第54話……消える兵器!?

『カーヴ、大した戦果ね! 流石だわ!』


 私は惑星ドーヌルに寄港中、通信モニターに映るセーラさんに褒められる。

 やはり敵の巨大な機動要塞を破壊したのだ。

 マーダを憎むセーラさんの喜びはひとしおだった。



「有難うございます。で、惑星アーバレストの様子はどうですか?」


『それがね……』


 セーラさんは曇り顔で言葉をつづけた。


 それによると、惑星アーバレストへ向かった惑星ドーヌルの防衛艦隊は、惑星アーバレスト近くの宇宙空間にてマーダ連邦の艦隊と交戦。

 人類側は大型艦が多かったので、長距離が有利と判断。

 長距離用のレーザービーム砲で攻撃を開始した。

 それに対し、小型艦艇の多いマーダ側は肉薄攻撃を敢行。

 戦いは混戦となった。



――結果。

 マーダの近距離からのミサイル攻撃で、人類側は大型艦を多数失った。

 人類側は、以前と同じく、マーダの謎のミサイル攻撃に敗れたのだ。

 その後、人類側は他星系からの応援もあり、戦線は膠着した。


 ……だが、安易に交戦すると、また敗れる可能性が高いのではないかということだった。



「敵は、また実体弾による攻撃だったのですね!?」


『……ええ。私は詳しくないのですが、そう聞いています!』


「ふむう……」


――実体弾。

 それはレーザービームなどの光学兵器とは違い、ミサイルなどの質量を伴う昔からの兵器だった。

 実体を伴うため、質量や炸薬などの効果もあり打撃力は高かったが、その反面、弾速は遅く、容易に回避、又は迎撃されることが多かった。


 ……しかし、何度もこの実体弾にやられるということは、なんらかの方法で迎撃されないなど、未知の攻撃力を持つ兵器である可能性が高かった。



「……で、A-22基地の方はどうなんです?」


『未だ健在ということなんですけど、食料や弾薬が乏しいとも報告が来ています……』


「……そうですか。わかりました。至急対策を練ります!」


『カーヴ、お願いしますね』


 私は心配そうな顔をするセーラさんを宥め、超光速通信を切った。




☆★☆★☆


「旦那、どうします?」


「どうするもなにも、どんな堅陣だって補給なしには持たないさ」


 ブルーに返事をするが、クリシュナとて敵機動要塞と一戦交えた後だ。

 すぐにA-22基地救出に急行するわけにはいかない。

 整備や補給を行わねばクリシュナとて動けなかったのだ。


 惑星アーバレストのA-22基地は、マーダの地上軍に包囲されてはいるが、すぐに陥落するというわけでは無かった。

 今まで、沢山の資材を使って要塞化しておいたのだ。

 そう簡単に落ちてもらっては困るのである。



「出航する!」


「了解!」


 クリシュナは補給の為に帰港していたドーヌルの宇宙港を飛び立ち、整備と修理のために惑星アルファを目指した。

 結局、惑星ドーヌルでは技術力が足りず、クリシュナの修理が出来なかったのだ。


 クリシュナは二度のワープと通常航行により、無事に惑星アルファの氷の大地に着陸。

 整備のために宇宙船アルファ号に横付けしたのだった。




☆★☆★☆


「……なんだこれは?」


「どうしたんです?」


 私はクリシュナの整備を汎用ロボットのコンポジットたちに任せ、ウーサの店でタブレットモニターを覗いていた。

 モニターに映っているのは、件のミサイル兵器である。


 ……否、正確には映っていない。

 発射されたミサイルはすぐに消え、しばらくすると人類側の艦艇に命中していた。

 何がなんだかサッパリわからない。



「これなんで消えるんだろ?」


「私に聞かれましても……」


 私の問いかけに、困った顔をするウーサ。


 ……しかし、私は分からないですまされない。

 私は頭をかきながら、葉巻に火を付け、ロックのウイスキーをあおった。



「もしかしたら、隠れているんじゃないです?」


「……ぇ? 隠れるって? どこに?」


 何にもない宇宙空間のどこに隠れるというのだろう。

 ……まてよ、何もないわけじゃないな。


 宇宙にはまだまだ解明されていない謎がある。

 目に見えないだけで、謎の物質は漂っているかもしれないし、謎のエネルギーが存在しているかもしれない。

 そんな未知の場所が宇宙という場所だった。


 よって、ウーサが言うように、敵のミサイルが航行途中、どこかに隠れているかもしれないのだ……。



 その晩、私は酔ったままクリシュナへ帰った。

 艦橋でブルーに出迎えられる。



「おかえりなさい。……で、旦那、良い方法が見つかりましたか?」


「いい方法は見つからなかった……。もう撃たれる前に敵艦自体をやっつけるしかないな……」


「……ええ!? そんな無茶な!」


 ブルーは不満そうだったが、そもそも簡単に対策なんてうてるものじゃない。

 そんなに簡単に対策できたら、そもそも兵器として成立しないのだから。



「まぁ、飲もうぜ、相棒!」


「……飲みますか!」


 結局、その日は朝まで飲んで潰れた。

 よい案は浮かばないなら、せいぜい英気を養うことが、明日を戦う戦士にとっては大切なことだったのだ。


 惑星アルファの氷の大地にも、青白い朝日が昇る。

 ……そう、明けない夜明けなどないはずであった……。

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