第604話 そして師匠が失笑したのさ!(HAHAHA!


「ほうほうほう?」


「ほぉほぉほぉ?」


 屋敷の陰に身を隠しながら、勘十郎君と美人さんのやり取りを見守っていた私&お義父様である。


 勘十郎君はしばらく見ないうちに成長したというか、キリッとした感じがする。前を向いて進む男とでも言おうか……。これはもう勘十郎君じゃなくて信勝君と呼ばなきゃいけないかしら? あわあわしている少年もGoodだけど、歳不相応にしっかりしている少年もこれはこれで。


『ショタコン』


 ショタコンじゃありませーん。成長する少年少女の味方なんでーす。こう、子供でしかなかった少年が何らかの経験を経て大人への第一歩を踏み出すのって素晴らしいわよね。そうは思わない?


『ショタコン』


 げ・せーぬ。


 いやしかし、そんな信勝君とやりとりをしていた美人さん、とても美人さんよね。


『語彙力』


 まるで私のボキャブラリーが小学生並みであるかのような物言い、やめてもらえません?


 プリちゃんから失笑されたので頑張って描写してみる。年齢は若め。腰まで伸ばされた黒髪はとても艶やか。肌も真っ白で、とても優しそうな顔つきをしている。


『語彙力』


 まるで私の描写力が幼稚園児並み以下略。


 とりあえずお義父様に確認してみましょうか。


「あの女性が生駒吉乃さんですか?」


「うむ。家宗の娘とは思えぬ美人よな」


 家宗さんの顔評価に全米が泣いた。いや家宗さんも顔は悪くない。ただちょっと吉乃さんと親子だとは信じられないだけで。遺伝子の奇蹟に全力で五体投地したくなるだけで。


「なんだかいい雰囲気じゃないですか?」


 この時代に『いい雰囲気』=『ラブが始まるのでは?』という意味があるのかどうかは分からないけど、その辺は自動翻訳ヴァーセットが頑張って翻訳してくれたらしい。


「うむ。何とも初々しいことよな」


「……これは大人として、少年の恋を応援するべきなのでは?」


 そうすれば正ヒロインの座は我が物に。……なぁんて、考えてはいませんよ? 本当ですよ? 私は素直で優しい純真無垢な正ヒロインなので。


『ハッ』


≪ハンッ≫


「ケッ」


 プリちゃん、玉龍、師匠から失笑されてしまった。師匠が失笑。別にギャグではない。


 というか愛弟子に対して「ケッ」ってどうなんですか師匠?


 私がツッコミを入れている間、お義父様は悩んでいるようだった。


「う~む、武器商人である生駒との繋がりだけを考えれば、別に相手が勘十郎(信勝)でも問題はない。……だが、勘十郎と吉乃では少々年が離れすぎではないか? 三郎相手でも少し難しかったというのに」


 現代的な目で見ると「おねショタ! 最高!」となるのだけど、戦国時代って男が年上であることが多いんだっけ? まぁ医療技術が未熟だし、女性の出産適齢期も短かったから「妻には若い女性を!」となるのはしょうがなかったんだろうけど。


「ま、でも、その辺は私がいるので平気ですよ」


「で、あるか。……ふむ、勘十郎の好きにさせるのもありかもしれぬな」


 この時代に恋愛結婚を認めるような発言をするとは。やはりお義父様って柔軟よね。さすがは三ちゃんの父親というところかしら?


『というか、あなたを怒らせたくないだけでは?』


≪で、あろうな≫


「リスク管理がしっかりできているね信秀君」


 解せぬ。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る