13.闇を祓って



 ――やりました。やったんですよ! 必死に!! 

 その結果がこれなんですよ! 

 間男を確保して、自分を寝取るように誘導して、今はこうして男を男に寝取られそうになっている。

 これ以上、何をどうしろって言うんです! 誰の脳を破壊しろって言うんですか!! 



 ひとしきり脳内でバナージごっこをした後、レイコは冷静になった。

 一瞬、ユウくんを寝取られそうになっているというシチュに、ちょっと気持ちよくなっちゃったが、普通に誤解だろう。

 日々、ユウくんをストーキングしているからこそ分かるが、ユウくんは普通にノンケだ。所有しているスマホのブクマに登録されているアレコレも、清楚系お姉さんとかイチャラブ幼馴染モノとか年頃の男子らしい健全な嗜好のものばかりであったから間違いない。


 何故ユウくんのスマホのブクマを把握しているかというと、普通にソーシャルハックである。

 ロック解除PINに誕生日使うのは止めた方が良いよ? 私は脳内でユウくんに忠告しておいた。忠告したのだから、今後私にスマホを覗かれても、それはユウくんの責任である。そういう事になった。


「もう、二人とも何遊んでるの? 早く試験勉強の準備しなさいっ」


 フリーズから立ち直った私は、何事もなかったかのように、お盆に乗せた麦茶を配って準備を促す。

 ちなみに座席ポジションは私の隣にユリちゃん、正面にユウくん、斜め前方にフユキくんという形である。

 前方に男連中を置いたのは、まあ好感度調整の一環である。

 今日の私の服装は薄手の白シャツなので、普通にピンクのかわいい下着が透けている。色々と旺盛な年頃の男子は性欲と恋愛感情がごっちゃになっているので、ちょっとえっちなサービスをしとけば、それだけで好感度にバフがかかるので非常に楽ちんである。

 勉強に集中しているフリをして、机に視線を落としておけば、前方の二人も覗き見しやすいだろうという配慮である。隣のユリちゃんには、その分スキンシップ多めで対応する。これぞ旋回活殺自在陣。


「それじゃ、はじめよっか!」

「「「はーい」」」


 そんな感じで勉強会が始まるのだった。



 ***



 3時間もかからず試験範囲を網羅出来たので、速攻で勉強会は終わった。

 今はユウくんの手土産の羊羹を食べながら、みんなでマリカーをやっているところである。

 まあ中学一年一学期の中間試験なんて、定期試験というイベントのチュートリアルみたいなものだ。私も初めからガチの勉強会というよりはレクリエーションのつもりだったので、想定通りである。

 ちなみに学力の並びは


 私>フユキくん>ユウくん>ユリちゃん


 の並びである。

 まさかの眼鏡女子が学力最下位。まあそれでも、ユリちゃんの学力は平均よりちょっと下程度なので、私がサポートすれば問題無い範囲である。

 付け加えるなら、ユウくんは平均よりちょい上レベル。私とフユキくんは多分校内で上位10名に入る感じ。

 私は前世貯金というインチキをしているのでともかく、フユキくんはマジで文武両道の超人だ。

 ルックスも爽やかイケメンだし、そりゃあこんな優良物件を彼氏にするでもなく囲い込んでたら、女子達からヘイトを貰うわ。

 彼も何だかんだで私の毒がかなり回っているので、告白してきた女子は全て切って捨てられているらしい。フラれた彼女たちには申し訳ない気持ちも多少あるが、私も本気でNTRルートを目指す者として、ここは譲るわけにはいかない。


『寝取られは異常性癖だ』『寝取られる相手の気持ちも考えろ』などと理屈の通らない事を自分に言い聞かせて、己を誤魔化すのか? 私はそんなのゴメンだね。

 自分が死ぬ時のことは分からないが、生き様で後悔はしたくないと虎杖悠仁も言っていた。令和を代表するジャンプヒーローが言っているのだ。私もそれに倣うべきであろうよ。

 まあ、私の人間性はどちらかというと両面宿儺だが、雰囲気だけでも努力友情勝利っぽい空気感を出していこう。


 という訳で勉強会の真の目的である、ユウくんと私の間に"縛り"を作る為に行動を始めるとしようか。今の私は漫画脳だぜ。


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