37.試行錯誤をするのも醍醐味



 さて、夏休みも終わり、二学期が始まりました。音虎ねとら 玲子れいこです。



 ――しかし、実のところ普段の学校生活では、特に語ることは無かったりする。


 というのも、ユウくん達も中学校という新しい環境に慣れ、一学期と夏休みを経て、クラスメイト達の人間関係も安定してきた。こうなってくると、日常生活の中でこれと言ったイベントは起きないのが現実である。

 無論、ユウくん達の好感度調整は怠っていない。

 ユウくんには、焦れ焦れなピュアピュアカップル成立寸前の純愛ラブコメ路線で。フユキくんとユリちゃんには、性欲を刺激するエロコメ路線みたいなイベントを用意して、NTRチャートの精度を高めているし、ちょくちょくオヤツとして、クラスメイトの山田くんと机をくっつけてソシャゲを遊んだり、美味しかったお菓子のお裾分けをしたりして、オタクに優しいギャルみたいなムーブで情緒を破壊したりはしている。

 しかし、この程度のことは私にとって、日常ゆるふわ4コマぐらい平凡な日々の1シーンなので、二学期序盤は本当に何もイベントの無い、穏やかな学園生活を私は送っていた。



 さて、そうなると行動リソースを持て余した私としては、勿論やる事は一つである。

 ――そう、間男候補の選別である。


 親友枠と百合枠は既に確保しているので、次に狙うのは……不良枠である。


 しかし、この不良枠。NTRに詳しい有識者の方々ならば、無論ご存知であろうが、管理が凄まじく難しい。

 アウトローな属性である以上、NTRとは全く関係ない所で問題を起こされて、チャートから離脱されるなんてのは、少し頭を働かせれば簡単に予測が付くであろう。

 ただでさえ、間男には育成コストが馬鹿みたいにかかるのだ。それを万引きやら、暴行やらでいちいち停学だの退学だのになっていては、お話にならない。

 そんなことするぐらいなら、不良仲間を誘って私を廃墟で(自主規制)するとかにしなさい。ビデオカメラとかこっちで用意しておくから。


 かと言って、私が完璧に手綱を握って従順に従うような木偶でくにしてしまっては、そもそも不良属性の間男である意味が無い。この辺りのさじ加減は本当に難しい。

 前世でヤンキーカップルを寝取った時にも、シチュエーションの調整には大変苦労したものだ。今となっては良い思い出だが。


 そういった諸々を考慮していくと、ぶっつけ本番で不良枠の間男の作成にチャレンジするのは、少しばかり無謀というものだろう。

 まあ多少ガバっても、その後全部ノーミスなら問題ないので続行すれば良いのだが、急ガバ回れという言葉も有る。ここは慎重に行くことにしよう。



 という訳で、私はまず練習として、何人かプロトタイプ不良間男を先行試作してみることにした。



 ***



「君、いつもここに居るよね?」

「――あぁん?」



 時には、ちょっと治安悪目なゲームセンターで暇そうにしてるヤンチャくんに絡んでみたり。



 ***



「あ、あのっ、ありがとう、ございました……」

「……ケッ、別にムカついたから殴っただけだ。てめえの為じゃねえよ」



 時には、露骨にガラの悪い男達がたむろしている裏通りで、いい感じに絡まれながら、ターゲットの元まで逃げてみたり。



 ***



「お、お願いです。わ、私の学生証、返してくださいっ」

「ククク、まあそう怖がるなよ? ちょ~っと、付き合ってくれりゃあイイからさ?」



 時には、学生証(ハンドメイド偽造品)を奪われて押し付けて、怯えながら要求に従ってみたり。



 ***



 まあ、そんな感じで何体か試作してみることで、不良間男の錬成に関するノウハウの蓄積には成功した。

 ちなみに、作成したプロトタイプ達は元々チャートに組み込む予定は無かったので、適当なところで放流して切って捨てました。

 要するに彼らは十刃落ちプリバロンエスパーダみたいな捨て石だったのである。

 大半はほろ苦い青春の1ページとして受け入れて、ほぼ円満にさよならすることが出来たのだが、中には暴力やら脅しやらをチラつかせて、肉体関係を迫ってくるような奴も勿論居た。


 イイネイイネ~~! やっぱり不良枠ってェ~のはこうでなきゃさァ~~ッ!! 


 個人的にはお行儀よく私とお別れしてくれたマイルドヤンキー達よりも好印象である。



 ――だが、残念ながらNTR本編を始めるのは高校生になってからと決めているのだ。


 脅されて怯えながら制服脱ぐぐらいなら許容出来るし、テストケースとして実際にやってみたりもしたが、本番行為はNGである。


「――――――はっ?」


 私の下着に手をかけようとしたプロトタイプの後頭部を掴み、廃墟の壁に叩きつける。

 男は一瞬で気絶し、地面に崩れ落ちた。完璧な寝取られ女クソビッチは状況をコントロール出来るだけの暴力を持っているものなのだ。

 情報ダーテンの収集が甘かったようだな。被造物如きが造物主に勝てるとでも思ったのか! 私はゼオライマーの木原マサキみたいになった。


 後は男が気絶から目を覚ました時に見える位置に、色々と男にとってヤバイ情報の書き置きを残しておいて『命が惜しかったら全て忘れろ』というような内容をマイルドに伝えておく。

 まあ、従わないかもしれないが、その時は更にキツめに調教してやれば良いだろう。多少手間だが、ガバという程ではない。

 去勢しやすい素材をプロトタイプに選んでるしね。完璧な寝取られ女クソビッチはアフターケアにも抜かりはないのだ。


 こんな感じでヤンチャなプロトタイプ達の処分も完了。

 乱暴に扱われるのは、フユキくんやユリちゃんでは味わえない体験だったので、ちょっと気持ちよかったが、彼らはあくまで先行試作型。本命までの"おやつ"なので、満腹になるまで食う訳にはいかないのだ。

 悲しいなあ。私はしゅんとした。



 そんなこんなでゆるふわキュートな日常を楽しんでいた私だったが、いよいよ学園生活の方でも定番のイベントが近づいてきた。

 そう文化祭である。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る