第589話 なお出オチである


「だだだ、だんじょーん♪ だだだ、だんじょーん♪ 今日も魔物をみ・な・ご・ろ・しー♪」


 自作曲『ダンジョン行進曲』を高らかに歌い上げつつ梅田(予定地)に移動する私である。


『音痴』


 ド・ストレートすぎません? せめて歌詞の内容に突っ込んでくれません?


『あなたが魔物を皆殺しにするのは平常運転ですし』


 解せぬ。


『あと、明らかにツッコミ待ちのボケに突っ込みたくはありません』


 何ともこだわりの強いツッコミ・マエストロであった。


 さて、そんなこんなで梅田に到着。もうちょっと具体的に言うと、大坂本願寺の地下と淀川を繋ぐ龍脈の上。ここに穴を掘ってダンジョンを作り、龍脈に穴を開けてしまえば後天的な龍穴の完成である。


『雑』


 手っ取り早くていいじゃない。解せぬ。


 龍脈に穴を開ける前に基本的なダンジョン部分を作ってしまいましょうか。淀城の地下のダンジョンは食糧自給を最優先にしたから農地やら湖やら酪農用の平原やらが何層かに分けて存在している。


 でも、今回の主目的は澱んだ気を『魔物』として討伐して浄化することになってしまったので、それをメインにしましょうか。


 まず地下一階は農地として使える平原と、本格的なダンジョンへの入り口。冒険者ギルド的な組織の本部として使える建物も作っておきましょうか。


『……地平線が見えますね。地下なのに』


 農地は広ければ広いほどいいのだ。具体的に言えばちょっとだけ空間を重ね合わせているから広く見えるだけで。


『気安く時空魔法を使うな』


 気軽に使えるのだからいいじゃない。


『……そうやって後先考えずに空間やら時間やらをねじ曲げるから、後々苦労することになるんですよ? 「気軽にできるから」と行動する前に、まずは十秒ほど深呼吸をしましょう』


 まるで親かお姉さんのように懇々とお説教をしてくるプリちゃんであった。


 とりあえず地下一階部分の基礎はできたので、地下二階へと繋がる入り口を作りましょう。ここからがこのダンジョンのメイン部分なので豪勢に。イメージ的にはギリシアのパルテノン神殿みたいな?


『また無駄な魔力を使って無駄なこだわりを……』


 無駄じゃありませーん。見た目は大事なんでーす。こう、入り口が豪勢だと「よっしゃ! 今からダンジョンに入るぜ! 一攫千金だ!」って気持ちになるじゃない?


『ならないですね』


 ならないらしい。解せぬ。


 ダンジョンの内部は溜まった魔力で勝手に作り上げられていくだろうから、もうダンジョンと地下の龍脈と繋げてしまいましょうか。Let's人工龍穴である。


 とりゃ。ぷすっとな。


 …………。


 う~ん? なんか思ったより勢いよく魔力が流れ込んできているような? というか『何か』がこっちに向かってダンジョンを駆け上がってきて――


 どごーん、っと。


 せっかく作ったパルテノン神殿(仮)が上空へと吹き飛んだ・・・・・・・・・。バラバラになりながら宙を舞い、地面に落下する(元)パルテノン神殿。


『――グガァアアァアァアアッ!!』


 大地を揺るがすような慟哭。

 吹き飛ばされたダンジョンへの入り口から現れたのは――ドラゴン。地下一階部分の天井に頭を擦りつけるほどの巨大なドラゴンが、なぜか憎々しげに私を睨め付けている。


『なぜか、って』


≪日頃の行いではないか?≫


「あるいはドラゴンを殺しすぎてドラゴン族に顔を覚えられたか」


 解せぬ。





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