第602話 来たか!(ガタッ
「三郎もとんでもない女に惚れられたものよのぉ」
本日二度目の呆れ声であった。大事なことだから二回言いましたか?
「むしろ三ちゃんが
「まさかマムシと子マムシをたらし込むとはのぉ」
子マムシって。また面白い言われ方をしているわね
『あの恰幅の良さで『子』扱いは無理があるのでは?』
ツッコミどころはそこでいいんですか?
「あとは三好長慶さんからも気に入られましたし。久っちも何だかんだで孫のように可愛がっていましたね」
「ひさっちはよく分からぬが……長慶とは三好筑前のことか?」
「えぇ。自分の妹を三ちゃんの側室に、とまで言ってきて――あ、そういえば報告していませんでしたね。そういう話になっていますけど、どうします?」
「また肝心な話を忘れていたものよな……。重要な地を治める国人に妹や娘を嫁がせるなどはよくある話であるが……。斯様な遠隔地に嫁がせ、しかも側室でもいいとは、よほど三郎のことを気に入ったと見える」
「なにせ未来の天下人ですからね」
「……いや、嫁殿を恐れただけか」
「解せぬ」
「いずれ今川義元と和睦し、美濃の後ろ盾を得て、京の都を目指すならば三好と誼を通じておくのも悪くはないか。今はまだ敵に回す必要もあるまい」
「ですね。まずは三好政権に義弟として参画しておくのも悪くはないでしょう」
「ずいぶんと壮大な話になりそうなものよな」
「それだけの『器』がありますからね。仕方がありませんね」
「やれやれ、鳶が鷹を産んだか……。うむ、正室である嫁殿が反対せぬならば、こちらとしても異論はない。いずれは三好のところへ人をやらねばならぬな」
「では私が上手いこと話を纏めておきましょう」
「…………、……う~む、嫁殿の頭であれば交渉役として申し分ないし、尾張から京へも即座に移動することができる。……だがのぉ、しかしのぉ……」
まるで「コイツは肝心なところでやらかすから任せるのも不安だなぁ大丈夫かなぁ」とでも言いたげなお義父様であった。解せぬ。
『解せる』
解せぬ!
「おっと、側室と言えば」
今思い出したかのように扇子で手のひらを叩くお義父様。どうでもいいけどそのわざとらしい切り出し方は何とかならないんですか? どうせ最初からどのタイミングで話をしようか決めているくせに。
「今、生駒家宗の娘が末森城に滞在しておってな」
「…………」
おや? 家宗さんの娘と言えば――生駒吉乃? ついにとうとう正ヒロイン候補登場ですか?
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