第679話 マムシ退治(二回目)
なんだかまた濡れ衣を着せられている気がする。近衛師団の団旗に『蝶』のモチーフを選んだだけなのに、「ま~た帰蝶が何かやらかしたのかよ」って呆れられている気がする。
『そこまで具体的だともはや「気がする」で済ませるのは無理があるのでは?』
プリちゃんの冷静な突っ込みであった。ちょっと色々受信しただけなのにー。
『あと、濡れ衣ではなく日頃の行いです。疑われて当然です。是非も無し』
プリちゃんの冷酷なツッコミであった。そろそろ泣くぞ?
え~んえ~んと泣き真似しているうちに
使ったのは扇子。それを四枚。扇風機の羽根のように設置して、本体に取り付け。本体には手回し用ハンドルがくっついているという形だ。
『なんというか……江戸時代にあったという手動式扇風機そっくりですね。あちらの羽根は団扇を使っていましたが』
どうやら偉大なる先人たちも私と同じ発想に至ったらしい。だが残念だったわね! 今は戦国時代! つまりは私の方に特許権が発生するのだ!
『そもそも江戸時代が来るんですか、この世界?』
ツッコミどころはそこですか?
「はい、というわけで父様。さっさと回してください。このハンドルをクルクルと。そして娘に涼を届けるのです!」
「む、儂がやるのか……?」
不満げな美濃のマムシだった。こんな可愛い娘のために行動できるというのに何が不満だというのか。
というわけで畳みかけることにした私である。
「なんだか清洲城関連で私に迷惑が掛かりそうですし? 今のうちから私に媚を売ってポイント稼ぎをしておいた方がいいのでは?」
もちろんこの時代に『ポイント稼ぎ』なんて言葉はないけれど、そこは
『見た目が美少女になった結果、甘くなっている……』
愛されキャラの座を奪われそうになって戦々恐々とするプリちゃんであった。
「……ふむ、この取っ手を回せばいいのか?」
悪巧みをして私に迷惑を掛ける予定があるのか大人しくハンドルを回し始める父様だった。ぐるぐるぐると。四枚の扇子が回っていく。無論私は扇風機の前で涼風を受ける準備万端だ。
ぐるぐるぐる。
ぐるぐるぐるぐる。
……こ、これはっ!
全然っ!
涼しくないわねっ!
『そりゃあ人力ですからね。大した風量にはならないでしょう』
無慈悲なプリちゃんのツッコミであった。
ちなみに父様は早々に息を切らせていた。鍛錬が足りぬのだ鍛錬が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます