第631話 帰蝶 類語として鬼畜、悪魔など
話の流れで、稲葉一鉄さんを伴って城下町の養生院へ。
ちなみに父様が「やっと帰ってきたのだからもう少しゆっくりとだな……」と寂しそうな顔をしていたけれど完全無視。そろそろ娘離れをしていただきたい。
『いや道三の場合は事情が特殊なんですから……』
≪よくは知らんが十年ほど離ればなれになっていたのじゃろう? ならば甘くもなろうて≫
「もうちょっと父親に優しくしてもいいと思うな私」
何とも人間として真っ当な意見だけど、それを言っているのが人工妖精とドラゴンと神様なのがまた。
【人外より人の心を理解できていないと】
ちょっと
『あなたです』
≪おぬしじゃろ≫
「帰蝶だろうねぇ」
解せぬ。
私に対する毒舌ならむしろプリちゃんに似たのではなかろうか? 帰蝶ちゃんは訝しんだ。
「いやはや、『美濃のマムシ』がずいぶんと丸くなったものですなぁ」
と、そんなことを言うのは稲葉一鉄さん。そう見えるかもしれないですが中身は真っ黒なままなんですよ?
「一鉄さんは父様の義理の弟になるんでしたっけ?」
なら昔の父様を知っていて当たり前か。
「えぇ。そうなりますな。拙者の姉上が山城守殿(道三)に下賜され、義龍殿を生んだのです」
下賜って。なんだか凄い単語が出てきたわね。
『斎藤道三の側室で斎藤義龍を産んだ
女性を与える。なんだか理解しがたい世界だ。
『いわゆる拝領妻ですね。主君としては家臣の功に報いることができますし、家臣からすれば主君の愛妾をいただけるのは名誉なことですからね』
なんというか、すごい時代だこと。
『ちなみに。平清盛の母親も白河上皇から下賜された女性であるという説もありますね』
なんともはや。
同じ女性として、女性の道具扱いは思うところがある。権利向上もいずれやらなきゃいけないか。とはいえそのためには価値観からして変えていかないとだから……。
……う~ん、いっそ長尾景虎さんが越後に帰り、越後の守護として大成功を収めれば女性の社会進出の助けになるのでは?
『とか何とか言って、恋のライバルを越後に追いやろうとしているだけでは?』
プリちゃんは私を何だと思っているのか。
≪うわ、鬼畜≫
「悪魔」
【そろそろ鬼畜や悪魔の類語として『帰蝶』が登録されそうなのですが?】
疑うことなく信じる玉龍・師匠・
そもそも三ちゃんほどの男であれば女の方から寄ってくるのだから、私だってそこまで目くじらを立てるつもりはない。
……三ちゃんの地位や財産が目的だった場合? あははっ。あははははははっ。
まぁ、それはともかくとして。
女性の地位向上・社会進出のためにはまず独り立ちできるだけの経済基盤を作らないと。でも仕事なんてそう簡単に準備できるものじゃない。治癒術士は……才能がないと無理だから、普通の西洋医学か漢方の薬剤師とか目指してもらう? となると医学校を作って――
おぉ、回り回って最初の方に戻ってきた。さすがは私だわ。
『偶然そうなっただけなんですから、そんなにドヤ顔しなくても』
まるで『うっわ、この程度でドヤ顔するとか、恥ずかしい……』とでも言いたげなプリちゃんであった。解せぬ。
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