【裏設定資料(極秘)】

【裏設定資料(極秘)】


・この世界には「現世」と「天界(あの世)」がある。人間は生まれる際、魂が二つに分かれる。片方は現世で「人間」として生まれ、もう一つが天界で「天使」として生まれる。


・天使と人間の寿命はぴったり同じになるようになっているので、80歳が寿命の場合は人間も天使も80歳で死ぬ。


・寿命は「自分の意志での死以外の死」と定義される。病死や事故死も寿命となる。


・どちらかの存在が自殺(自分の意志での死)でした場合は残りの寿命日数が、もう片方の存在の寿命にプラスされる。例えば80歳が寿命の人間が30歳で自殺した場合、天使の寿命80年にプラスして50年が追加される。


・例えば「現世の人間が病気等で余命宣告されたに関わらず、奇跡的に回復する現象」等の多くは「天使の自殺」による寿命の譲与である。


・天使の主な仕事は現世に生きる自分(人間)がなるべく幸せに生きるのをサポートする(見守る)こと。(しかし、人間が早死にしたところで天使にデメリットがあるわけでもない(むしろ寿命が延びる点ではメリット)ので、ほとんどの天使は仕事をこなさず人間が一生懸命生きているのを娯楽程度に眺めることしかしない)


・天使は現世の自分の「死ぬまでの未来」を見ることができる。

(しかし未来を見ればおのずと現世の人間の寿命を見ることになり、天使である自分の寿命を知ることに繋がる。天使とはいえ、自分の寿命を望んで知りたくはないため、多くの天使は現世の自分の未来を見ようとはしない)


・天界の情報を現世に漏洩させる行為は重大な規約違反であり処刑(死刑)の対象となる



話は本作に戻る。この物語の全貌は、人間の來未が書いた遺書ではなく、天界にいる「天使の來未(くるみ)」が現世に生きる「人間の來未(くるみ)」に宛てて書いた手紙兼、遺書である。


天使(く)は、13歳の頃、自分と現世の人間(く)の未来を覗いて、寿命が24年しかないことを知る。

あと11年で死ぬことを悟った天使(く)は、はじめこそ、人間(く)が自殺するように願うが、人間(く)の人生を覗いた天使(く)は考えを改めるようになる。

本編の通り、人間(く)は暗い人生を送っており、環境要因もあり、自己愛が芽生えずにいる。しかし人間(く)は、23歳最後の日(バーで祖父のカシスを思い出した日)を境に自己愛の本質に気づき、自分を愛すきっかけをもらえる。しかし、現実は非常に残酷で、來未はなんとその翌日、24歳の誕生日当日に親友紗綾の目の前で寿命(交通事故)を迎え、亡くなってしまう。


そのことを知った天使(く)は13歳という若さにして、あと1年だけ現世の來未を見守って、自分が14歳になったら自分の残り少ない寿命(10年分)を現世の來未に与えることを決意する。

天界の情報を現世に漏らしうる内容の手紙を出すことは重大なルール違反であり、処刑の対象となる。


尚、あの世において意図(ルール違反するぞという意識がある)した状態でのルール違反は隠匿したり回避することが不可能であり、即処刑=即死刑となる。

つまり天使は死を覚悟した上で、意図的にルール違反を起こすことによって自身の自殺を成立させた。


また、來未自身がそもそも寿命が短いため、現世の來未の寿命を伸ばせるといってもたかだか10年ほど。自分の寿命を与えたとしても現世の來未は、最大34歳で死ぬ運命は不可避の事象となる。

そのため天使(く)は、物理的な自殺ではなく、上記ルール違反による処刑を持って自殺することを選択した。寿命を10年渡した上で、あわよくばこの手紙を人間(く)に届けたいと考えていた。どちらにせよ残り少ない寿命を少しでも有意義に使ってほしいと考えた結果である。


手紙は、天使(く)の1年間の入念な準備もあって、狙い通り現世に届くことになる。(詳細は省く)


残念ながら、手紙を拾ったのは來未とは別の人間(女子高生A)だった。しかし、天使(く)の最重要目的は自分の寿命を現世の來未に与えることであり、手紙は運よく來未のもとに届いてくれたらいいなくらいにしか思っていなかったため、さほど問題はない。


ー  


・本作における主人公、來未という名前は書き換えると来未(ミライ)となっており、未来(を知る天使(く))からの贈り物であることを示唆している。


・冒頭の「割れたローズクォーツの原石にニゲラの花を閉じ込めて、黒い接着剤で塗りつぶした」

において「ローズクォーツ」の石言葉は「純粋な自己愛」という意味がある。またニゲラの花言葉は「深い愛」や「未来」そして「夢で逢えたら」という意味がある。


一見して、「現世の來未は“自己愛”と“自分の未来”を黒く塗りつぶして(目を背けて)生きている」というネガティブな表現にも思えるがそうではない。


本当の意味(要約)は下記の通りである。

「來未へ、“夢の中”で急にごめんね。貴方の壊れた“自己愛”は私が接着剤で直しといてあげるからね。そうだ、せっかくだから少しだけど“未来(寿命10年)”を詰めておくね。だけどこれは秘密だから、“黒い接着剤”で中身が分からないようにしておくね。またいつか“夢の中で逢いましょう”。」

つまりこれは天使の來未から現世の來未への“深い愛”によるメッセージである。


参考:ニゲラの花言葉

https://lovegreen.net/languageofflower/p39558/

参考:ローズクォーツの石言葉

https://hasuneo.com/reicolabo/20211011-2/



また物語中盤「この1年を振り返ってみましたが、TikTokの30秒動画には収まりそうです。私の人生が、もうすぐ迎える24歳の誕生日に終わったとしても12分くらいの動画にはなるということです。正直に言えば、もう5分くらいあってもいいなと思いますが。」という部分について


これは「本来貴方の人生は24年で終わる予定だったけどプラス10年は生きられるよ」という天使(く)からのメッセージである。

また、性格上卑屈な人間(く)が、自分の人生に対して「正直に言えば、もう5分くらいあってもいいなと思いますが。」などと思うはずもなく、これは天使(く)からの「貴方の人生は24年で終わるべきじゃないよ」という気持ちの表れでもある。



また本作中、主人公の呼称が「來未」「クルミ」の2つが登場するが、來未にとって大事な存在(紗綾)からの呼び名は「來未」表記であり、その他、來未を大事に思っていない人(男の先輩や母親等)からの呼び方は「クルミ」と表記されている。

天使(く)はこの手紙を通して、表記を使い分けることで、「來未を大事にしてくれる人」を示唆しようとしている。文末付近の「ちゃんと自分の名前を呼んでくれる人は、大事にしてください」という一文はこれらを伝えようとしたものである。



尚、3月25日は來未の誕生日であると同時に來未の命日でもある。

2023年3月25日、現世の來未は24歳の誕生日を迎える。

2013年3月25日、天界の來未は14歳で死を迎える。


現世の來未がこの後生きることになる2023年から2033年までの10年間は天使の來未からの贈り物である。




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