第647話 第15章 エピローグ 信長公記にいわく


 ――信長公記にいわく。


 織田信友は家臣の河尻与一らに命じて守護邸を取り囲み、これを襲撃した。


 守護方の善阿弥という男は敵を次々に斬り捨て、その手柄は比類のないものであった。


 裏口を守る森政武・掃部助兄弟も斬りまくり、多数の敵を討ち取ったが、最期は柴田角内に首を取られた。


 丹羽祐稙という男も打って出て奮戦し、これもまた比類のない働きであったという。


 このように多くの家臣が奮戦したが、衆寡敵せず。斯波義統は屋敷に火をかけ、一族や家臣数十人と共に自害して果てた。


 侍女たちは堀を越えて逃げようとして、幾人かは脱出に成功したが、多くの者が溺れ死んだという。憐れなことである。


 尾張守護・斯波義統は天道(時勢)が織田信長公にあると見抜いていたが、それすらも読めぬ織田信友の反逆によって無念にも命を落とした。


 信長公が尾張を手中に収めるには必要であったとはいえ、天道とは恐ろしいことである。


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