三学期 暴露せし者

 これは、一体どういう事なのか……。高校入学してまだ1ヶ月も入っていないというのに……私は……わっ、私は、正体がバレてしまっている!






 なっ、なぜだ!? 私の作戦は完璧だったはず……現にさっきだって女達を桃色の歓声に染め上げていたはずだ。何処でしくじったんだ……。私は、一体どこで……。



 すると、そんな私の後ろからクラスの女の子が1人、現れて私達に声をかけてきた。



「……どうしたの? 日下部さん。何かあった? 具合でも悪いの?」




「はっ!」


 ──まずい! 私とした事がつい取り乱してしまった。ヤバい……このままここで正体がバレて終わってしまう事は……断じて避けねば!



 私は慌ててお腹に手を当てて、喉を震わせ、背中を曲げて訴える。



「……うっ、うぅ……なんだか、突然お腹が痛くなってしまって……」



「えぇ!」


 危機を感じたクラスメイトの女子達。そして、その後ろにいる男子達が私の元へ駆け寄って来る。



「……大丈夫か! 日下部さん! おっ、俺が保健室まで背負って行くよ!」



「……はっ、はぁ!? 何を言ってやがる! 俺がやるんだ!」



「……馬鹿め! ここは俺の出番だろ!」




 ──出しゃばんな! このエロガキども! お前らの力など死んでも借りぬわァ!



 内心そんな事をクラスメイトの男子達に思っていると、そこに突然ある人物が私に声をかけてきた。



「……なんだい? 何かあったのかい?」



 その男は、金髪のふさふさの髪の毛に高身長で真っ白い歯とキリッとした顔立ちを持つとても体格の良い男。彼が私の前に現れる。男は、キランと教室の電灯に自分の真っ白い歯を輝かせると、途端にクラス中の女子達から桃色の歓声が上がり始める……!




「きゃああああああああ!」


「……煌木きらめきくん!」



「きゃああああああああ!」



 ──けっ。




 完璧美少女な私は、学園で基本的に嫌いな人を作らない。理由は、人を嫌いになるとその分、自分の評判を落としてしまうかもしれないからだ。特に学園の中で目立っている人間の事は、絶対に嫌いになってはいけない。


 ……わけなのだが、1人だけどうしても好きになれない奴がいる。


 それがこの男。煌木光きらめきひかる。名前からして眩しくて鬱陶しい感じだ。


 この男は、私が学園の完璧美少女なのだとしたら、コイツは私の男版。完璧美男子って所だ。学校で一番モテるし、信頼も厚い。どんな人に対して優しいし、何をやらせても凄い。まさに学園の顔。私の大嫌いな男だ。



 何が嫌かって、そりゃあ元男として、気に食わないに決まってるだろう。……いたよ。前世でもこういう色男。誰に対しても優しいのよ。マジで……勘弁してくれよぉ……。




 煌木は、近くにいた女子から事情を聞くとすぐに私の方へ駆け寄って来た。



「それは大変だね。僕で良ければ……ぜひ君を保健室まで届けてあげよう……お姫様のように抱っこしてね」



 ──うーわぁ、気持ち悪りぃ。勘弁しろよ。マジで……中身男って分かったらコイツ絶対、最初に裏切るタイプだろ。マジ無理……。あーきしょい。な〜にがお姫様だってんだ。ケッ! テメェ如きにお姫様抱っこなんてされたくもないわ……。



 私は、そんな煌木に対して少し困った感じで答えた。



「……あっ、あははは。ありがとうね。煌木君。でも、大丈夫。えーっと……そこの黒髪お姉さ……じゃなくて、この人に連れて行ってもらうから」



 私は、そう言うとすぐに廊下に立っている黒髪お姉さんの手を引っ張って保健室へ向かって言った。お姉さんは少しあたふたした様子だったが、私は気にせず早歩きで教室から離れて行ったのだった……。













         *



 保健室に到着すると、そこには誰もいなかった。どうやら先生は今、留守にしているみたいです……それならばと黒髪のお姉さんは私の事を近くにあったベッドに寝かせてくれた。彼女もそうだが、他のクラスメイト達も私が咄嗟に嘘をついたという事に気づいていないみたいだった。


 まぁそれにクラスメイト達のあの感じだと、このお姉さんの爆弾発言もおそらく聞こえていないはず……。



 そんな事を思いながら私は、とりあえずベッドに横になると、お姉さんがコップに入れてくれた水を一杯飲み、それから改めて話を始める事とした。


「……それで、どうして私の元に来てくれたのかしら……?」




「……私に男性とは、なんであるかを教えていただきたいのです! 日下部さんは、前世が男性だったと聞きました。ですから!」




「……丁寧にそこを説明しなくて良いから!」




「……まぁ、良いや。それで、私を頼って来てくれたわけなんだけどさ……えーっと、その話は一体何処で聞いた感じ?」




「……何をですか?」





「……あぁ、いやその……わっ、私の前世が~って所? そんな失礼な事を言っている人は、何処の誰なのかなぁ……って少し気になったのだけれど……」




「あぁ、なるほど。そう言う事でしたか!」



 お姉さんは、そう言うと何かを思い出すかのように上を見上げて口を開き始めた。




「……あれは、確か…………今日の事です」




 ――今日!? 待て待て……。今日って、まだ朝だぞ!? そんな早朝から私の噂を……いや、私の話が学校中でされているのは分かってるけど……。




 お姉さんは、喋り出す。



「……今日、朝にトイレに行っていたんですよ。ちょっとお腹の方が痛かったもので……それで、その……トイレ中に聞こえてきたんです。隣の個室から……」













「……この日下部日和には、夢がある! 赤ちゃんの時、生まれてすぐに……憧れたママのおっぱい。……私は、あの大きくて柔らかいおっぱいを手にする! 前世は、冴えない男だったが、今や! 女となって己のエロスを極限まで磨いて……エロスの果てを目指した先に……史上最高のマスターを経験するのだ! それこそが……私が女になった事の意味! 神もきっとそのために女にして下さったに違いない!」




「……と、このような声がトイレから…………」





「……ぎゃあああああああああああああああああああああああ!」



 あっ、あの時だったか。あの時……もっとちゃんと周りに人がいないかを確認していれば……。


 私は、飲んだ水を口から勢いよく噴水の如く噴出すると、お姉さんはそんな私に追い打ちでもかけるかの如く喋り出す。




「……ですから! 私、日下部さんになら……言っても良いかなって……私の大事な悩みを打ち明けても良いんじゃないかって……思ったのです!」





「…………悩み?」




 黒髪お姉さんは、コクリと頷くと彼女は、真っ直ぐ私の瞳を見つめてきて、真剣な顔で私に語って来た。




「……はい。実は、私には……誰にも言えない…………凄く……凄く……恥ずかしい悩みがあるのです」




「……うん。もし、その……言っても大丈夫なのなら、聞いてみてもいいかしら?」



 私が、混乱状態の心でお姉さんに尋ねると彼女は「はい」と一言頷いた後に喋り出した。




「……実は、私…………その……」



 しかし、言い出した途中でお姉さんは赤面させてなかなか、その先を言おうとはしてくれない。はて? どうしたのか? とても……困った様子なのに悩みを言えない感じ……。私は、黙って待って上げていれば良いのだろうか? それとも、やっぱり言わなくても良いよって気を使って上げればいいのだろうか?




 悩みに悩んだ果てに私が、お姉さんに「言わなくても良いよ」と言って上げようとした次の瞬間にお姉さんの口から勇気を振り絞って出た言葉は、衝撃的な一言だった。





「……わっ、私! じっ、じじじじじじ実は! ついてるんです!」




「え? 何が?」



 困惑する私にお姉さんは、更に顔を赤くさせて……思いきった表情で私に告白する。




「……その…………下にィ! 下に……その……男の子の…………その……あれが……その……ついているんです……」






「ん?」



 聞き間違えだろうか? 今、何か意味の分からない言葉が聞こえてきた気が……。ははは、どうやら前世でギャルゲやってたのが、祟ったのかな? 今日は、耳の調子が良くないなぁ……。





 しかし、そんな私にお姉さんは最終手段と言わんばかりに……突然私の手を引っ張って、それを自分の股の辺りに持ってくるのだった……!






 ――なっ!? なっ! なんですとぉ! なんて、大胆なお姉さんなんだ! こんなたまらん事を……げふんげふん。けしからん事をするとは! なんたる事や!






 っと、思っていた私の手に……さわり覚えのある感触が蘇って来る。




「……ん?」



 ――あれ? これって……なんか、数十年前に触っていたような……あの感覚と……。





 疑問のつきない私が、それを2回ほど揉んで確かめてみると、それは突然硬さを帯びるようになってくる。






「……ん? あっ、あれ?」



 おかしいな……。これって……やっぱり……もしかして……!





 私が、視線をお姉さんの目と合わせると、お姉さんはコクコクと超高速で頷くのだった。












「……なっ、なっなななななななななななななな!? なんだってぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

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