第625話 腹黒会議?


 とりあえず稲葉山城に戻り、父様のところに行くと、ちょうどよくお兄様もいた。また何か悪巧みしていたらしい。まったくこの腹黒共は……。


『ツッコミ待ちですか?』


 まるで私のお腹が真っ黒みたいな以下略。


「はろはろー。父様、お兄様。最近どうですか?」


「順調よ」


「うむ。順調であるな」


「おぉ、それはそれは。土岐頼芸(美濃守護)か織田信友(尾張守護代)かは知りませんがお可哀想に……」


 いや織田信広(信長庶兄)がお可哀想になる可能性もあるかしらね?


「帰蝶に言われたくはないわ」


「大坂で本願寺が『可哀想』になったこと、美濃にまで届いておるぞ?」


「私は平和的にいきたかったんですけどねー。向こうからケンカを売ってきたんだから是非もないですね」


「よくぞほざいたものよ」


「それで大坂を取れるのだから、我が妹ながら恐ろしいことよ」


「正当防衛です。……あ、そうそう。お義父様――織田信秀さんから近衛師団を派遣してほしいという話があったんですけど、いいですか?」


「近衛師団を、尾張に? また面白そうなことになっておるな。どこぞにでも攻め入るつもりか?」


 父様の『面白そう』は『さーてそれを利用して何人不幸にしてやろうか』と同義だからね。恐ろしい人である。


「お義父様がですね、那古野城で馬揃え(軍事パレード)でもやってくれって。表向きは鉄砲の重要性を家臣に知らしめるとなっていますけど……どうやらうちと三ちゃんの仲の良さを喧伝したいみたいで」


 私が軽く説明すると、それですべてを察したのか父様とお兄様が顔を見合わせ、にやりと口角を吊り上げた。何とも腹黒い顔。なんともそっくりな顔。これは間違いなく親子だわ。


『あなたの笑顔そっくりですね』


 どこがやねん。この美少女スマイルとあのマムシ親子スマイルを一緒にしないでいただきたい。


『そっくりですね』


 解せぬ。


「……信秀め、信広へのちょっかい・・・・・に気づいたか」


「うまく兵を起こさせれば後々楽になったのですがね。さすがは尾張の虎と言ったところですか」


 つまり織田信広にわざと家督争いを起こさせ、信広と味方をした連中を纏めて排除することで尾張を三ちゃん支持者で固めようとしているのでしょう。


 で、それを察したお義父様は、先手を打って三ちゃん次期当主路線を確定させ、信広さんと三ちゃんが争わないようにしたと。


 父様とお兄様は腹黒いし、その腹黒さをお気に入り三ちゃんのために使っているところが……変なところで甘いというかなんというか。


『あなたそっくりですね』


 解せぬ。


「じゃあ近衛師団は近々派遣しちゃいますね」


「うむ。あちらが承認しているなら問題は――いや、少し待て。派遣時期と派遣場所はこちらにまかせてもらおうか」


 また何か思いついたらしい。つまりはまた誰かしらの人生が破綻するのでしょう。恐ろしい男である。


『道三も、あなたにだけは言われたくないのでは?』


 解せぬ。



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