106.心の強さ
★前書き
いつもご愛読いただきありがとうございます。
この度『第4回HJ小説大賞』にて本作が受賞いたしました。
いつか書籍化すると思うので、その時は近況ノート等で報告致します。
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正気か?
チーちゃんがお風呂から上がった後の浴室でシャワーを浴びながら、
確かに応募はしていた。していたが、どちらかと言えば声がかかるなら様々な意味でクリーンな村娘の方だと思っていたからである。なろうのブクマあっちの方が多いし。
今の気分を例えるならば『禰豆子が人食っちゃった』と炭治郎から聞かされた冨岡さんのようである。
集英社と講談社と小学館と任天堂とフロムとサンライズと……中指を突き立てた相手が多すぎて、腹を切って詫びなければいけない回数が、宿儺の指の本数より多いことだけは確かであった。
こんな火薬庫で煙草フカしてるみたいな小説を商業ラインに乗せたら、私は一体どうなってしまうのだ。
各方面からタコ殴りにされた後に、天竜人に捕まったバッカニア族みたいにされてしまうのだろうか。まあ、ワンピのくまと違って私は罪状が真っ黒なのが悲しいところである。
先行きの見えない不透明な未来が、私から自信と冷静さを奪い去っていく。
時事ネタとパロディ部分を全部書き直してチー付与のコミカライズみたいな別物になるのか、伏字だらけの戦後の教科書みたいな小説が世に送り出されてしまうのだろうか。
私は恐怖のあまり、あらすじ欄に記載している毎週更新の誓いすら守れる自信が無くなっていた(1敗)。
うるせェ!! 書こう!!
ど ん っ !!
いや、ドンじゃねえわ。
心の中でルフィとゴーイングメリー号の出航を見送ると、私は落ち着くことにした。
ふぅ、落ち着いた。
落ち着いたので冷静に今後のことを考えよう。
好き放題に360度放火して回る楽しい執筆活動は終わりか……
私は浴槽に身を沈めながらアンニュイな溜息を吐いた。
無念――ああ、無念だ。
『呪術師に悔いのない死などない』
私の脳裏に夜蛾学長の言葉が蘇った。まあ私は呪術師では無いのだが。
だが、これはある意味天啓なのかもしれない。
これまでの行いを悔い改めて、真っ当な創作をしろという神からのお告げだと思えば、そう悪いものでもないだろう。
連載開始から1年以上経過してから忠告してくるとは、暢気な神様も居たものである。
しかし、まだ手遅れではない筈だ。私はみんなから愛されるなろう聖女モノの如くクリーンなヒロインとして生まれ変わるのだ。
私は熟練のクズなので、自分の品格を落とさずに男を悦ばせる手段などごまんと持っているからな。真のビッチは決して自分を傷つけないのさ。
とりあえずジャンプネタを擦ることから卒業しよう。チーちゃんのことを金の雛鳥って呼ぶのも止める。ワートリで言うなら私はハイレインよりもチカちゃん寄りの存在だし。
権利関係を心配せずに安心して読める小説に方向転換するのだ~。
千里の道も一歩から。私は今日から心を入れ替えてやり直す。真人間になってリトライするのだ。
――でも、ただのリトライじゃねぇぞ。
何度でも心の強さで立ち上がり、前に進む。
ド級のリトライ――ドリトライだ!!
私は妙な電波を受信して頭がおかしくなっていた。まあ今更である。
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