第5話 わたくしが悪役令嬢ですの。
「くっ……」
わたくしは今婚約破棄騒動の渦中にあるアルヘンシラス公爵令嬢ワルキュラですわ。
遺憾ながら悪役令嬢危機一髪の立場に追い込まれてしまっていますの。
悪役令嬢であるのは、いいんですのよ。
だって元になった乙女ゲー『ハートどきどき、イケメンがいっぱい、どれを選ぶか迷っちゃう♪』で、わたくしワルキュラは悪役令嬢なんですもの。
だから、悪役令嬢としてきちんとふるまっていましたわ。
毎日豪華な生活、贅沢三昧。
気にくわない奴等は権力と金力で徹底的にいたぶりたおし、ヒロインは取り巻きを使っていじめにいじめましたわ。
前世では人生に押し潰されるだけだったわたくしですもの。
せっかく生まれ変わったのですから、人の目を気にして、自分を徹底的に押し殺して、いやなことでも曖昧に笑ってやりすごして、つましく目立たずいいこちゃんなんてもううんざりですわ!
権力をふりまわす快感!
前回の人生の憂さ晴らしとばかりに人を虐げる喜び!
これぞ悪役令嬢の醍醐味ですわ!
しかもそんなわたくしを全肯定して溺愛してくれるパパとママつき!
やめられませんわ。とめられませんわ。
そして、後から発売されたアペンドディスク『ハートどきどき、イケメンがいっぱい、どれを断頭台に送るか迷っちゃう♪』で加えられた、悪役令嬢が断罪返しするルートの展開にもっていくつもりでしたのに!
ヒドインのヤツが、こんなに狡猾だとは思っていなかったですわ。
明るい金のほわほわ髪。あまったるい顔。舌っ足らずな口調。
頭の悪そうなおおきな胸。
見た目で「まちがいなくお花畑脳ね(笑)」と余裕ぶっこいてたのが失敗でしたわ。
このアバズレ、ヒドインのくせに、用意周到でしたわ。
さては、こいつも転生者ですわね!
しかも、重度のやりこみの引きニートです! 社会不適合者めっ!
きっと、ゲームの世界と現実の世界の境界が判らなくなったゲーム脳ですわ。
そうでなかったら、設定を知っているとはいえ、攻略本の手順に頼らず、難易度が一番高い王子ルートを攻略するなんて!
しかも、転生者のくせにハーレムルートを狙ってないなんて!
ヒドインのくせにハーレムルートを驀進しないなんて、あ・り・え・な・いですわ!
ゲームをやり込んだ転生者ならハーレムルート一択が常識ですわ!
前世のわたくしはハーレムルート以外やらなかったですわよ!(参考として他のルートも一応プレイしましたけど)
乙女ゲームの花は、誰がなんと言おうとハーレムルートですもの!
だって、なにもかもやってらんない元の世界、両親の介護に旦那の両親の介護、浮気先の女の家で倒れた旦那の介護までしてたわたくしにとって、そんくらいの夢みないとやってらんなかったですわ! それしか夢の時間なんかなかったですわよ!
このヒドイン、前世でよほど恵まれていたに違いませんわ! キィィィィッッ! 憎らしいですわ! きっと親ガチャで大当たりを引いて、一生働かずに暮らした勝ち組出身者ですわ!
しかもですわ。事前に攻略対象のトラウマや弱点を知ってたくせに。それを表面上は利用せずに攻略するとか、どれくらい暇人なんですのよ!
カリナン王太子もカリナン王太子ですわ!
この女を孕ませてでもいれば、よかったのに。
若い男なんだから手ぐらい出しなさいよこのヘタレ野郎!
元のゲームは、最初は18禁版だったんんですわよ!!
カリナンなんてヒロインとやりまくりでしたのよ!
わたくし18禁の頃からファンだったんですのよ!
この世界のカリナンはヘタレのフニャチンですわ! プンプンですわ!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます