだからな」

「この問題はとりあえず保留にする。もしかしたら

貴方以外の人には効くかもしれないしね、で」


少女は、少なくなっていた俺との距離を、さらに

縮める


「不死身なんでしょ?」


ここで更に嘘をつくとまた面倒なことになるので認めることにする。


「あぁ…そうだが」 

「えぇ、素直でよろしいわ」


そう言いながら俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でてくる

俺はその腕を振り払うと少し頬を膨らませ睨んでくる。

なんなんだこいつは……

俺はこいつの行動があまりにも理解できずに困惑していた。


「ねぇねぇ私と取引しない?」

「取引?」

「私がその呪いを解放方法を探してあげる。

そのかわり、私が不死身になるの手伝ってよ」



俺は少女を睨んだ。

この取引はかけてみる価値はあるがハイリスクだ

俺は自分を殺すために旅をしている。

もしこの条件に乗ったとして果たしてこの少女は本当に約束を守ってくれるのだろうか?

すでに一回騙されてかけており俺は警戒心を強める


「何が狙いだ?」

「別にそのままの意味よ、深くは考えなくていいわ」


俺は数秒下を向き外を見る。

さっきまで少ししか降っていなかった雪が吹雪となり森を覆っていた。


まぁ時間は余るほどある、騙されたところで問題はない。


俺は手に持っていた冷めたコーヒーを飲み干すと


「いいだろう」


俺は一つ返事で了承した。


「決まりねこれからよろしく」


そう言うと俺に握手を求めてくる。

俺はその手を握ろうか迷ったが求めてる手を軽い力で叩く。


「つれないわね、まぁそこが貴方の長所かしら?」

「で、俺はどうすればいい?」


あえて主導権を握らせることにした。

俺は不老不死に関しての情報が不足しており、対して相手側はそれについて情報多く持っていると考える。

ここは俺が勝手に動くべきではないと判断した。


「そうね、まずは残りの魔女を探しましょうか」

「それなら一人場所を知っている」

「え?」

「ギンガルド王国に宮廷魔導士として任命されてる魔女がいるそいつの名前は確か…

「ちょっとまって、え?」

「どうしたんだ?」


セレスティアはびっくりとし表情でこちらに顔を向けると


「魔女って世界中から憎悪を受ける存在じゃないの?」

「何百年前の話だ?、そんだけ年月が経っていれば

人の考え方だって変わる」

「え、使い魔達…肝心な情報掴んでないじゃん…」


セレスティアがリスの使い魔を見ると

わざと視線を逸らしているように感じた。

彼女は情報の誤りを認識し落胆した。


「続けるぞ、確か名前は、[エキドナ]とか言ったか?」

「情愛の魔女ね、まぁ性格には凄い癖があるけど

情報は持っているんじゃないかしら、」


ん?こいつも癖だらけような…

もしかして魔女ってみんなこういう奴らの集まりか

まぁいいか、多少強引にでも話しを聞ければ

俺は立ち上がり、ハンガーにかけてあった黒衣を着るとドアを開ける


「じゃあ行ってくるぞ、適当に情報掴んで帰ってくる」

「どこへ行くの?、私も支度するからまってね」

「は?」

「ん?」

「は?」

「え?」


交互に短い言葉のやり取りが高速で行われる。

そう、俺達の間には認識の違いがあった。


「いや、俺一人で行くつもりなんだけど」


俺はてっきりこいつが家で待ち使い魔で情報を共有しながら進めることだと思っていた。


「せっかく魔女と人のわだかまりが無くなっていることを知ったんだし行くしかないでしょ?」

「お前、足手まといになるから一人で行く」

「私がいれば他の魔女との会話もスムーズに行くんじゃないかしら? 今のあなたは冒険者、ただのなんでも屋が王国の宮廷魔導士に会えると本気で思っているの?しかも貴方ランクはE、ついこの間登録したばっかでしょ」


正論で殴られる。

確かにそうかもしれない。

こいつがいた方が絶対楽になる。

ただ、こいつの策略にハマるのが嫌なだけだ。

まさか、最初からそのつもりで……


「あ、あと私の名前はセレンと呼ぶように、セレスティアは、前の私っていうことで」

「意味がわからん」

「いずれ理解するわ、さ、私は着替えるから玄関で待っといてもらっていい?」

「測ったな?」

「さぁなんのことかしら?私にはさっぱり」


そう言うとセレンはさっきと同じように手を伸ばし握手を求めてくる。


「よろしくね、ライ」


俺はさっきよりも力強くその手を叩いた。

これがこいつセレンとの最悪の出会い

そして



     全てを終わらせる旅の始まり

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