第587話 ごくごく友好的な立ち退き(予定)
「食料が足りませんな」
当然のように加賀一向一揆の面々をこき使い、大坂周辺のことを調べさせていた細川政元が憂鬱げにため息をついた。
大坂本願寺の連中、一向一揆十万を食わせるために大坂周辺の民から米やら何やらを徴収したらしいのだ。まぁ信仰心から進んで寄進した人も多いみたいだけど、それで飢えたら世話ないわよね。
というわけで。食糧問題は早急に何とかしないといけないわけであり。
既存の農地を使い、魔法で即座に稲を育ててもいい。けれど、後々のことを考えると農地は纏めて大規模にしたいというか、大坂周辺の土地は農地以外で使いたいというか、日本では貴重な平野なのだから農地として使うのは勿体ないというか。
『なんという自分勝手な』
日本の将来について真面目に考えているというのに。解せぬ。
……まぁ、今のうちに大坂の一等地を確保しておけば、日本が将来発展したときに不労所得がガッポガッポと考えていることは否定しないけど。
『そういうところです』
こういうところらしい。
さて。米はとりあえず堺から運んでもらうとして。
「大坂周辺は農地以外で使いたいんですよね」
とりあえず責任者(政元)に相談してみる私である。
「中々に良い立地ですからな。――委細承知。少し離れたところに農地を纏めて確保いたしましょう。その際の交渉などはお任せくだされ」
おぉ、なんとスラスラと話が進むのでしょう。武井夕庵さんも優秀だったけど、政元も負けず劣らずね。
『……なんだか多少の無茶をしそうな気も』
≪史実とやらでも無茶をしておったし、今では加賀一向一揆の連中もおるからな≫
「う~ん、孫弟子だからなぁ。あまり強く言うのもなぁ」
なんだか心配そうなプリちゃん・玉龍・師匠であった。
「……政元さんが無茶したら帰蝶にお説教すればいいか」
なぜかこちらに飛び火したでござる。
私としても好き好んで師匠からお説教されたいわけではないので政元に釘を刺しておきましょう。
「……政元。あまり無茶をしないように」
「ほぉ、さすがは御師様。あれだけの力を持ちながら強権を振るわぬとは……。委細承知。御師様の民となり、御師様を支えることになる連中ですからな。こちらとしても武力での解決は極力しないようにいたしましょう」
「…………」
極力しないということは、いざというときはやる気満々というか。武力以外の謀略とか詐欺とかはやる気満々っぽいというか。
…………。
でもまぁ、一応師匠には「平和的解決です!」と言い訳できそうだし、別にいいか。
『そういうところです』
≪そういうところじゃぞ?≫
「そういうところが駄目なんだよなぁうちの弟子は」
まさかのトリプルツッコミであった。解せぬ。
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