第25話
日曜日から、月火。監視に送られてきた茜音さんに従うように、姫乃と極力関わらないよう過ごして無事課題終了。
そして水曜日、朝の授業前。俺はクラスメイトの噂話に耳を澄ませていた。
「この前の日曜、不審者が出たらしいよ」
「包丁持って歩いてたって」
「うちの生徒だったって話もあるよ」
「でも、心を具現化して作った武器らしいから仕方なくない?」
「ああ、なるほど。まあそれなら仕方ないか」
なんて噂にはなっているが、特に害もなかったので注意されただけで済んだみたい。見た目の良さと家柄がそうさせたのかもしれないけど。
「つか、貴族クラスの如月さんと雪城さんの話聞いている?」
「知ってる知ってる。一昨日、雪城さんが如月さんの椅子の下にジェットつけて天井にぶちこもうとしていた件でしょ?」
「そうそ。流石に冗談だと思って聞いたら、やっぱり嘘で、あれ、天井じゃなくて、宇宙だったらしいよ」
「えー、宇宙! ロマンチック! 憧れる!」
「ねー。雪城さんのメイドになりたいよねー」
「でも、如月さんも捨て難くない? 仕返しに、超巨大蟻地獄の超巨大蟻地獄に突き落とそうとしたみたいだし」
「すご、めっちゃレアじゃん。いいな、いいなー、私もそんな体験してみたーい」
喧嘩も継続中。これ以上、噂話を聞き続けるのは精神衛生上悪いので、やめた。
が、精神状態は改善することはない。
他に意識を持ってかなければ、自らの愚かさに目を向けてしまう。
一学期中は、負けず嫌いにならない。
全く守れず、結局は姫乃の親子関係に干渉してしまった。
正直言うと、土曜には既に下火になり、日曜にはすでに鎮火していた。だから、どちらかで手を引けば良かったのだろうけど、一度言い出した手前、引っ込みがつかなかった。
後悔先に立たず。これで姫乃ルートに乗っかったかもしれない。
いや。
今のところ、姫乃のお母さんが亡くなるということはない。ならば、姫乃ルートのあれやこれ、間違っても後継者争いで暗殺者が仕向けられることはない。むしろ、2人の和解を推し進めたことにより、後継者争いの芽を摘んだと言っていいかもしれない。
なら、なんとかなったか。命拾いしたか。
ほっと胸を撫で下ろす。
が、安心してばかりではいられない。
姫乃ルートに乗っていれば、お母さんが事故に遭わずとも、後継者争いが起きて暗殺者を仕向けられる可能性もゼロではない。そうなった場合、今回立ち入った分、姫乃の関係者として巻き込まれ、見捨てることすらできなくなるかもしれない。
やはりこれからも、ルートに乗らないよう努めるべきだな。
「皆さん、座ってください。成績表をお渡しいたします」
先生が入ってきて、成績表を配っていく。俺も受け取って開いてみると、なんやかんやあったものの一位だった。
「皆さん、お静かに」
ざわめく教室を嗜め、先生は続ける。
「今回の成績に一喜一憂している暇はありません。週末より、次の課題が始まります。そちらに意識を向けるように」
クラスに緊張が走った。
そう、週末より、また課題が始まる。
「理玖、一緒の課題、頑張ろーね」
ぱちん、とハートマークが飛び出すウインクをした結衣に、俺は冷静に告げる。
「次の課題も別の班だよね」
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