閑話・学友たち
第20話 レーゲンの学友たち
ニールは学校の成績がそれなりに良い。
建築を専攻したのは興味があったからだし、いざ自分がそっちの仕事に就こうと思ったのならば、職業学校――今の共通学校を卒業してから、その先にある学校で三年ほど学ぼうと、かなり意欲的には思っていた。
家のデザインをするのも好きで、いずれ自分の建築なんてものをしたら、かなり楽しそうだと考えていた。もちろんそのためには、今の建築を、そして過去の建築を知ることも必要になる。
――だが。
現実はそれほど甘くはない。
いわゆる大工と呼ばれる人たちは集団であるし、建築とは棟梁の頭の中にある設計図通りに作るための集まりなのだと、彼は現場に出て痛感した。
戦闘はそこそこだが、体力作りを趣味にしていたのは良かった。実際に建築では体力を使うのだと思っていたから始めたことだし、報われたと言っても良いだろう。
とにかく、言われたことをやるだけ。あちこち動き回り、荷物を持ち、それを指定の場所まで動かすだけの下っ端――けれど、しかし。
他人からの忠告を聞いておいてよかったと思えたのは、初めてだ。
返事は大きくはっきりと。
移動は素早く今すぐに。
おい、と呼ばれれば。
「はい!」
声を上げ、呼ばれた場所を確認して走る。
これをやれ、と指示されれば。
「わかりました!」
素直にうなずき、それをやる。
最初のうちは文句も言われていたが、一時間もしたらそれはなくなった。やる気があると認められたようなものだ。
「よおし、昼休憩に入るぞ!」
あちこちで出る木の切れ端などを集め、指定の場所に移動させていたニールは、その一声に顔を上げ、区切りをつけようと、今ある一輪車を廃棄場にまで持って行き、汗を首にかけたタオルで拭い、一息入れた。
支給された弁当をありがたくいただき、持ってきたノートを取り出し、食事をしながらペンを走らせる。
食事を手早く済ませ、ようやく、ニールは見上げるようにして全体を確認できた。
まだ半日。
来た時に見た光景と、そう大きく変化はない。建築とは、こういう作業なのだ。
「よう」
「――うっス」
声をかけてきたのは、この現場で三番目に地位のある、まとめ役の男だった。
ここにいるのは、大工ではあるものの、細かい仕事はそれぞれ違う。たとえば建築資材を運ぶ人間は、運ぶだけのために雇われている者もいて、全体構造をデザインした人間は、棟梁と会話をしながら指示を出すだけ。
目的は同じだが、仕事が違うので、それをまとめるのも、彼の仕事だ。
「どうだ、まだ動けるか?」
「そうっスね、体力はまだ。右も左もわかんねえから、使ってくれるだけありがたいっス」
「まだ午後もあるから、休んでおけよ。……なにを書いてるんだ」
「現場で仕事をしろって、紹介してくれた
「――ああ、レーゲンか」
「うっス、そうス。……あの、どういう知り合いなんスか?」
「ん? 以前、うちで雇った運び屋だよ。本人は体力作りの一環だとか言ってやがったが、とにかくよく働いたから、棟梁も一目置いててな。しかもこっちの知識もありやがるから、憎らしいくらいには優秀だったぜ」
「……意外っス」
「学校じゃ違うのか?」
「いつも涼しい顔してるヤツっスよ。頭がいい……賢いって言うんスか? 変な言い方だけど、何でも知ってるみたいな感じっス。あと、戦闘がとにかく強い」
「なんだ、お前さんは戦闘はからっきしか?」
「重たすぎるってダチにはよく言われるっス。どんくさいんスかねえ」
「どれ見せてみろ」
「うっス」
ノートは既に、箇条書きではあるものの、3ページ目にまで文字が記されていて、ざっと見た彼は小さく笑い、ニールに返した。
