第2話 ヒロインは頑張った!

 だけど、わたしは舞い上がらなかった。


 前世で、FXですっからかんになって、自殺に追い込まれた苦い経験が、わたしを慎重にしたのよ。

 うまい話には落とし穴がつきものだもの。


 ゲームの展開通り、どこぞの男爵家の当主がメイドに産ませた子供であるわたしは孤児院から引き取られた。

 でも、この世界は現実。細部までかっちり作り込まれてて、ゲームに出てこない人や法律や慣習もいっぱいあった。

 当たり前だけど、イベントがなかったり、一行でも済まされてる時間も、この世界ではちゃんとあるのよね。


 だからわたしは頑張って、いろいろ修正したわ。


 攻略キャラとの余りに不自然な出会いは、不自然でないように変更したりした。

 だって、王子様にいきなりぶつかるとか、高位貴族しか入れない秘密の庭園で出会うとか、この世界の法律ではアウトな行為だもの。それに、わたしは許されたとしても、警備の人とかが責任とらされてクビにされでもしてたらイヤだしね。


 おのおのの攻略対象イケメンズが持っているトラウマを、最初から知っているような台詞も言わないようにしたわ。

 だって、まともな感覚の持ち主なら、いきなり秘密を当てられたら、気持ち悪がられるで済めばまだいいほうで、他の国の密偵だとか疑われたら大変だもの。


 つまりわたしは、攻略本の情報はあくまで参考にして、攻略キャラを攻略したのよ。しかもセーブがない一発勝負!


 わたし頑張ったわ! すごく頑張ったわ!


 だから大丈夫。

 大丈夫よわたし。

 「ざまぁ」とかされる要素ないから!


 さぁ、どう出る悪役令嬢さん!? 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る