天使アンジェラの真意
俺の数メートル上に、白い羽を生やした女の子が浮いている。爽やかな印象を感じさせるな。ゲームや漫画で見る天使に近いので、天使(仮)とする。
天使(仮)は、ゆっくり地上に降りていく。
隣にいる木下さんをチラ見したが、彼女は天使(仮)にくぎ付けのようだ。
「お兄ちゃん達。あたしが珍しい?」
地上に降りた天使(仮)が、俺と木下さんを見る。
「当たり前だ。人間に羽は生えてないからな」
近くで見たところ、羽以外は普通の女の子だぞ…。
「天使って、人間にとって身近な存在でしょ? 今更じゃない?」
コイツ、自分で天使って言ったな。なら(仮)はいらないか。
「そう…なの?」
木下さんは、首をかしげている。
「お姉ちゃん。漫画とかゲームとか、そういうの興味ない人?」
天使が木下さんに尋ねる。
「ううん。あるけど、天使が出てきたことはなかったなぁ…」
なるほど。木下さんも、漫画やゲームに興味あるのか。
ジャンルの好みは、合いそうにないが…。
「説明する前に自己紹介しておこうよ。あたしはアンジェラ。よろしくね♪」
アンジェラか…。覚えたぞ。
「俺は
「私は
俺達3人は自己紹介を終える。
「天使って、お前のようなお気楽な奴が多いのか? いきなり俺達の前に出てさ。警察に通報されたら、どうする気だったんだ?」
俺はそんな事する気はないが、それは人によりけりだろう。
「警察に通報されても問題ないよ。あたし、変装できるし記憶を消せるもん♪」
「記憶を消す…?」
何気に怖い事言うな…。
「そだよ。身長は2人に負けてるけど、歳は上なんだ。だからなめちゃダメだぞ♪」
だったら言葉遣いも年上らしくしろよ…。
「アンジェラさん。私と冴木君をこの公園に呼んだの、あなただよね?」
木下さんが、単刀直入に訊いた。
「うん。あたし、説明は苦手だからサクッと言うね。…2人は両想いなんだよ」
「両想い?」
俺は木下さんのことを何とも思ってないぞ。
だって、ついさっき顔と名前が一致したんだからな。
「……」
彼女は黙っている。
どういう気持ちで聴いたんだろう?
「あたし達天使は、人を想う気持ちに敏感でね。そういう気持ちを持っている人をマークするんだよ。晴ちゃんは良ちゃんを見る時、想う気持ちを出してるんだ」
お互いの名前を端折ってちゃん付けするアンジェラ。
良ちゃんは今まで何度も呼ばれたことあるし、気にならんが。
「……」
アンジェラの説明を聴いても、木下さんは答えない。
彼女が話したことがない俺のことを知っていたのは、俺のことを想っているから? …短絡的だろ。クラスメートだからという理由のほうが納得できる。
「このままだと、晴ちゃんは良ちゃんに気持ちを伝えられないまま離れることになっちゃう。そうならないように、あたしが手助けしたんだよ。感謝して♪」
離れるというのは、クラス替えとか卒業を指すんだろうな。
それにしても、ずいぶん押し付けがましい天使だ。人間じゃないのは羽を見ればわかるが、胡散臭いぞ…。コイツの言う事を信じて良いのか?
「じゃあ何か? 木下さんの机にメモを入れたのも、俺のレシートに赤い印字をしたのも、アンジェラなのか?」
そう考えないと、つじつまが合わない…。
「そういうこと。ていうか、あたししかできないでしょ? メモはともかく、レシートのことはさ。晴ちゃんの想う気持ちに気付いたあたしが、姿をごまかしてコンビニに入った後、隙を見て魔法で印字したんだよ」
想う気持ちに反応してコンビニに入ったなら、俺の後に入ったって事だよな?
ということは、木下さんと話している時に来た客は、変装したアンジェラか!
「客としてコンビニに入ったから適当に買ったけど、それは『経費』になるんだ。あたしの懐は痛まないの♪」
お前の懐事情なんて知らねーよ。ここまで聞いても、イマイチ信用できんな…。
「アンジェラさん。今日の午後10時30分に指定したのは何でなの?」
木下さんが声を上げる。
確かにそうだな。今日である必要性を感じられない…。
「それは…、特に意味はないの♪」
舌を出して笑いだしたぞ…。
昔でいう、てへぺろだな。
「意味がない? 理由を教えて!」
あんな説明じゃ、木下さんでなくても納得できないよな…。
「あたしの存在がバレにくい時間であることと、晴ちゃんのバイトが終わって帰れるのが10時30分頃だと思ったから、そうしただけ。晴ちゃん、10時ぐらいまで働いてるし…。 時間と晴ちゃんのバイトさえ合えば、いつでもOKだね♪」
「ちょっと待て!? 俺はどうなるんだ? 俺が今日の夜遅くにコンビニに行ったのは偶然だぞ。それについては、どう説明する?」
「晴ちゃんの想い相手の良ちゃんのことも調べてあるよ。記憶を操作して、コンビニに向かわせたかもしれないね~」
ニヤニヤし始めるアンジェラ。
さっき記憶を消せるとか言ってたし、それが本当なら操作も出来そうだ…。
「ねぇ、もうそろそろ帰って良い? あたし説明するのに飽きた!」
子供のように駄々をこねるアンジェラ。
「良い訳ないだろ! まだ訊きたいことがあるんだ!」
木下さんも頷く。
「あたしは、2人にイチャイチャして欲しいだけなの。…今日は帰る。話はまた今度してあげるから♪」
アンジェラが光に包まれる。あまりの眩しさに、すぐ目を閉じる俺。
…光が収まったので目を開けるとアンジェラはいなかった。なんなんだアイツは?
両想いとか、訳が分からないことを言いやがって…。
公園の時計を観たところ、時間は既に深夜だ。
だがこのまま帰っても、寝られる気がしない。
木下さんに正直な気持ちを話してもらおう。
答えてくれるかはわからんが…。
俺は彼女に声をかける…。
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