「お前、この仕事を最後まで見る気はあるか?」
「そりゃ、願ってもねえっスけど」
「安心しろ、学校側にはもう掛け合ってある。課外授業の一環で、授業に出席したのと同じ扱いだ。給料も出るぜ、安いけどな」
「正規の料金を貰うわけにはいかねえっスよ、何もできてないス」
「親父――棟梁には説明しとくから、途中で逃げ出すなよ?」
「そん時は前のめりに倒れるっスよ」
「いい根性だ」
その日から、家の完成まで、ニールは現場に顔を出し続けた。
雨の日や、仕事の切り替わりに休みの日もあり、その時は学校にも行かず寝て過ごすくらいには、躰を休めたし、休まないと続けてはいられなかっただろう。
何もかもが新鮮だった。
家の形ができたと思ったのは、骨組みが完成した時だ。そこで一日の休みを終えて現場に行けば、棟梁、その補佐、そして現場統括の三名以外は、全員と言って良いほど、がらりと顔ぶれが変わっていたのには驚いた。
基礎、骨組みを終えて、壁を作る段階に入ったため、職人の種類が変わったのだ。
考えてみれば、壁の素材と基礎の素材は違う。屋根の素材も違うのならば、仕入れ先はそれだけ変わっているはずだ――と、気付いたのもこの時である。
現場が一番、緊張感に包まれていたのは、建物が完成した後に行われる、塗装作業だった。
塗ったあとに乾かさなくてはならないため、素早い行動はもちろん、天気の変化なども読む必要がある。この作業には、一切手を触れるなとニールは厳命され、本当に仕事なく、ただただ見守るだけで悔しかった。
そして、完成したのは、一般家庭の住居である。金持ちが買うような、高い家ではなく、ごく当たり前の一軒家。
おおよそ一ヶ月。
ニールはこれを、早い完成だと、そう感じた。
※
どうして量産品なんて作るのか――そりゃ商売だからだと、ゲッカは答えた。
いずれ鍛冶屋としては、一点ものを作ってやりたい、そう意気込んでいたからこそ、学校で勉強していたのだが、友人はその答えに小さく笑った。
現場で学んで来い。
わざわざ手配してくれたものを断る理由もなく、聞けば、ニールも似たようなことをしており、課外授業として扱われるそうではないか。それなら何の問題もない。
ゲッカにとっては、初めての現場だった。
言われた通り、挨拶はきちんとやる。言われたことは断らず、素早くやる。疑問や気付きは休憩時間にノートに書く。
だが、現場に入ってすぐ。
「お前にやれるこたぁねぇよ」
工房長にはそう言われたが、はい、と答えた。彼らだとて商売でやっているのだから、学校で学んでる最中の素人が手出しできることはないと、そういう理屈もわかっていた。
その工房では、同じ剣を日に五本、作っていた。
鉄を溶かし、鋳型に入れて冷まし、まずは形として完成させる。そこから、余計な部分を落とす作業が入り、荒砥へ移行する。
さらに研いで光沢を出すまでに三人の職人を使った。鉄を溶かして鋳型に入れるのが一人、荒砥までで一人、光沢を出す一人。
そして、刃を入れるのは工房長の研ぎだ。その時点で、二本の廃棄が出た。
だから七本は作ろうとしたのに、最終的には五本になった、ということだ。
工房長の研ぎをしている間に、柄と鞘を作るのが一人――この工房は、五人体制である。
流れ作業に見えて、それぞれの作業の時間はまちまち。誰一人として手を抜いていないのに、しかし、俯瞰して見るゲッカには、流れ作業に見えてくる。
だって。
工房長の研ぎが終わると、次の剣が用意されている。かといって、溜まっているわけではなく、ちょうど終わりましたと言わんばかりに差し出すのだ。
完成された剣は、鋳型を使っているのだからもちろん、大差ない。ないが、本質はそこではないように感じた。
――ゲッカが気付いたのは、五日目のことである。
量産品。
同じクオリティのものを複数作る。品質を維持し、良くも悪くもないバランスでかつ、最大限良い方に向いたものを完成させ続ける――その難しさ。
誰が手にとっても同じ剣。
そんなもの、理解が深くなければ作れるはずがない。
一点ものなんて、品質維持ができない言い訳だと、言われているような気がした。
ゲッカが使っていたノートは、五日で半分以上が埋まっている。見ることしかできないなら、見て盗むしかない。ニールよりも観察する時間を与えられたのならば当然だが、けれど、五日を過ぎてからは一気に文字数が増える。
疑問が、発見が溢れて止まらなくなったからだ。
七日目、その日は休日だったが、午後から顔を見せろと言われたゲッカが顔を見せると、工房長が一人で炉の前で金槌を片手に、熱した金属を打っていた。
「来たか、その椅子に座れ」
「はい」
「質問はあるか」
「あります」
山ほどノートに書き込んである。だが、質問は選ぶべきだ。
「鋳型を――いえ、量産品の……」
違う。
鋳型を使っているのは、量産品を前提としているから。量産品を作っているのは、その方が効率が良いから。
ならば聞くべきは。
「何故、この店を今の体制にしたのですか?」
曖昧とも取られる質問になってしまったが、本質的にはそこだろう。今やっている作業は、目で追えばいい。
「お前の見解は」
「自分が気づいている範囲ですと、従業員を雇っていることも含めて、採算が合っているからだと、まだそれしか確証は持っていません」
そうか、と言って金槌を止め、炉の中に剣の形にもなっていない金属を入れた。
温め直しなら、どのくらいまで温度を上げるのかを注意して見なくてはならない。表面が沸騰するような現象が起きるまでやるのか、それとも、そこまでやらないのかは、今のゲッカにもわかる。
「そうだな。俺にとっての仕事とは、商売だ。今やってるこれは仕事だが、いわゆる特注だな。気付いているはずだが、一日五本がうちの最低ラインだ」
「はい」
「つまり、たとえば四日で二十本の作成をしたところで、売る当てがある」
「その……」
「言え、なんだ」
「この規模の工房ですと、そのくらいがせいぜいだ、と思いましたが」
「ははは、そりゃ合ってはいるが、状況次第だな。この状況ってやつが商売にとっては重要で、将来はもしかしたら日に三本になるかもしれん」
需要がなくなれば、売れなくなる。金額を上げるわけにもいかないなら、それこそ従業員を減らすなども考えなくてはならない。
それが、商売の基本だと、学校の授業では教わった。
鍛冶とは関係ないと半分は聞き流していたが、まさか必須科目だなんて、思いもしなかった。それに気付けただけでも大収穫である。
「自分の望みを叶えるために打つのなら、商売じゃなく趣味にするしかねぇよ。たとえば、新しい村を作るか、できたとしよう。お前は村で一人きりの鍛冶屋だ。まず要求されるのは何だ?」
「……武器を揃えろ、ですね」
「そうだ。とにかく、警備兵か村人かは知らないが、武器がなくちゃ話にならねぇ。もちろん外から買い付けることだって可能だろうが、それが壊れたら終わりってのは話にならねぇ」
「はい、その通りだと思います」
「実際に、まだ先代がやってた頃、つまり戦時中はこの設備で一日十本は仕上げてた」
「それは……」
「どうやった?」
設備は同じ。人を増やしたところで、せいぜい一人か二人だけ。金属を溶かす炉が一つしかないのならば、速度を重視して切り捨てられる部分はどこにある?
