第611話 エレベーター(やらかし)


 というわけで。三ちゃんと愉快な仲間たちを呼んで魔法動力式垂直昇降機・略称『エレベーター』のお披露目と相成ったわけである!


『どこをどう略せばエレベーターになるのですか?』


 考えるなフィーリング。


「また奇っ怪なものを……」


 初めて見る魔法の絨毯に目を輝かせる三ちゃんであった。


『むしろ目が死んでませんか?』


≪久しぶりに帰蝶のやらかしを体験して疲れているのではないか?≫


「いやむしろ信長君はよく耐えている方だと思うよ、うん」


 訳知り顔でうんうんと頷く師匠であった。解せぬ。


「で? そのエレベーターとは何なのだ?」


「垂直昇降機よ」


「いやだから、それが分からぬから聞いているのだが」


 どうやら自動翻訳ヴァーセットがエレベーターを『垂直昇降機』と訳しても、実物を見たことがないのでどういうものか想像できないみたい。もうちょっと頑張れ自動翻訳ヴァーセット


【――無茶言わないでください】


 お? どこからか声が聞こえたぞ?


『とうとうスキルが反論を』


≪無茶振りばかりしておるからな。意志の一つも生み出して反論せねばやっていられぬのだろう≫


「是非も無し」


 いや是非はあるわ。スキルが意志を持つってなんやねん。反論してくるってなんやねん。どういう理屈でそうなるっちゅーねん。あまりの衝撃に関西弁(?)になってしまう私であった。


『あなたのスキルですしねぇ』


≪おぬしなら何をしでかしてもおかしくはないじゃろうし≫


「帰蝶ならやりかねない」


 解せぬ。


 まぁでも自動翻訳ヴァーセットが意志を持ったなら意思疎通もできるはずで――もうちょっと無茶振りをしてもO.K.なのでは?


『そういうところです』


≪そういうところじゃぞ?≫


「そういうところだと思うなぁ私」


【そういうところかと】


 まさかのカルテットそういうところであった。解せぬ。







 説明しても分からないなら実演だ。

 というわけで。実際にエレベーター(魔法の絨毯)を上下させてみた私である。


「ほぉ! これは面白いな!」


 早速目を輝かせる三ちゃんであった。この子単純すぎである。


『信長さんも、あなたにだけは言われたくないでしょうね』


 解せぬ。


「ではわしが乗ってみよう」


 迷いなく乗り込もうとした三ちゃんを、森可成君と平手長秀君が全力で押しとどめる。


「若! 危険で御座います!」


「帰蝶様の作ったものですぞ!」


「まずは試してからではなくては!」


「いや試したあとも本番でうっかり・・・・やらかす可能性が!」


 げ・せ・ぬ。


 解せぬりつつ、ここは二人からの評価を一新しなくちゃいけないのでお試し開始である。まずは人型のゴーレムを作ってー、重さも人間くらいに調整してー、エレベーターに乗せてみてーっと。


 ……お? 意外と重いわね? これはもうちょっと魔力を注ぎ込んで上昇力をアップ――


 ――どっかーん、と。


 ちょっと魔力を注入しすぎたのか、目にもとまらぬ速さで上に吹き飛ぶエレベーター(&載せたゴーレム)であった。その勢いは天守の天井を易々と貫き、高く高く空を舞っている。


 …………。


 ……まぁ、たとえケガしても回復魔法で治せばいいのだから、セーフなのでは?


「「そういうところで御座います!」」


 まさかの森可成&平手長秀によるダブル・ツッコミであった。解せぬ。




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