第四関門

「SNSってなにやってる?」


 突然、あまり話したことのないプロデューサーにそんなことを聞かれた。彼のPCのモニターには、『Z世代について』といった資料が表示されている。今後のマーケティングに使うのだろう。


「んー……Twitterはやってますけど、なにか調べものをするときに使う程度ですね」


 最近の若者がTwitterをやるのか、私は知らない。Facebookは私が高校生の時点で『お母さん世代が使うもの』という認識だったが、同じくらいに登場した(気がする)Twitterはどうだろうか。専門学生時代、クラスメイトは私より少し年上の人が多かったので、Twitterがメインだった。

 しかし、今はInstagramが主流という話を聞いたことがあるような、ないような……。アカウント自体は持っているけれど、使ったことはほとんどない。


「へー、Z世代ってやっぱりTwitterを調べものに使うんだ」


 第四関門、Z世代。


「そうですねー、就活中はよく会社のアカウントを調べてました」


 Z世代とは、1990年代後半〜2012年頃に生まれた人のことを指す。

 しかし、Z世代に明確な定義はなく、『95年からZ世代』説と『96年からZ世代』説があり、さらには『25歳以下』という説もある。この辺があいまいなので、同じZ世代でも価値観にずれが生じる。


「Instagramはやってる? なんかごめんね、プライベートのこと聞いちゃって」


 まったくである。こういった話題が出るたびに、私は神経をすり減らし、フルパワーで頭を回転させなければならないのだ。


「アカウントは持ってます。でも、友だちの投稿を見るぐらいですかね……たまに、LINE交換の代わりにインスタのアカウントを聞かれるんですけど、それは全部断ってます」

「あ、それも書いてあった! DMで友だちとやりとりをするって」


 息をするように嘘をつく。友だちのアカウントを見たことなどない。どうやって検索をすればいいのかわからないのだ。それから、自分のアカウントにイラストを1枚投稿するのにもだいぶ苦労したので、基本的にインスタは触っていない。そもそも、アプリをスマホに入れていない。

 LINE交換の代わりにアカウントを聞かれるのは本当だ。特にナンパなどでLINE交換を断ると、代替案としてなのか、インスタのアカウントを教えてほしいと言われる。ナンパ師は、人のインスタを見て楽しいのだろうか。


「じゃあ、TikTokはやってる?」

「TikTok……」


 TikTokってなんだっけ……動画アプリだと聞いたことはあるけれど、具体的にどういったものなのかは知らない。ショート動画はYouTubeだったか? 似たようなサービスが多くてわからない。ただ、TikTokは登録すると個人情報が漏洩するとか、そんな話は聞いたことがある。


「TikTokはやってないですね。アカウントも持ってないです。私のiPhone、古い機種だからあんまりアプリ入れられないんですよね」

「えー! うちのZ世代、誰もTikTokやってない!」


 プロデューサーが驚いた様子を見せた。どうやら、他の社員もTikTokはやっていないようだ。


 第四関門、Z世代突破。

 私ももっと、Z世代について勉強しなければ……と思った。

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