「――品質を犠牲にした、のですか?」
「そうだ。戦場の消耗戦で必要な武器なんて、それほど品質が重要じゃない」
「しかし、戦場で武器が折れるなど、それこそ生死に関わる問題ではないのですか?」
「武器がないよりマシだ。しかも、相手の持ってる武器だってある。壊れるのはお互い様で、壊れないのもお互い様だ。今でも戦地の土地を荒らせば、壊れた武器がごろごろ出てくるぞ」
「自分の知識不足でした」
情報では知っていても、現場を知らないとは、このことだ。
「その、失礼ですが、こちらの剣はどこへ?」
「基本的には騎士団だ。うちの品質的に、下手に使えば折れるが、そこそこ長く使えるようにしている。新入りに使わせれば、実力がすぐわかるし、品質に見合った値段だから購入も容易い。遠征やサバイバル訓練なんかの時には新品を持って行くからな」
使われるから、商売になる。
ノートをすぐに引き出して、需要と供給、と大きく書いて丸をつけておいた。
「知り合いに、一品ものを作ってるやつもいるが、問題があるとすれば、相手の要望に応えることが第一になる。鍛冶なんか知らねぇ素人の、だ」
「そうであっても、定期的な顧客が必要ですよね?」
「そうだな、それは最低条件だ」
「その条件をどう満たしているかはわかりませんが、たとえば、冒険者は一品ものを好む――のだと、勝手に思っていましたが」
「実際にその傾向は強い。多少は稼げるようになれば、得物に金をかけるのが冒険者だ。そういう連中は量産品を嫌う。だが、逆を考えろ」
「逆……量産品とは違う、一品ものの価値ですか? ……あ、一生ものになると、そういうことでしょうか」
「修復はあるだろうが、新調はない。そもそも、簡単に壊れるような代物じゃ、客がつかねぇな」
「……あの、これは自分の印象なのですが」
「なんだ」
「失礼かと思いますが、鍛冶の技量というのは、最後の最後に必要となるのですか」
「それに気づけりゃ大したもんだ、その通り。鍛冶の技量なんて、学校で教わったことで充分すぎる――そういう状況が作れれば、な」
状況次第だ、という言葉の意味合いがよくわかる。
どれほどの技量を持っていようとも、それを使える機会なんてのは、ほぼない。だからこそ、仕事と趣味は違うのだと、彼は言ったのだ。
金属がぱちぱちと爆ぜるほどの高温、その手前まで熱して取り出し、また金槌で叩く。単純な術式で腕力は強化しているようだが、大きく強くしているわけではない。
「お前にやらせることはねぇと、言っただろう」
「はい、最初に」
「どういう小僧か知らんのもあったが、お前が望んでたのは誰かの手伝いじゃないだろ」
「――はい、そうです」
「今も変わらんか」
「……わかりません。わからなくなりました」
「そうだな、鍛冶に基準なんてねぇよ。学校で評価される代物を作ったって、俺に言わせりゃ、それがどうしたって話だ。悪い意味じゃねェぞ? ただな、目安ってのはある」
「目安ですか? それは基準とは違うのですね?」
「違うな。いいか、目の前に完成品がある。それを欲しいと思うのは、何人だ? 十人に一人か、それとも百人に一人か。その割合によって、金額は決まる」
十人に一人ならば、安くても構わないが、百人に一人なら、高くなければいけない。それは、多く売れないという意味だから。
「その金額を考えた時に、てめぇの労力と、腕と、完成品を見て、安いと思えるのならそれでいい。だが、不釣り合いだと思うのなら、そいつは何かが欠けてる」
その言葉も、端的にしてノートに記した。
「小僧、明日は休め。鍛冶屋の知り合いに声をかけてやる、明後日から巡って勉強しろ。いいな?」
「ありがとうございます。ぜひ」
「うちは先代がそうだったからだが、鍛冶なんて、何でもできるようになっとけ。それこそ、クワやナタ、ハサミも包丁も、何でもだ。そういう技術も見て盗め」
「わかりました」
次がある。
ただそれだけのことが、とにかくゲッカは楽しみで仕方がなかった。
※
ログリッテは冒険者志望だ。それが駄目そうなら、軍騎士になろうと思っている。
勉強というやつが、大嫌いだからだ。
そんな時、知り合いのレーゲンに誘われた。
「よう、ギルドに行くけど、お前も来るか? ああ、ちょっと躰を動かすだけだ」
飯でも食いに出るか、と誘われているような感覚で頷き、剣を手にして行けば、レーゲンは冒険者ギルドの建物に入ると、片手を上げるだけの挨拶をして、奥へ向かった。
