第691話 久々の歴史オタ
なんだか面倒くさい――いや、重要な任務を任されてしまった。
斎藤道三と織田信秀の会談。
戦国時代オタから金を取れる見世物なのでは?
『歴史を変えかねない重要な会談を見世物扱いするな』
とかなんとか言っちゃって~、プリちゃんも楽しみにしているんでしょう~? この歴史オタが~。
『……否定はしませんが』
良くも悪くもバカ正直なプリちゃんであった。
さて。会談のセッティングとなると重要なのは相手の意思と、会談場所、そして何を取り決めるかよね。
相手にその気がなければそもそも開催自体が不可能だし、一応美濃と尾張はまだ敵国なのでどちらの国で会談をするのかという問題もある。いっそのこと第三国で、という手もあるけれど、周りに丁度いい国もなさそうだし……。
あとは会談で何を話し、何を決めるのか。
いきなりトップ二人が会って腹を割って話し合い、重要事項を決定……なんてことはそう簡単にはできない。まずは事務方が連絡を取り合い、お互いの主張のすり合わせをして、大まかに合意事項が決まってからトップ会談をするというのが普通の流れだと思う。
「まぁ、まずは会談場所を決めましょうか。どこか希望はありますか?」
お義父様(織田信秀)に確認する私。
「嫁殿に任せよう」
「任せようって……」
じゃああんた、私が決めたら稲葉山城まできてくれるんかい? とツッコミを入れそうになった私だけど、お義父様は喜んでやって来そうだなって。真・稲葉山城の見物を兼ねて。周囲を威圧ばかりしているので忘れがちだけど、この人も三ちゃんの父親なのだ。つまりは好奇心の塊。心は小学三年生。
『先年の戦いで大敗したあとに稲葉山城に行く……。人によっては降伏したと見なすでしょうね』
なんだか面倒くさいことになりそうなので、稲葉山城案は却下で。
じゃあむしろ父様(斎藤道三)を那古野城か末森城に叩き込んじゃう?
『あの
あー、戦の時すら引きこもっているものね。まぁ謀略で結果は分かりきっているのだから出陣する意味を見いだせないのだろうけど。むしろ最近は肉ばかり食べてどんどん太っているのだから、今のうちにダイエットがてら稲葉山城~末森城弾丸マラソンをやらせるべきでは?
『死ぬんじゃないですか?』
容赦のないプリちゃんだった。
「ん~、じゃあ、尾張と美濃の国境あたりにあるお寺でも探しておきましょうか」
「で、あるか。まぁそのあたりが落としどころであろうな」
『ちなみに織田信長と斎藤道三が会談したことで有名な正徳寺の会談ですが、『現在』の正徳寺の場所と信長公記との記述が合わないんですよね。信長は船で川を渡って正徳寺に行ったはずなのに、現代の正徳寺は名古屋城と川の間に立っていますから。木曾川は何度も氾濫を起こしていますし、そのたびに正徳寺も移転したとされていますから――』
おっと油断していたら
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