四年後の襲来 IV
駆け落ちして少しの間、私達はシャルルを探すために色々な手を打っていた。
そして、その中で私達が見つけた名前こそ、紅蓮の魔術師だった。
その評判は非常に高く、けれども私達はそれがシャルルなんて考えたこともなかった。
……なぜなら、どれだけ評判が高かろうが、そんな魔術師は小山の大将でしかないのだから。
評判の高い野良魔術師の中から試練を課され、選ばれた魔術師こそ、地方の魔術師。
つまり、私の想像よりも低い立場にシャルルはあったのだ。
「貴方、なにをしていたの? それだけの才能を持ちながら?」
それでありながら、ここまで自慢げにしていたシャルルに対し、私はそう尋ねていた。
煽る気も、怒りもなく、ただただ純粋な疑問から。
「魔術師の中のエリートと呼ばれる宮廷魔術師は確実、それからここまで墜ちて、どうしてそんなに誇れるの?」
「っ!」
怒りからか、固まったシャルルの顔に朱がさしていく。
けれど、私はかまわず言葉を重ねる。
「……もしかして、本気でまだ自分が歓迎してももらえると思っていたの? そんな、野良で少し知名度がある程度の実績で?」
「黙れ! どれだけ私が苦労したのかも知らずに!」
その瞬間、シャルルはそう唾をとばして怒鳴った
その姿はどうしようもなく、婚約者時代の癇癪を起こした時を思い出させて、私は頭を抱えたくなる。
……シャルルは四年前から、なにも変わっていないのだ。
押し黙った私に、歪んだ笑みを浮かべながらシャルルは告げる。
「良いから、私の言うことを聞け! 紅蓮の魔術師と言えば、どれだけおそれられてきたか教えてやろうか? 私の来たところでは……」
「いらないわよ、そんな戯言。聞く気もないし、貴方を迎え入れ得るメリットも私たちにはないのよ」
「成金貴族の娘風情が、私に意見するのか!」
その言葉に、シャルルの奥にいた女性が反応し、私の記憶が刺激される。
何か不都合なことがある度に、かつてのシャルルは私のことをそう称してきたな、と。
何度その言葉にやりきれない怒りを抱いたことか。
しかし、もう過去の私はいない。
「もう少し静かにお話できないのかしら。地方で威張るくらいしかできない魔術師さん?」
「っ!」
私の言葉に、シャルルの顔がさらに赤くなる。
「──今この領地に、何人の宮廷魔術師がいると思ってるの?」
しかし、次の私の言葉にシャルルの顔は凍り付くこととなった。
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