第586話 細川政元が常識人に見える系ヒロイン


「加減しろ」


 師匠からお説教される私と政元であった。もちろん正座で。

 ちなみに『師匠わたしの師匠』なので、政元にとっては大師匠となる。


「何という神々しさ……。さすがは大師匠ですな……」


 師匠の神々しさ(笑)に圧倒されているっぽい政元であった。この人見た目は神々しいというか天使様だけど、中身はポンコツなんですよ?


『あなたからポンコツと言われるとは……何と憐れな……』


 まるで私が世界一のポンコツみたいな物言い、やめてもらえません?


 まぁ、政元には『力』を使いこなせるまでは自重してもらうとして。


 大坂の改造については新弟子(政元)がやる気になっているのだから手を出しすぎるつもりはない。……けれど、新生大坂――いや『大阪』の中心となる大阪城だけは作ってしまいましょうか。


 なにせここは元大坂本願寺の根拠地。周囲にはまだまだ一向一揆の勢力が残っているでしょう。ここで巨大な城を(一晩で)ブチ建てることによって「帰蝶様のお力は本物じゃ! 逆らってはいかん!」となるのだ。


「さすがは御師様。人心掌握術を心得ておりますな」


 ふっ、どんどん褒めなさい!


「……里於奈リオナ様はもちろん、有珠アリス様とも似ても似つかぬ腹黒さ……。これはあのマムシの血でありますか。なんともはや。なんともはや……」


 ふっ、どんどんドン引きするの、やめてくれないかしら?


 さて大阪城である。本願寺の縄張りはなんというか丸い感じだ。これはこれで好きなのだけど、鉄砲での防御を考えるとねぇ。狙い撃てない場所が多すぎて非効率的なのだ。


 というわけで基本的な縄張りは直線にするとして……。う~ん、城オタとしては史実の大坂城を再現したい思いもある。ちなみに史実と言っても豊臣大坂城と徳川大坂城では結構縄張りが違ってくる。というかあの規模の城を天守台ごと埋め立てるって加減しろ徳川。


『はいはい』


 これから大坂城の知識を披露するぞってときに先手呆れを取られてしまった。解せぬ。


 う~ん、細かい町割りは政元にやってもらうとして。外堀は作っておきましょうか。いわゆる総構え。城下町を城壁などで囲ったもので、日本だと小田原城とか江戸城が有名ね。欧州における城壁都市みたいなもの。


 まずは魔法を使い、大阪城の中心となる天守をドドーンとブチ建てる。これはもう一向一揆の宗旨替えを目論んでいるのでど派手に。一瞬で。天にそそり立つかのような規模で。見た目的には『現代』の鉄筋コンクリートっぽい天守を建ててしまう。


「なんと、ここまでとは……」


 私の力を見て感動に打ち震える政元であった。


『感動というか』


≪恐怖で打ち震えておるな≫


「孫弟子がまだ常識のある人みたいでよかったよかった」


 ちょっと師匠。戦国時代でもかなりアレな人間を常識人扱いするのはいかがなものかと。


『あなたと比べれば常識があるっぽいですし』


≪攻撃魔法もまだ常識の範囲内だったしの≫


「帰蝶は自分の非常識さを理解しましょう」


 解せぬ。



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