第648話 1,000万pv突破記念☆短編 とうとうやりやがった――いつもやらかしてるな


 錬金術士として、やはり人体錬成とかホムンクルス作製はしておくべきよね。


『止めろバカ』


 口調が乱れておりますわよプリ様?


『いくらアレでも命を弄ぶようなことはしないと思っていたのに……いや、今までも割と……』


 解せぬ。


 私がいつ命を弄んだというのか。むしろ病や貧困に苦しむ民衆を救いまくっているでしょうが。


『一向宗徒は?』


 向こうから敵対してきたので、是非も無し。こっちの慈悲を無下にしたので、是非に及ばず。


『そういうところです』


 こういうところらしい。


 まぁでも、ホムンクルスは作製から成長まで少し時間が掛かるけど、人体錬成なら簡単よね。材料さえあればいいのだから。え~っと確か水35Lに炭素20㎏――


『……たとえその材料を準備したとしても、人体錬成はできないのでは? パソコンに使われるものと同量の金属や樹脂、有機化合物などを準備したところでパソコンを組み上げることはできないように』


 お、それは私に対する挑戦かな? いいでしょう! ならば作ってあげようじゃないの! 空間収納ストレージからそれっぽい素材を取り出して――


『……なんでこう単純なのか』


 プリちゃんからの期待の声を背にして、錬成! ズガーン! ババーン! ドドーン! 辺りは煙に包まれた!


『錬成にあるまじき効果音と煙の量』


 胸をドキドキさせるプリちゃんの声とともに、視界を奪っていた煙が晴れた。その場に横たわっていたのは……人間。少女。いや、美少女であった。人間にはまずいないであろう蒼い髪の毛が特徴的。


『いえ、まず真っ先に注目するべきは素っ裸であることでは?』


 人体錬成のための素材は準備しても、服を錬成するための素材はなかったからね。是非も無し。


『そういうところです』


 こういうところらしい。


 しかし、う~ん? 動かないわね? 私が作ったのだから完璧なはずなんだけど。


あなたポンコツが作ったから失敗作ポンコツなのでは?』


 解せぬ。


『……仮に、万が一、奇跡に奇蹟が重なって完璧な人体錬成ができたとして、』


 そこまでの前置きは必要なんですか?


『肉体は存在しても、魂はないのですから動くはずもないのでは?』


 あーそういう。魂はちょっと扱いづらいから苦手なのよねぇ。下手に弄ると師匠に怒られるし。


『また気軽にそういうことを言う……』


 気軽には扱っていないのだから、いいじゃない。


 あ、そうだ。

 魂がダメなら――他のもの・・を入れればいいのだ!


 と言うわけで!


 私は近くを漂っていたスキル・自動翻訳ヴァーセットをむんずと掴み! ぐわんと振りかぶり! 錬成したばかりの肉体に叩き込んだ!


『スキルを物理的に掴むな。気安く叩き込むな。まずは本人の意志を確認して、せめてもう少し丁寧に扱いなさい』


 怒濤のツッコミからのお説教であった。解せぬ――いや、解せるか。


【……あれ? 私は……?】


 今まで動かなかった蒼髪美少女が上半身を起こし、戸惑うように辺りを見渡していた。


 成功!


 成功である!


 さすが私! 大・成・功っ! である!


『あーあ、また犠牲者が……』


 解せぬ。

 肉体を持たぬ自動翻訳ヴァーセットが美少女の身体を手に入れたのだからハッピーエンドじゃないか。バーチャルならぬリアル美少女受肉じゃないか。


『いいかげんにしろ』


 マジすみませんでした。



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