第694話 プロパガンダ
「ほほ~、これが狩野派の画体かぁ」
狩野派オタとしては見逃せない。ということで私も松栄さんの持ってきた大福帳っぽいものを見せてもらったのだった。
『今さらですけど狩野派オタって何ですか?』
狩野派を愛し、狩野派を求め全国を旅し、ついには狩野派を真似て絵を描き始めたオタクのことです。
『ニッチ……』
周りに流されずに我が道を行くと言っていただきたい。
しかし大福帳っぽいものは見にくいわね。開いても変な風に曲がっちゃうし。
ここはスケッチブックを開発するべきでは!? そして画家に高値で売りつけるのだ!
『ニッチ……』
細かな需要も見逃さないと言っていただきたい。
『ほんと、金のニオイに敏感ですね』
なぜ呆れられなければならないのだろう? 解せぬ。お金は大事だよ?
『あなたはお金儲けのために大切なものまで失っていますし』
なんか格好いいことを言われてしまった。私も負けていられないわね!
『こんなことで張り合うな』
ふふふ、どうやら私が本気を出すことをプリちゃんも恐れているらしい。
『……いえ、たしかに恐れてはいますが。周囲への被害という意味で』
プリちゃんが恐れているなら積極的に格好いいことを言う機会を狙っていきましょうか。
それはともかく。障壁画を描き始めるにしても画材やら何やらを大量に準備しなきゃいけないそうなので、それらは商人である生駒家宗さんや今井宗久さんに注文するとして。
画材とかが集まるまで、狩野松栄さんには『浮世絵』を描いてもらうことにした。たぶん描けるんじゃない?
『浮世絵が誕生したとされるのは17世紀後半、その祖は「見返り美人」で有名な菱川師宣であるとされています。……時代をぶち抜きすぎでは?』
時代とは超えるためにあるのだ。と、格好いいことを言ってみる私。
『ちなみに「浮世」とはもともと戦乱の辛く儚い世の中を指して「
むしろ浮世絵から戦国時代を終わらせるのだ。と、格好いいことを言ってみる私。
ま、とにかく。松栄さんに暇させるのも悪いし、ここは浮世絵を描いてもらいましょう。
『今まで放置して暇させていたくせに』
今まで放置させていた分働いてもらうのだ。と、格好いいことを言ってみる私。
『別に格好良くはないですね』
解せぬ。
さて、題材はもちろん三ちゃんである。三ちゃんの素晴らしさと格好良さを天下に知らしめるのである。
『なるほどつまりプロパガンダ。ねつ造された英雄談』
プリちゃんはもう少し言葉を選んでいただきたい。
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