おそれながら殿下。それは越権行為で御座いますぞ。

マンムート

第1話 わたしがヒロイン!


「アルヘンシラス公爵令嬢ワルキュラ! 

 嫉妬に駆られたお前の数々の所業! 全て露見している!

 その醜悪さ、独善、残忍、卑劣、どれをとっても王太子妃としてふさわしくない!」


 ああ。ほんとうに声もステキ。


 わたしの斜め前に立って悪役令嬢の断罪をはじめた、カリナン王太子。

 乙女ゲームから抜け出してきたような、キリッとした美男子なの。

 美男子なだけじゃなくて、勉学も優秀、そして女性にもすごくやさしいのよ。

 やさしすぎて、わたし以外にもやさしいのが、ちょっとだけ玉にキズ。

 でも、こういう時にはやってくれる人なの。


 そして、わたし達のうしろに居並ぶ4人も、カリナンに劣るとも勝らない美男子揃い。しかもみんな優秀なの。

 ハーレムルートは諦めたからお互い恋愛感情はないけど、カリナン様とわたしの恋を応援してくれてるの!


 カリナン様に断罪されているのが、アルヘンシラス公爵令嬢ワルキュラ。

 ゲームのスチル通りの、すごい吊り目で憎々しげな顔をした醜悪な悪役令嬢。

 黒を基調にして赤をワンポイントでいれた毒々しいドレスがいかにもな感じだわ。


 鉄扇で口元を覆って、表面上は澄ましてるわ。

 逆らえない人をあの鉄扇で容赦なく叩いてるのよね。


「よって、メルネド王家の王太子である余、カリナン・メルネドはここに宣言する!

 お前との婚約を破棄し! カルメラ男爵の御令嬢であるプリシラと婚約すると!」


 よしっ! まずはカリナン様の台詞バッチリ!


 ついにこの日が来たわっ!


 そして、カリナン様の隣に立っているのが、今まさに話題のカルメラ男爵令嬢プリシラですっ!

 つまり、わ・た・し。


 実は転生者です。


 3歳の時に高熱を出して寝込んで、転生者だって思い出しました。

 それと同時に気づいたんです。

 この世界は『ハートどきどき、イケメンがいっぱい、どれを選ぶか迷っちゃう♪』の世界で。そしてわたしは、ヒロインのプリシラだって。


 元の世界では引きこもりで、ゲームの中でしか対話できなかった不細工なわたし。

 今や鏡に映るのは、スチル通りの金髪ほわほわ美少女!


 この世界はわたしのもの!

 わたしがヒロイン!


 初めて鏡で自分の容姿を確認した時は、思わず踊ってしまったわ。やっほー。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る