SceneA1「手紙と10年」
いびき虫
手紙と10年
【はじめに】
今日は私の15歳の誕生日です。
でも私は今日、多分死にます。多分っていうか確実に。
この手紙は、未来を生きるはずだった大好きな私に宛てたものです。
お時間が許すなら24分ほど、お付き合いください。
ー
拝啓 未来の私へ
割れたローズクォーツの原石にニゲラの花を閉じ込めて、黒い接着剤で塗りつぶした -
そんな曖昧な夢から目を覚まして、ボサボサの髪と肌荒れした顔で洗面台に立ち、苦手な鏡を見ることから私の一日は始まります。
「私は、やっぱり今日も不細工です」
ありきたりに絶望的な感想を飽きもせず毎朝抱き続ける。これが心の筋トレだったら私の心は今頃、鋼製になっていてもおかしくないでしょう。だけどこれは、ただの自傷です。いざというとき酷く傷つかないために、日頃から自分で傷つけておくんです。
そういえば夢でみたローズクォーツの意味は自己愛で、ニゲラの花は未来という意味があるみたいですね。自己愛と未来を黒く塗りつぶしてしまうなんて、実に私らしい夢です。
ー
2013.03.25
私が育った青森の八戸(はちのへ)市という街は、青森にしては栄えていて、住みやすい街です。ただ、この街に住む大人はどこか閉鎖的で、この街にどこかプライドを持っているように思えました。青森にある無数の田舎町をどこか見下していて、耳をすませば、「津軽弁は訛りが酷すぎて分からんわ」そんな笑い声が、南部弁のイントネーションで聞こえてくる。同じ穴の狢で背比べをしているような滑稽な街でした。
私はそんな街のごく普通の家庭に生まれたごく普通の長女です。そして、上に兄、下に弟がいるいわゆる“真ん中の子”でした。世間が漠然と認識している「真ん中の子はほったらかしにされがちで、母は息子を溺愛する」みたいなあるあるのど真ん中ですくすくと育ちました。
だから母から見れば、娘であり、真ん中の子である私への関心はさも当然のように希薄でした。兄と弟に惜しみなく注がれる母からの愛情を羨ましく思っていました。
小学生の頃、一度だけテストで88点を取ったとき、母からは酷く叱責され「いらない子」と言われました。愛情に飢えていた私は、それから毎日、母の言われた通りに勉強に励む日々を過ごしました。
父は子供に無関心で、母にいつも怒られていて、ばつが悪かったのかいつも帰りが遅く、休日も寝るか車をいじるかしかしない人でした。
青森の僻地でカシスとブルベリー農園を営む祖父母のことは家族の中で唯一、大好きでした。特にお祖父ちゃんは私のことを溺愛していて、「來未(くるみ)のために作っといたよ」と自家製のカシスのシロップジュースを沢山飲ませてくれました。その味が心底大好きで、何度も何度も、おかわりしました。それこそ、お祖父ちゃんからの愛を確かめるように。
定期的に祖父母からカシスシロップが送られてきましたが、母から「シロップは虫歯になるから」と禁止されていました。うちの家族は、そのほとんどに手を付けることなく捨てていました。私は、捨てられるカシスを見て、幼いながらに自分を重ねては、卑屈な精神を育んでいました。
私は、幼少期からひどく近視だったため、かなり度の強い矯正眼鏡をかけていました。小学2年生の秋、当時好きだったクラスの人気者の大地くんに「眼鏡ブス」と言われたことがきっかけで、他人に心を閉ざすようになりました。今思えばあれはきっと男子の悪ノリだったのでしょうが、当時の私は、それを真に受け、教室の隅っこで息を潜めて残りの小学校時代を過ごしました。
中学でも友達はほとんどいませんでした。そういえば中学1年生の冬休み最終日、初めて自殺しようとしました。実は学校で虐められていたんです。でもまぁ、この時は怖くなってしまいました。それからは心を殺して、母に言われるがままに机に噛り付いました。
母のおかげで勉強はそこそこできたので、市内で2番目に頭のいい八戸北高校という進学校に進みます。ここからはあくまで未来の話になりますが、高校でも相も変わらず根暗で友達はできないのでしょう。きっと、高校卒業後の進路を決める際、「この街とあの母から逃げよう」そう思って、東京のお茶の水女子大学を受けると思います。そしてお茶大に無事合格するんです。
「クルミはうちの自慢の娘や」
上京する日の朝、母から言われるであろう愛の言葉は、待ち望んでいた割には大した感動もなく新幹線に乗って30分ほどで無味になる気がします。
ー
2017.07.10
「來未(くるみ)!聞いて!ビッグニュース!」
嬉しそうに私の名前を呼ぶのは、大学でできた念願の親友、紗綾(さや)です。彼女はまさに主人公のような子でいつも輪の中心で、容姿も端麗でSNSのフォロワーも10万人位いました。
入学して間もなく、流されて参加した新歓で、当時全くの初対面だったはずの私に「ねえ!メイクしてみてもいいですか?」と声を掛けてきたのが紗綾でした。面を食らうとはまさにこのことで、固まっている私にお構いなしに紗綾は、私に合いそうなメイクの話を永延と話し続けます。
紗綾の強引さに初めこそ距離をとっていましたが、善意だと気づいてからは、私は紗綾に流されるままにメイクを覚え、人生で初めて“女の子”になれた気がするんです。紗綾いわく、お茶大には芋臭い光る原石が多いらしく、それを掘り起こして磨くことが楽しいのだそうです。紗綾が喜んでくれるのが嬉しくて、私もメイクに拘るようになりました。
紗綾は「來未は安納芋だよ」と褒めてくれますが、結局芋なので笑ってしまいました。
「お茶大芋掘りフェス」と香ばしい名前を付けて、悪趣味に奔走していた紗綾は、静かに大学生活を過ごしたいお茶女子からすれば迷惑極まりない存在だったでしょうが、私にとっては最初に東京らしさを教えてくれた恩人です。
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2017.12.20
私と紗綾を含めた友人4人で、赤坂のインスタ映えするカフェで立地を考えれば妥当な価格、だけど実家が太いわけでもない田舎民からすると高級な1800円のパンケーキと季節限定のすみれフィズなるドリンクを頼みます。バスク風チーズケーキと生カフェモカを頼んだ実家が太い友人が「パンケーキとすみれフィズも迷うな〜」と言っていたからです。私が頼んで、食べさせてあげよう。私の意志決定は常にその繰り返しなんです。
これを優しさだと言う人もいますが、違います。自分の意志がないだけで、人に嫌われたくないんです。
ー
2018.03.10
今日は友人に誘われた飲み会に行きました。
「クルミと紗綾ちゃんってさマジ可愛いよね。マジ他の女とは全然ちげえよ」
翠ジンソーダを片手に馴れ馴れしく私だけを呼び捨てする慶応の山下先輩の本命は紗綾です。酔った勢いで私の処女を奪ったTikTokの流行りの曲ばかり聴いている彼にとって、私という存在は紗綾と繋がるためのマッチングアプリに他なりません。
そんな彼の精一杯のナンパにだって紗綾は100点満点を叩き出します。
「え!わかる!今日のうち、めっちゃ可愛いですよね?嬉しいですっ!あ、ちなみにどこが好きです?」
ちょっとしたため口で親しみやすさを織り混ぜて、相手の懐に潜り込み、相手が抱きしめようとすれば、スッと距離を取る。それを天然でやってしまうから紗綾は凄いんです。
紗綾は周囲から幾度となく「可愛い」と賛美されていますが、その全てに、躊躇なく肯定の言葉を返します。「でしょ?」とか「どこが好き?」とか、そして最後はお決まりのとびっきりの笑顔で「ありがとう」と微笑むのです。彼女は自分の価値を理解しています。ところで、ここまで分析してみて、気づいたことがあります。
残念ですが、「私は紗綾の眩しすぎる自尊心が苦手です」
喉につっかえたそんな言葉を、ぬるくて味のしなくなったカシスウーロンと一緒に流し込みました。
ー
2019.06.03
「クルミ!東京のラウンジ?で働いてるって聞いたけど!?将来はどうすんの?私がどれだけ貴方のために生きてきたと思っているの?!」
久方ぶりの母からの電話は、威嚇する猫のように全身の毛を逆立てながら話しているのが手に取るように分かります。これまでに5回ほど電話を無視したのも悪かったのでしょう。私の話は一切聞かずに一方的に焦げついたお節介を焼き続けます。
でもお母さん、聞いてください。私には今更、満ち足りた将来なんてありません。今まで流されるがままに生きてきたのです。貴方のそばにいた頃の私は結構いい子だったでしょう?だって貴方の求める私を演じていましたから。
だけど今は、東京で出会った「誰かが求める私」をしながら生きています。そこに自分の意志なんてありません。それ以外の生き方なんて教えてもらえませんでしたから。
私の未来は平凡以下でしょう。それは多分母である貴方も同じなのでしょう。
祖父から聞きました。兄が傷害罪で摑まったそうですね。弟は不登校だそうですね。
知っていましたか?弟は学校でマザコンを理由に虐められていたみたいですよ。貴方には必死に隠していましたが。
兄は高校受験の勉強中、深夜に貴方が作る濃すぎるカルピスを「美味しい」と嘘ついて飲んでいましたよ。その日、私が駄々をこねて貴方に作ってもらったカルピスは、酷く薄かったのを今でも覚えています。
私には注がれなかった分、濃くなりすぎた愛情の原液は彼らには重たすぎたのかもしれませんね。私は今、平凡な、そこそこの、人生を送っています。
今更、濃いめのカルピスはいりません。
ー
2019.12.20
上京して2年が経った頃、私は平凡な学生らしくお金に困っていました。
人が人らしく慎ましく生きるのにお金は少量でいいのかもしれません。だけど、基礎化粧品もメイク道具もお洋服も毎日何かしらバズっていて、新しい流行が産声をあげようとしています。この東京という街では、流されるだけの人生にもお金がかかるのです。
だから友人に紹介されて港区のラウンジで働くことになりました。
人の入れ替わりが激しい業界でした。職業を偽ってはいたけど、芸能系っぽい女の子もちょくちょく居ました。そんな彼女達は揃いも揃って数か月働いた後、担当の太いお客さんと共に店に来なくなりました。
きっと彼女達にとって太いお客さんは、生活保護のようなもので港区という街において、健康で文化的な最低限度の生活を営むための役所のような存在なのでしょう。
そういえばこの仕事を始めて服の趣味が変わりました。最初は格安のネット通販で買った流行りの韓国ファッションに身を包んで居ましたが、今はスナイデルの単価2万弱のワンピースなどを好んで着ています。本当は、グレイルでいいんですけどね。ちなみにバッグはお客さんに買ってもらったレディディオールです。
今やコスメもデパコスばかりです。夜職用のメイクはまさしく化けの皮で、濃くなれば濃くなるほど皮を剥いだ後の自分は、まるで自分ではないようでした。こんな私を過去の純朴な來未が知ったらドン引きするでしょうか。
上京前、母は私に何度も何度も「水商売だけはやめなさい」と教えてくれました。だけどこの業界に来てからというもの、母が一生懸命教えてくれた“非常識”はたった数ヶ月働いただけで、いとも容易く母を裏切り、寝返りました。今ではこれが私の“常識”です。
たった数時間で数万円稼げてしまうのですよ。なのに周りには仕事に遅刻するし、何も言わずに飛ぶし、文句ばかり言う女の子で溢れています。私は周りに流されるがままに生活と常識を緩めながら、だらしなく生きていきています。
この1年を振り返ってみましたが、TikTokの30秒動画には収まりそうです。
よかった。私の人生が、もうすぐ迎える24歳の誕生日に終わったとしても12分くらいの動画にはなるということです。正直に言えば、もう5分くらいあってもいいなと思いますが。
今思えば、私の人生は、苦手なものを増やすためだけに費やされた気がします。
私は、母が苦手で、
私は、真っ直ぐ愛されてきた人も苦手で、
私は、私の過去も未来も苦手で、
私は、今日も私が苦手です。
ー
2023.03.25
大学は無事卒業できましたが、就職はしませんでした。
今更、母が望む大企業に入る意味もありませんし、狂った金銭感覚を修正するのも、自分の将来を美しく設計するのも、全部めんどくさくなって、新卒カードを六本木交差点に投げ捨てて、ラウンジやキャバクラを転々としていました。
しかし、24歳の誕生日を目前にしたあの日、ゆるやかに自己否定しながら死に向かっていく人生の中で一筋の光明を見たのです。
それは、例年通り桜が見頃を迎え始めた3月24日でした。
私は仕事を終えて、なんとなく歩き疲れたかったので、少女詩集の「hmng」という曲を聞きながら、目的もなく歩いていました。その道中、一軒のバーを見つけました。普段なら気にも留めないそのバーに導かれるように、私は扉を開きました。
店内は見たこともない拘りのお酒が仰々しく並び、コンペか何かのトロフィーが至るところに飾られていました。席について数分で、私に染み付いた根暗の血が全身に巡り、入店したことを少し後悔しました。
「何をお作りいたしましょうか?」
そう言われてもラウンジではシャンパンばかり飲まされていて、案外お酒に詳しくない私は、当惑しました。するとマスターが気を利かせて「甘めのお酒は好きですか?」と聞いてきたので、テキトーに相槌を打ちました。
マスターの手元で流れるような美しい工程を経て、出されたカクテルは赤褐色に沈んでいて、決して艶美ではありませんでした。だけど、グラスの上には仰々しくお花が飾り付けされていて、思わず笑いが込み上げてきました。
だって、このカクテルの装飾は、私が出勤で使うDiorのバッグみたいに見えましたし、この赤褐色に濁った色は私自身の汚さを映しているかのようで、やけに滑稽に思えましたから。
私は、頂きますと小さくいって、一口飲みました。
「・・・」
私は言葉を失い、目頭が熱くなるのを感じました。
必死に熱を覚まそうと、冷えたカクテルを喉に流し込むのですが、より一層、目頭は熱を帯び、涙腺がじわじわと溢れていく気がしました。
喉が渇いていたのも、仕事で疲れていたのも、この感動の要因にはなっていたかもしれません。でもそれらを差し引いてもこのカクテルは、とにかく美味しかったんです。
口いっぱいに広がるコク深い甘みと長く続く余韻。なのにどこかスッキリとしていて、かすかに香ばしい渋みを感じる。
私はこの味を知っています。
忘れかけていた。記憶の奥底に眠っていた。私が唯一、誰に流されるわけでもなく、純粋に、自分の意志で、好きだと思えたそれはまさしく、大好きなおじいちゃんが作ってくれたカシスシロップの味でした。
涙をふく私を見て、マスターが心配そうに「お口に合いませんでしたか?」と聞いてきたので、私は笑いながら「すみません」と謝って事情を説明しました。
するとマスターは目を丸くして、心底驚いていました。聞けば、このオリジナルのカシスウーロンに使われているカシスシロップは、私の祖父が作ったものでした。そんな運命みたいな偶然が運命のように起きた瞬間でした。
このカシスウーロンは、お祖父ちゃん特製のカシスシロップと烏龍茶をベースに、スピリッツとフラワーリキュールを混ぜたオリジナルのカシスウーロンでした。
見た目で味まで決めつけていたことを謝ると、マスターは笑顔で嬉しそうに話してくれました。
「カクテルにとって見た目は重要ですが、味も大前提となる大事な要素です。私も派手なカクテルを数えきれないほど作ってきましたが、そのどれもが不自然に思えたんです。このカクテルは見た目こそ華やかではありませんが、抜群に美味しいので、なんというか私が目指すべき生き方そのものな気がして。大好きなんですよ」
胸を締め付ける音がしました。
「ダラダラと講釈を垂れましたが、お客様にこのカクテルを出した理由は、単純に私が好きだからです。本当はよくないんですけど、自分が好きな自慢の味を知ってもらいたくて、出しちゃいました」
オールバックで固められた顔には不似合いの無垢な笑顔でマスターがそう言いました。
私の30分ほど後に入ってきた男女も同じカクテルを飲んでいましたが、当然涙を流すなんてことはなく、この素晴らしい特別な味に気づいてはいませんでした。
彼らにとって、この場所は二人の時間に浸るためのものであり、カシスウーロンはおまけでしかないのでしょう。しかしそれでいいと思えました。この特別は私だけのものでいいのです。
至極当然ではありますが、私は自分の意志でもっと純粋に私を愛してよかったのかもしれません。「なんとなく、私は私が好き!」と思ってよくて、ソレはまがい物の愛情などではなく、無条件で自分を肯定する純粋な自己愛です。
今思えば、幼いころから“社会への愛され方”ばかり学んできました。
母という社会にいた私は「勉強ができないなら価値がない」と思っていましたし、東京という社会にいる私は「可愛くないなら価値がない」と思っていました。
つまり、他人から「いいね」を付けられない自分では、価値がないと決めつけていたのです。
そしていつの間にか私の自己愛は、“社会に愛され続けなければ手の入らない高級品”になっていたのでしょう。
しかし、自己愛は本来、一番手ごろに手に入る初期装備でなければならないのです。生き物が自然に最初から持ち合わせているものでなければ。
すっかり酔っていた私はマスターに事の顛末を伝え、お礼を言って店を後にしました。
帰り道、スマホの画面を見るとちょうど0時を回って3月25日になっていました。
それは、私の24歳の誕生日です。
ー
2023.03.25
今日は私の誕生日だったので、紗綾と一緒に恵比寿でショッピングしました。紗綾がプレゼントを買いたいと言ってくれて、次々と紗綾にお勧めされましたが、これだ!と思うものはなかったのでちゃんと断りました。休憩がてら、恵比寿をぷらぷら歩いていると気になる看板を見つけました。
“自分に恋する香り”
それは香水ショップのポップアップストアでした。
中に入ると、香水ブランドはまだ立ち上がったばかりのようで、香水の種類は1種類のみでした。“主人公になれる香り”というのがテーマらしいです。香水に添えられた説明文を見て、心底驚きました。だって“カシスウーロン”をイメージした香りでしたから。
周囲に悟られぬよう興奮を抑えて、香りを試しました。鼻いっぱいにカシスの甘みが広がって程よいウーロン茶の渋みがある香りで、どことなく大人の色気みたいなものがあります。
「とてもお似合いですよ」
まるで服を試着したときのようなフレーズを言う店員さんに思わず笑ってしまいました。
香水ショップなのになぜか置いてあった目の前の鏡には、なんとも嬉しそうな顔を、“手で隠さずに笑う”自分が映っていました。
それを見た紗綾が「これにする?」と嬉しそうに聞くので、私は大きく頷きました。
ー
2023.03.26
私は昨日、生まれ変わった気がします。ただなんとなくそんな気がするんです。
きっとこれから時間はかかるけれど、今日より明日、明日より明後日、自分のことを好きになっていく気がするんです。もし、今の私が映画を撮るならば、主人公に私を選ぶかもしれません。
ー
これから未来を生きる來未へ。というか私へ。
最後まで読んでくれてありがとう。
本当はもっと貴方と一緒に生きたかったけれど、私の人生は今日で終わりみたいです。
あ、最後に2つだけ。
ちゃんと自分の名前を呼んでくれる人は、大事にしてください。
そして、お誕生日本当におめでとう。私は貴方のことが大好きです。
敬具
2013年03月2∴
怖いな
ー
遺書のような形をした手紙は、最後の日付が滲んでいた。
一体誰が誰に充てた手紙なのかは未だにわかっていないが、あの日、偶然拾ったこの手紙は何故か大事にしまってある。
私の名前は「來未」じゃないし、私はまだ高校生だからここに書かれている内容のほとんどに共感はできないけれど、大事なことが書いてある気がする。だからいつか私が來未さんの人生と重なることがあったら、この手紙を読み返そうと思う。
おわり
【最後に】
いかがでしたか。最後まで読んでくれてありがとうございました。
ところでこの物語、読んでみていくつか違和感があったと思います。
誰が誰に宛てた手紙なのかとか。未来の日付の意味とか。名前が「來未」と「クルミ」で分かれてる意味とか。
その違和感の裏側には心優しいもう一つの物語があります。
しかし、その物語を知るには追加で5分ほど、お時間をいただかなければなりません。
これは來未にとって尊くとても大事な5分です。
もし可能ならばあと少しだけ、お時間を頂いてもよろしいでしょうか。
お読みになる方は続き↓の【裏設定資料(極秘)】をご覧ください。
ー
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