第605話 とうとうやりやがったこの女……


「――というわけで! 三ちゃんの恋愛フラグを折ってきたわよ!」


 那古野城に転移して早速報告した正妻である。


『鬼か貴様』


≪悪魔か貴様≫


「師匠として育て方を間違えた」


 ちょっと師匠、マジトーンで落ち込むのは精神的ダメージが凄いのでやめてもらえません?


「……また突然現れて訳の分からないことを……」


 三ちゃんから冷たい目を向けられてしまった。「帰蝶と一緒にいると予想外のことばかり起きて楽しいなぁ」と言いたいらしい。照れるぜ。


≪此奴無敵か?≫


『敵になりそうな存在はいないですね……』


「神様としても、帰蝶の相手はちょっと遠慮したいかなって」


 私の美しさは無敵、つまりは最高の美少女だと言いたいらしい。照れるぜ。


『はいはい』


 とうとうツッコミすら放棄されてしまった。解せぬ。


「で? 今日は何をやらかしたのだ? 人様に迷惑を掛けていないだろうな?」


 期待に目を輝かせる三ちゃんであった。

 え~っとねぇ、三ちゃんの側室候補だった生駒吉乃さんがねぇ。信勝君といい雰囲気なのよ!


「ほぉ、とうとう勘十郎も色を知る歳になったか」


 訳知り顔で何度も頷く三ちゃんだった。


 ……はっ! 気づいた! 私気づいてしまったわ!


 史実においては三ちゃんとラブラブになる生駒吉乃さん! しかし信勝君も吉乃さんに恋煩いをしていて……。つまり! 織田信長と織田信勝は吉乃さんをめぐって争いに発展したのよ!


『またトンチキな説を』


 でもなんかありそうじゃない?


『ないですね』


 即座にバッサリと切り捨てられてしまった。解せぬ。


「……三ちゃんは吉乃さんに興味ない感じ?」


「元々武器商人である生駒家宗との関係強化を狙った婚姻であるからな。相手が勘十郎でも何の問題もない」


「あらまぁクールなことで」


「……それに、わしは帰蝶で手一杯であるしな」


 我が愛を与えるのは帰蝶一人で十分だと言いたいらしい。照れるぜ。




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