第3話 ハーレムルートなんてアブナすぎるもの!

 悪役令嬢は、傲慢に顔をあげると、鉄扇をぱたりぱたりと開閉し。


「思い当たるところは御座いませんわ」


 と言い放った。


 でも、大丈夫。

 だって、アタシ本当にいじめられてるし!


 カリナン様は。

 熱い怒りを見事に抑えつつ冷静な声で。


「思い当たるところはない。か。

 だがな、こちらには大量の証拠があるのだ」


 そうなのそうなの!

 わたし、周り中からハブられるわいじめられるわ。教科書は破られるわ。

 しかも、この悪役令嬢、高位貴族専用のラウンジルームに取り巻き集めて、アタシをどういじめるかの相談までしてたのよね。何度も何度もよ!

 ぜんぶ証拠はばっちり。言い逃れる隙間なんて一ミクロンなし!

 正義感のままに突っ走ろうとした攻略キャラ達を押しとどめて、完璧な証拠固めをしてもらった甲斐があったわ!


「……以上。大量の証拠と証人がある。それでも申し開きが出来るというのか?」


 カリナン様の理路整然とした追い詰めに、


「くっっ……で、ですがその卑しいプリシラとか言う女は! 殿下以外の殿方にも手を出していますわ!」

「ほほう、その証拠でもあるのか?」


 悪役令嬢は、ぎりっと唇を噛み、わたしを睨み付けた。


「殿下の側近方にも手を出している泥棒猫ですわ!」


 そう言うと、彼女はわたしと側近方のあれこれを見てきたように話し始めた。


 わぁお、攻略本のハーレムルート通り!

 なるほど、彼女も転生者だったってわけね。

 きっと、いざとなったらこれを持ち出すつもりだったんでしょう。


 でも、それ、アウトォォォォォォ!


 さっきも言ったけど、わたし、ゲームとはイベントの内容を少しずつずらしたり変えたりしてたもの。だから内容はかなり変わっちゃってる。


 つまり、彼女が言ってることは全部見当外れ。


 側近イケメンズの知能担当、宰相子息のオリバーが。


「その日その時刻、プリシラ嬢は、職員室にて、担任のマロン教師に質問に行っていますね。マロン教師の証言もあります。私と二人きりになるなどありえませんね」


 わたしの目の前で、彼女の言い分はひとつずつ徹底的に論破されていくわ。


「ぐ、ぐぬぬぅ。どうしてよ! ありえませんわ!」


 悪役令嬢がスゴイ目でわたしを睨んでる。


 乙女ゲームの世界へ入ったら、誰でもがハーレムルート選ぶと思ってたんでしょうね。もしかしたら、彼女自身前世でそういうプレイスタイルだったのでしょう。


 ですが残念、わたしそんなことしてませんから!


 ざまぁが怖いから王太子殿下ひとすじにしたし!

 全員からプレゼントもらって、下町の古物商で売りさばくとかもしてないし!


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る