一体どういう神経をしてるんだと思いながらも、ログリッチはぺこりと頭を下げて後ろに続く。
冒険者の強さは、学生のログリッテと比べれば、いや、比べられないほどの差が存在する。現役と勉強中の差だろうとは思っているが、敬意を払わずにはいられない。
奥にある訓練場では、待っている女性がいた。
「おう、待たせたな」
「いえ」
「つーわけで、ログリッテ。そこにある木剣を持て」
「……あ?」
「この姉ちゃんが相手をしてくれるから、全力でぶつかれ。今日は怪我するから覚悟しろ。相手を待たせるな、早くやれ」
「お、おう」
すぐに木剣を手に取り、持ってきた剣は壁に立てかけ、お願いしますと頭を下げてから構えた。
女性がそれを見て、吐息を一つ。
その直後、腹部に攻撃を受けてログリッチは倒れていた。
何が起きたのか、さっぱりわからない。
「ログリッテ、これを勝負とするなら負けたわけだが、理由はわかるか?」
「……わからん」
「だったらすぐ立て、もう一度だ。相手を待たすなと言っただろうが」
腹は痛いが、相手も木剣だから痛みだけで、斬られたわけではない。慌てて立ち上がり、やはり構え――駄目だ。
待つな、攻撃しろ、そんな本能が一歩を踏み出し、振り上げた剣を振り下ろし――いや。
振り下ろそうとした時には、やはり腹部に激痛が走り、攻撃を食らい、前のめりに倒れた。顔からは嫌だったので、左肩から落ちるようにする。
「わかったか?」
「いや」
「次だ」
そこから四度、似たようなことをして、攻撃を食らい、ログリッテは倒れた。
そして。
「どうだ?」
「……速さが、俺の方が、遅い」
「そうか」
腕を組んだままのレーゲンは、立ち上がったログリッテに対し。
「じゃあ全速力で、訓練場の外周をこのまま走れ」
「は?」
「早くやれ。いつも通り走るな、速く走れ」
レーゲンの強さの一端は知っている彼は、その言葉を拒絶することができない。だから木剣を持ったまま、痛みを堪えつつも、可能な限り速く走る。
そして。
「わかったか?」
「は、は、な、なにが」
「速さを出すッてことがわかったか?」
「……」
「わからねェなら、言われる前にもう一周だ」
そこから三周も走らされたが、体力に自信のあったログリッテも、さすがに動けなくなった。
「休んでろ、情けねェ」
今度はレーゲンが木剣を持って彼女と対峙する。挨拶もなく、大した構えもなく、じりじりと微調整をするように間合いを測って――。
レーゲンの剣が首の横でぴたりと停止し、彼女の剣は下段に構えられたまま。
仕切り直し。
何度かそれを繰り返しているうちに呼吸が落ち着いてきたログリッテは、待てと、腕を組む。
おかしい。
速いからこそ、先手が取れると思っていた。だから、こちらが攻撃する前に彼女の攻撃が来る。しかも、それを受けることさえままならない。
最初から受けるつもりで、剣を縦に構え、それこそ盾のように扱おうとした時も、結果が同じだったから、そういう結論に至ったのだが、しかし。
見て、どうだ。
レーゲンの攻撃は速いのか?
否だ、こうして外側から見ていると、速くない。だって目で追えるし、激しい動きをしているわけではない。
ゆっくり? そう、ゆっくり剣が動き、彼女が反応する前に、木剣が相手へ届いている――おかしい。
「おかしいだろ」
だから、そのままを、戻って来たレーゲンに対して言った。
「なんで、あんな攻撃が相手に届くんだ?」
「だから馬鹿ッて言われるンだよ、お前は。疑問を抱くのは最初の一歩、あとは考えろ」
「いや」
「いや、じゃねェよ。俺とお前は違うンだから、同じ動きをしたッて、そいつは同じじゃねェ。何も、役に立つかもわからねェことを覚えろと言ってるンじゃないぜ? 疑問を持ったら考えろ、それから試せ。次はガタイの良い野郎だぜ、とっとと行ってこい」
「戦闘中にそんなこと考えられっかよ」
「おいおい、ここにいるやつは全員、その程度のことはやってるぜ? だから俺は攻撃を当てない、理解してるからだ。けどお前は駄目だ、何もわかってねェ。だから思いきり攻撃を喰らう。良かったな?」
「なにが……」
「現場ならもう死んでるのに、訓練だから生きてる」
「――クソッタレ。やってやる」
ここで諦めないのが、ログリッテの良いところだ。
そうでなければ、こんな場に連れてはこない。
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