第615話 うちの主人公(ヒロイン)が無礼すぎる件について
「ほぅほぅ、あの人が斯波義統」
『尾張の守護ですね。今現在は守護代――副知事みたいなものとでも言いましょうか? その守護代・織田大和守信友の傀儡となっているはずですが、ある程度の実権も持っていたのではないかともされています』
ほぅほぅ。
『今から五年ほど後。織田信友が織田信長を謀殺しようとしていることを信長に密告、それを手土産として信長に庇護を求めようとします。しかし信友に露見し、館を攻められて一族もろとも自害しました』
ほぅほぅ、三ちゃんの暗殺計画を教えてくれるとはなんて良い人。これは優しくしてあげないといけないわね。
『……傀儡とはいえ、一応は守護である人物に対して「優しくしてあげる」って……』
私の優しさに感動し咽び泣くプリちゃんであった。
そんな斯波義統さんは、なんというか特記することもない中年男性だった。守護なのに馬に乗ってきたのが特徴といえば特徴だけど、逆に言えばそれくらいしか目立つところがない。
顔は醜くはないけど整っているというほどでもなし。傀儡とはいえ充実した生活を送っているのか恰幅は良い。というかちょっとお腹が出過ぎね。
『もうちょっとこう、外見を評価するにしても手加減というか……』
心優しいプリちゃんであった。
三ちゃんが畏まった態度(とても笑える)でお出迎えをしてから、斯波義統さんを那古野城に招き入れた。
と、私の存在にやっと気づいたのか、義統さんが「ビクッ!」と動きを止める。どうやら私の美しさにビックリしてしまったみたい。
『むしろ恐怖では?』
≪銀髪・赤目。妖怪か山姥にしか見えんからな≫
「お腹の中も真っ黒だしねぇ」
恐怖ってなんやねん。山姥ってなんやねん。見ただけで腹黒さが分かってたまるかい。怒濤の三連ツッコミをする私であった。
「ほ、ほぉ、おぬしが美濃のマムシの娘であるか?」
「あら、ご存じなので?」
「う、うむ。人を超えた美しさと、御仏の慈悲を持ち合わせているとの評判は清洲にまで届いておるぞ?」
「照れるぜ」
「…………」
訝しそうというか、「なんじゃこの無礼者は……」的な顔をする義統さんであった。あーん? 文句あるなら滅ぼしてやってもいいんだぞー? 清洲城ごと更地にしてやろうかー?
『チンピラか』
≪むしろ悪魔≫
「もはや魔王」
こんなにも可愛らしい私に対して散々な評価であった。解せぬ。
散々傀儡にされてスルー能力は高いのか、私の無礼さ(という名の可愛らしさというか親しみやすさ)をわざわざ指摘したりしない義統さんだった。
『長年傀儡をやっていますからね。敵対していい人物か駄目な化け物か見抜く力は発達しているのでは?』
いや化け物って。エターナルフォーエバーフレンドに対して辛辣すぎやしませんか?
≪むしろ優しい部類じゃろ≫
「プリちゃんが甘やかすから
辛辣な親友&師匠であった。いやプリちゃんのツッコミは過酷というか甘さは微塵もないのでは? 帰蝶ちゃんは訝しんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます