第12話決闘
そして、決闘当日。
私たちは村はずれの場所に来ていた。砂塵(さじん)が私の頬をすり抜ける(ぬける)。
ここは村の東側にある平地で、西側に畑が東側に街道があるがしかし、ここには鉛筆で髪をくり抜くように、ぽつんと乾いた草のある平地だけの場所。そして半径100メートル遮る(さえぎる)ものはない。血糖にはもってこいの場所だ。
「準備はいいか」
号令(ごうれい)役のヴィクトルが言う。私たちは頷く。獲物(えもの)は木刀。私たちの体の周囲に魔力の鎧(よろい)が構築させて、木刀の一撃を喰らえばむしろ木刀がおれる。だから、相手に一撃くわらせた方がこのゲームの勝者なのだ。
「それでは両者はじめ!」
ヴィクトルがその場からすぐ離れ(はなれ)る。
私たちはその場から動かない。マルスも様子見か。木刀が直撃するにはあと5歩か、よし。
私はトントンと地面を叩くとスキップするように相手の間合いを詰める。そして、間合いの一歩手前で突きを放つ。
がき。
マルスは持っていた木刀で難なく弾く。その弾かれた力を利用して後退すると今度は回り込んでからのなぎ払い。
がき。
またもやマルスが弾くが………
「!」
回り込んでいるので当然遠心力がかかっている。体力強化の魔術の加速もつけたので体重面で劣っていてもパワーがこちらの方が上回っているはず!そのまま木刀を弾こうとするが。
「剛力(ごうりき)」
瞬間、マルスの体格が2倍になった。
剛力(ごうりき)。一時的に体重と身長を倍にする技。こう言う強打を受けるには有効な技だ。しかし。
マルス私の木刀を飛ばそうとすると、私は力に逆らわず、受け流しながらマルスの間合いに入っていく。
「!」
受け流しは最新の注意と度胸が必要だ。タイミングが外れると相手の攻撃をモロに受けてしまう。一流の剣士にしか出せない奥義なのだ。
それを私は15の時に会得した。みんなは天才だ、と言っていたし、それから慢心(まんしん)することなく鍛錬(たんれん)して来たが、実際の受け流しはやはり細心の注意がいる。そして、幸運なことに今回それに成功した。
「はあ!」
そのまま、木刀の腹を抜けてマルスの足に木刀を叩き込む。
「!」
木刀はマルスの体をすり抜けた。
マルスがいない。そして、即座にこのままではやばいと確信した私は一気に前進した。すぐさま背後に気配が現れる。
思わず、体を半回転させて迫りくる木刀を受け止めた。
「く!」
しかし、剛力(ごうりき)を使っての全速力の唐竹割り(からたけわり)に女の私が抗し切れるはずもなく、木刀は弾き飛ばされ、私は地面に弾き飛ばされた。
「そこまで」
私はしばらく仰向け(あおむけ)になっていたが、起き上がって一礼をした。
「参りました」
私は背を上げて降参した。
私はマルスを見る。
「さっきのは幻術(げんじゅつ)ですか」
「ああ」
こともなく、マルスは言う。
あっさりと言ったが、幻術(げんじゅつ)は集中力がいる技術。剣戟(けんげき)をしている間にやるのは至難(しなん)の技だ。それでさっきの幻術(げんじゅつ)錯覚(さっかく)か。私が切った!と思ったのは残影で、本体は多分空中に飛んでいたのだろう。
そして、一連の技はなかなかできるものではないと私は感じた。才能だけでできる代物でもないと言うこともわかった。
「参りました。私の負けです」
マルスは横柄(おうへい)なまでこちらを見る。
「どうだ?貴族様の力がわかっただろう!」
「貴族かどうかはともかくあなたは強いと言うのはわかりました」
それを聞いたマルスは鼻を高くして、その場からさっていた。
私は彼がさった後もじっと舌を見て俯い(うつむい)ていた。
「アイリス!」
エルザとエカテリーナとブロスが心配げな表情でこっちに駆け寄ってきた。
「大丈夫?」
「はは、大丈夫だって、ちょっと悔しいけど、負けは負けだし」
「ならいいんだけど」
ふと手に痛覚を感じて右手を見てみる。そこには手を握りしめすぎて白い爪の跡があった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます