九学期 嘆く者
日下部さんが、電話に出ている間……私、水野瑞姫は、とある人たちに突然捕まってしまうのだった。
それは、突然現れていきなり、ちょっと来てよと私の事を呼びつけてきた……同じクラスの女子達3人。彼女達の事は、見た瞬間に誰なのだが理解できた。今日、委員決めの時に煌木くんの事をすっごく応援していた人達だ。
彼女達に変な人気のない場所に連れ込まれた所で……私は、この後何をされるのか……すぐに理解できた。彼女達が私に問い詰めてくる。
「……なんで、呼び出したか? 分かってる?」
――怖い。普段は、全然こんな感じじゃないのに……今、目の前に立っている子の人達が、凄く怖く見える。私は、恐怖のあまり震えて……口さえも動けなくなっていた。そんな時、女の子の1人が大きな声で私に問い詰める。
「……どうして呼び出したのかって聞いてんだよ!」
「……ヒャ」
恐怖のあまり私の口から思ってもいない声が漏れ出てしまう。そして、既に瞳から出かかっていた涙を必死に抑えようとしながら私は、彼女達の問いかけに答えるため、鉛のように重たかった口を頑張って開いた。
「……煌木くんをさしおいて私が、クラス委員になった事でしゅ!」
最後は、恐怖のあまりつい噛んでしまったが……正直、もうこんな事をいちいち気にしている暇なんかない。私が、正直に思っている事を打ち明けると怒鳴った女子が少しニヤついた顔でこっちに近づいて来る。
「……ふーん。分かってんじゃん……。意外とただ、ぶりっ子なだけじゃないんだね……。でも……」
「……!?」
そして、次の瞬間に私の制服のブレザーの襟の部分が掴まれて、勢いよく持ち上げられる。女子は、恐怖に震える私に強い声で怒りをぶつけるかのように叫ぶのだった。
「……むかつくんだよ! アンタのその……男に媚びた感じのその性格! すっごく……虫唾が走る! その……媚びた態度で煌木くんを誘惑してさ……なんなわけ? アタシ達に許可なくさぁ!」
「……ひゅ……うぅ……」
私は、今まで頑張って耐えていた涙をついに抑えられずに……ここでポロポロと泣き出してしまう。怖さのあまり……私は、必死に過呼吸で辛くてしょうがなかったが、必死に彼女達に訴える。
「……ごめんなさい! ごめんなさい! 許して! ごめんなさい!」
だが、当然……彼女達は、私の事なんか許しちゃくれない。彼女は、私を持ち上げたまま鋭い眼差しで私の事を睨みつけると更に告げた。
「……はいそうですか! ってゆるすわけねぇだろ! あぁ? 馬鹿じゃねぇのか! おい! テメェが、通ってる学校は、バカじゃ……入れねぇんだよ!」
「……うぅ……ごめんなさい! ごめんなさい!」
怖い。凄く怖い。誰かに助けてもらいたい。……でも、今私がいる場所は……人気が全くない暗い小道。こんな所にわざわざ助けに来るような人は……きっと誰もいない。
あぁ……なんて事だろう……。こんなんだったら……最初から……頑張らなければ良かった。
初めての恋に浮かれてしまっていたのだ。私は、今まで……物語の中でだけでしか……「恋」を知らなかった。だから、初めて……物語の中に描かれているようなあの感覚に陥れて凄く嬉しかったのだ。でも……それがきっと良くなかった。そこで……この気持ちを抑えて……いつも通り……やっていれば、こんな事にならずにすんだんだ……。
――恋なんかしなければ良かった……。
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「……貴方達、ここで何をしているの?」
その時、聞こえてきたその声を……私は、よく知っていた。透き通っていて……凛々しくて……強く真っ直ぐな声……私と正反対にカッコよくて、憧れの存在……。
「……くっ、くしゃかべしゃん……」
私は、涙を流しながらその人の名前を言った。彼女は、微笑みながら私の事を見つめて言うのだった。
「……もう大丈夫よ。水野さん……」
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