彼女の気持ち

 天使のアンジェラは、俺と木下さんにこう言った。

「2人は両想いなんだよ」と。


俺は木下さんのことを良く知らない。ついさっきまで、顔と名前が一致してなかったからな。そんな状況で想うなんて、あり得ないだろ。


木下さんはどうだ? アンジェラが言った事が正しいか、訊いてみよう。



 「木下さん。アンジェラが言った事だけど、あれって本当なの?」


「……」

彼女は答えようとしない。


違うなら「違う!」と言って欲しいが…。


「俺、木下さんの気持ちを知りたいんだ。どうしても言いたくないなら…」

無理強いは良くないよな。


「…正直なところ、私もわからないんだ」


「わからない?」

どういう事なんだ?


「冴木君のことはクラスメートの1人として見ていたの。けどさっき近くに住んでると聴いて、ちょっと興味を持ったんだ。それだけでなんて…」


なるほど。彼女は俺のことが好きではないようだ。

だよな~。だって俺、木下さんに好かれる事をまったくしてないし。


「だったら、アンジェラのイタズラだな。もしくは勘違いだ」

そう考えるしかないだろう。


「アンジェラさんは、冴木君に興味を持った気持ちがに変わると思ったのかな? 『両想い』っていうのは、予知した内容とか?」


「さぁ…。アイツ、そんなに優秀な奴に見えなかったが」

自称年上のくせに、口調は見た目通りの子供だったしな。


アンジェラの奴…。ちゃんと説明しないまま消えやがって。

今度出てきた時は、納得できるまで説明してもらうぞ。



 「ふわぁ~」

いかん、ついあくびが出てしまった。


「もう23時30分だね。…そろそろ帰ろうか」

木下さんは公園の出入り口に向かって歩き出す。


こんな遅い時間だ。木下さんを家まで送ったほうが良いのか? 彼女の家は近いみたいだし、大した負担にはならない…はず。


…いや待て。仲良くない奴に家まで送ってもらうのって、どうなんだ?

キモイと思われそうだ…。


変に勘ぐられるなら、余計なことはしなくて良いか。


「ああ。帰ろう」


俺と木下さんは公園を出た後、家を目指し別々の方向に進む。

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