第616話 他人の死亡フラグを立てる女
さっそく斯波義統さんのおもてなし開始である。
『御成りとは元々将軍が家臣の屋敷へと向かうものですが、これには上下関係をハッキリさせる意味合いがあったようですね。逆に言うと将軍の権威が低下したからこそ御成りも増えたと』
ほうほう。豪勢なお出迎えをさせることによってどっちが『上』かと分からせると。そんなことをしなくても圧倒的な恐怖とパワーで従わせればいいのでは?
『脳筋』
解せぬ。
『そういうことばかりしているから面従腹背な人物を量産するんですよ?』
ちょっと、いきなり難しい言葉を使うの、やめてもらえません?
『
あー、足利義昭ね。義輝君の弟さんだっけ? まぁ歴史が変わって義輝君が生き延びれば出番はないでしょうけど。
……あ、今ちょっとフラグ立てちゃったかも?
『そんな気軽に死亡フラグを立てるな。しかも他人の』
ははは、いくら私でも他人の
『自覚がないとは恐ろしい……』
まるで私が無自覚に他人の運命を以下略。
『饗宴については織田信長が多大な影響を残していますね。当時の宣教師が信長・秀吉以前と以降ではまるで違うと書き残すほどに。余分なものや煩わしいものを捨て去って等々』
あー、あの土の器・
『絶滅って』
あんな気を抜くと唇にくっついて剥がれなくなるような欠陥土器はさっさと滅ぼしてしまえばいいのだ。お義父様(織田信秀)にもてなされたときの痛みを思い出して苦い顔をする私であった。
『見事なまでにくっついていましたものね(笑)』
笑われてしまった。こんな美少女のあんな痴態を。解せぬ。
「ほぉ! これは見事な!」
庭を見た斯波義統さんが目を輝かせた。お庭には数々の献上品が所狭しと並べられていたのだ。
尾張では中々お目にかかれないような舶来品に、絹、茶器、あとは昆布やら椎茸やらの食品。ついでに鉄砲まで。それはもう大大名ですらそう簡単には用意できないレベルである。
ふっふっふっ、見たかこの財力! これこそが三ちゃんの力よ!
『信長さんというか』
≪ほぼ帰蝶の力であるな≫
「
ちょっと師匠。まるで私にできることが金儲けだけみたいな物言いは止めてください。ほら、得意なことはもっとあるでしょう? 魔法とか。錬金術とか。
「得意と自称するならあれだけの
ガチ目のお説教であった。失敗するからこそ偶の成功が輝くというのに。解せぬ。
というか私の力でもいいじゃない。夫婦なんだから。もはや実質的に夫婦なんだから。夫である三ちゃんを支える私の何と美しいことか! これはもう山内一豊の妻・千代さんを抑えて戦国ベスト嫁賞はもらったわね!
『そういうところです』
こういうところらしい。
『そもそもあなた程度が千代さんと比較対象になると考えている時点で……』
いや『あなた程度』って、もうちょっと歯に衣を装備してくれませんかね
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