第557話 こんな無礼者に猶予を与えるとは! 何と寛大な!
ま、プリちゃんに関する情報はもっと大規模なイベントで問い糾すとして。今は政元さんについて片付けちゃいましょうか。
「政元さんは――」
「帰蝶様は我が師。政元と呼び捨てにしていただければ」
なんか話が進まなそうだなぁ。老人にしか見えない人を呼び捨てるのって精神衛生的に勘弁して欲しいのだけど。
『少女にしか見えない人が何か言ってる……』
まるで私の実年齢が政元さんを遙かに上回っているみたいな物言い、やめてくれません?
ま、でも、本人が求めているなら気にしなくてもいいか。これから教えるときにいちいち『さん付け』するのも面倒くさいし。
「じゃあ、政元。あなたはどうやって蘇ったのですか?」
「はっ、あの男から生気を吸ったときに記憶も読み取れました。あの男――蓮淳という男が、本願寺に伝わる秘術を用い、拙僧を蘇らせたそうで」
「うん? その人と政元の関係は?」
「関係……。こちらとしては都合のいい手駒だったのですが、どうやら拙僧が思っていた以上に恩義を感じていたようで」
自分の想像以上に信仰心を集めてしまっていたと? どこかで聞いたことがあるお話ね?
『あぁ、似たもの師弟……』
まるで私が想定外の信仰を集めているみたいな物言い、やめてもらえません?
しかし、本願寺の秘術ねぇ。ちょうど良く『
「本願寺の秘術で政元が蘇ったので間違いはない?」
私が視線を向けると、(状況について行けていなかったのか)呆けた顔をしていた顕如少年が憎々しげな眼で私を睨め付けてきた。
「だ、誰が貴様になど教えるものか!」
あれ? なんか好感度低い? 私何か嫌われるようなことしたっけ?
『嫌われるようなことしかやってないですね』
そんな馬鹿な。ちょっと雑賀衆への布教を邪魔して、淀川の流れを変えて経済に大打撃を与え、ついでに加賀一向一揆を半減させたり仲間に引き込んだりしただけだというのに。
『そういうところです』
こういうところらしい。
私とプリちゃんがいつものやり取りをしていると、
「ぐっ!」
苦しげな呻きが聞こえた。
視線を向けると、右手で顕如少年の首を掴んだ政元が、そのまま顕如少年を壁に叩きつけていた。いやちょっと子供相手に手加減なさ過ぎじゃない?
「小童。我が師に対してなんたる不躾な」
いやあのくらいで怒るほど心は狭くないんだけど……ま、せっかく押さえつけてくれているのだから
ふんふん? ほうほう? あら天狗さんがそんな……。
うん、これはちょっと危険だわ。
術式は残っているのに、それを扱う人間の修練が足りなさすぎる。これはいつか大事故を起こすというか、一種の大事故が政元なのでしょう。
結論。
廃棄。
「――10日待ちましょう」
「なに、を、」
首を抑えられ息も絶え絶えになりながら、それでも気丈に私を睨んでくる顕如少年。こういう怖いもの知らずな少年は好きなんだけどなぁ。出会い方がもう少しマシだったらお気に入りとして可愛がれたのだろうけど。まぁ、是非も無し。
「いきなり退去しろと言っても無理でしょうから、10日後。10日後に本願寺を
「なぜ、貴様の許し、など……」
「言うことを聞くのも聞かないのも自由だけど。聞いておいた方がいいわよ? 私だって子供を必要以上に痛めつける趣味はないのだから」
「こ、ど、も……」
限界が来たのか気を失う顕如少年。この様子だと退避しないだろうけど……ま、こちらとしてはどうでもいいわ。警告はしたのだから容赦なくやりましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます